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ロリィタ体験をしたら自分に自信がもてた話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:八幡未来(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「私、一度ロリータになってみたいんだけど」
30代に突入する少し手前、今しかできないことをしよう、と友人と話していた。
「成人式から10年経つし、記念に写真とか残したりしてさ。2分の3成人式」
最近、小学校や写真館などで、10歳の節目に「2分の1成人式」といって、写真を残したり、両親に感謝の手紙を送ったりするイベントがあるらしい。
それになぞらえて、3分の2成人式をしないかという提案をしてみた。
「え、めっちゃ良いじゃん。やろやろ」
 
学生時代からファッションに興味があった私は、古着をメインに扱っている雑誌やストリートスナップにたびたび出てくる、「ロリータ」のジャンルにとても憧れがあった。
しかし、ワンピースひとつ買うにも数万円の世界。着ているのは可愛い人ばかりで、私の顔にこんな華やかさはない。金額面でも容姿の面でも、遠くから眺める存在だった。
 
私はネットで、自分の住む県内でロリータ体験ができる場所を探した。
ヒットしたのは一箇所のみ。
友人と相談し、15,000円のプランを予約することにした。
衣装とウィッグをレンタル、ロリータメイク、撮影をしてもらい、撮影したデータを全て納品してくれるプラン。
正直、金額だけ見れば決して安くはないが、ロリータの衣装を一式揃えること、撮影してもらうことなど考えたら、だいぶ優しい金額設定だと感じた。
 
当日、友人と待ち合わせし、お店の場所まで移動した。
予約が完了するまで気づかなかったのだが、お店があるのは、私の住む県の主要都市ではなく、そのお隣の市の駅前だった。
なぜそんな場所で…?
私の県には、ロリータの聖地、というような、有名な場所もある。体験なら、そっちでお店を出した方が集客が良いのでは…?と感じてしまう。
 
「こんにちは〜! 好きな衣装選んでまっててね〜!」
お店に到着すると、シックなロリータ衣装を着た女性が明るく声をかけてくれた。
床、壁、カーテンまでやわらかいピンク色で統一された空間。ひとつ前のお客さんが、帰り支度として髪をセットし直してもらっているところだった。
 
従業員は、声をかけてくれた女性ひとり。
ひとつ前のお客さんとの会話の合間に、簡単に衣装の説明をしてくれた。
「この辺が甘ロリで、こっちはクラロリ、クラシックなロリィタだね。 プリントが可愛いのもあるし、この辺りだとレースやリボンがいっぱいついてて可愛いよね〜」
 
先にいたお客さんが帰り、私たちの番となった。
同世代と思われる従業員の女性は、店主のようだった。選んだ衣装の着かたを丁寧に教えてもらう。
「今回はどっちがやろうって言って来てくれたの?」
「あ、私です。今しかできないことをやろうと思って。昔から憧れもあったんです」
「え~! 今しかできないなんてことないよ! 業界のトップモデルは40歳だし!」
店主は、コルセットのように編まれた背中のリボンを調節し、スカートにたくさんついた小さなリボンをひとつひとつ丁寧に結んでくれた。
 
「うわぁ……可愛い……!」
初めてのロリータ衣装は、ノーセットですっぴんの私でも自画自賛してしまうくらい、自分を可愛く包んでくれた。
 
「じゃあ順番にメイクしていくね」
私が先にメイクをしてもらいながら、店主とその時代のファッションやメイクの事で盛り上がったり、ロリータ初心者の友人からの質問に答えてもらったりした。
ぼんやりと憧れていたロリータの世界は、知らなかったことばかりだった。
まずこれは、ホームページを見ていて気付いたことだが、ロリータではなくロリィタと表記するということ。
そしてロリィタは、ファッションではなく、思想や文化であるということ。なので一般人に混同されがちな、コスプレとは違うということ。
自身の「生き方」であるロリィタに対して、失礼ととられてもおかしくない質問をしても、丁寧に答えを返してくれた。
 
このお店はもともと、趣味の延長(店主は平日の社会人生活の腹いせと言っていた)で始め、利益を目的にやっていないらしい。学生さんにも手の届きやすい価格のプランも用意されていた。こんな良心的なお店、私の学生時代に存在していて欲しかったなあ……。
 
メイクが終わり、ウィッグを被せてもらった。フリフリのヘッドアクセサリーを付けたあと、改めて全身を鏡で見せてもらった。
自分なのに自分じゃないみたいな、憧れた姿がそこにあった。360度、どこを見ても可愛い。
 
友人がメイクをしてもらっている間、自分の顔をながめていると、あることに気付いた。
「ロリィタメイクって、コンプレックス全部吹き飛びますね……!」
「そうだよ~! ロリィタメイクは足し算だからね!」
つけまつげとアイラインでクッキリとした瞳、ハイライトで輝く鼻筋、唇じゃないところにもリップを施し、広角をキュッと上げられた口元。
しかしやりすぎということはなく、服と、ウィッグとバッチリ合っている。
目の大きさの左右差、パーツが中心に寄っている求心顔など、もともとコンプレックスだった部分を感じなくなっていた。
 
ピンクの部屋のピンクのソファに座ってウサギのぬいぐるみを抱え、ロリィタらしいポーズで撮影をしてもらった。
撮影の光の中で見る友人はどこからどう見てもロリィタで、私もそう見えるんだろうな、ととても嬉しくなった。
 
ロリィタを体験してから、服選びや普段のメイクが少し変わった。
30代になって全て捨ててしまった膝上丈のズボンを新しく買いなおし、鼻筋を綺麗に見せるハイライトを使うようになった。
好きな服は着たい時に着ればいいし、メイクは塗りたいように塗ればいい。小さな変化のようだが、「今しかできないことはない」というワードが大きく心に残っていた。
ロリィタの精神に触れて、自分に少し自信が持てるようになった気がした。
 
 
 
 
***
 
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2023-08-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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