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サンタクロースの引き際について


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記事:中村 愛(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「ねえ、サンタクロースって本当にいるの?」子どもから不意に問われたら、皆さんはどう答えるだろうか? 自分の子どもに限らず、親戚の子でも近所の子でもよい。私は子どもに関わる仕事をしているが、同様の方は職場で聞かれる可能性も高いだろう。
 
「いるよ」と答える方が多いと思う。子どもの年齢にもよるが、背景が分からないほど、答え方は慎重になる。
夢を壊したくないから、何とかして、サンタクロースはいる、と説明してみる。
 
昔、アメリカの少女が新聞社にこの質問をした、という物語を読んだ。
少女は友達からサンタクロースなんていない、と言われたが、自分は信じている。父親に相談したところ、新聞社に相談するように言われ手紙を書いたという。手紙を受け取った記者は少女に対し、サンタクロースはいる、と答えた。
世の中には目に見えるものしか信じない人達もいるけれど、それは寂しいこと、あなたが信じているのであればサンタクロースはきっといる、というような話だった記憶している。
 
私自身は小学校高学年くらいまで、サンタクロースの存在を信じていた、と思う。
小学校低学年で既にサンタクロースなんていない、という友達はいた。
それでも、私が子どもの頃、欲しいものを買ってもらえるのは誕生日とクリスマスだけだった。誕生日は親から、クリスマスはサンタさんから。貴重なこの機会をなくすなんて考えられなかったし、クリスマスが近づくと欲しいものを親に連呼していたのだから、子供心に薄々分かってはいたのだろうけど、目に見えないものを信じたい気持ちもあったのだと思う。
結局、小学校5年生の時に、欲しいものを親に言わなかったのか、言ったのにスルーされたのかは忘れたが、クリスマスの朝、全く欲しいと思っていなかった掛け時計が枕元に置いてあり、こんなもの欲しくない、と言って親に怒られ、何となく私のサンタクロースは終わりを告げた。欲しいものが枕元に届く、という奇跡はもう起こらないんだろうな、と何となく悟ったのだ。
 
時は巡り、私も親となり、子ども達のサンタクロースとなった。
ごく小さい頃はクリスマス前に本人たちが欲しそうな玩具を買って準備し、子どもたちが眠ってから枕元に置く、という儀式をするだけでよかった。
ところが、子ども達が少しずつ成長し、欲しいものはサンタさんにだけ言うからママには教えない、と言い始めた頃から攻防戦は始まった。
確かにサンタさんに言えばいいけど、サンタさんも忙しいから手紙を書いて枕元に置いておくといいんじゃない? と提案し、こっそり見て把握した。
すぐに書かずに知らない間に置かれた時は、翌朝「サンタさん、手紙持って行ってくれなかった」としょんぼりした娘に言われ、慌てて「サンタさんも忙しいんだよ、今晩はきっと見に来てくれるよ」と取り繕ったりもした。
子ども達のご所望の品はネットでこっそり注文して、少し離れた実家に届けてもらい、休日に取りに行って車の中や見つからなさそうな場所に隠すことも毎年の恒例だった。
一度ゲーム機を購入した時は、包装は自分でしてこれで完璧と思っていたのに、子どもが開封したら、ネットショップの印が押してある保証書が出てきて、焦ったこともあった。
直前で子どもが欲しいものを変更しようとした時は、「もうサンタさん準備しちゃったんじゃないかなあ?」と苦しい言い訳をしてしのいだ。
子ども達、特に長女は何とかしてサンタさんを見たいという気持ちもあってか、小5になるとなかなか寝てくれなくなった。夜中の1時になっても明らかに寝たふりをしている娘を見て諦め、4時にアラームを鳴らして何とか枕元に置いたこともあった。
 
しかし、子どもが成長するにつれ、考え始めた。これっていつまでやればいいのだろうか?
いろんな人に聞いてみた。
ウチは早かったよ、小1の時に隠してある玩具見つかっちゃって、と言う人もいたし、小6まで普通に信じてたからそろそろまずいな、と思って教えた、と言う人もいた。
ツイッターで、成長した子ども達にカミングアウトして、今まで楽しませてくれてありがとう、これからは現金支給に切り替えます、とユーモアたっぷりに伝えるお母さんもいた。
 
結局、長女に伝えたのは中2だった。
分かってたよ、と言った長女だったが、4歳下の妹にはまだ伝えず、長女にもプレゼント自体は用意していたので、枕元に置く習慣は続けた。
高校生になって、長女がふと「99パーセント分かっていたことではあったけど、言われた時はショックだった」と言った。
 
分かる気がした。私も100パーセントばれてる、と思ってからも2年は続けた。
それは子離れ、親離れのひとつだったのかもしれないな、と振り返って思う。
中3の次女にはまだ伝えていない。長女に言われた言葉を思うと、分かってはいても口にしなくてもいいことなのかな、とも感じている。
もちろん、子離れ、親離れは必要だけれども。
 
 
 
 
***
 
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2023-08-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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