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メディアグランプリ

花火を駆ける老女


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事: K(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
愛媛県今治市にある国際ホテル、地下1階のレストランで、今日初めて出会った老人女性4人と中華ディナーを食べている。私はアラフィフ、みなさんより20歳は若いか、といったところ。
近畿日本鉄道が経営する旅行会社、クラブツーリズムのツアーで出会った方々だ。食事が終わった後、1万発打ちあげられる花火を有料座席で見る予定となっている。
全員が1人参加で、花火大会を見たいと集った方々である。
 
「昨日は大阪淀川の花火大会でしたよね。以前河川敷で見たことがありますが、帰りの塚口の駅でプラットフォームから押し出されて落ちそうになって、ほんまに怖かったです。河川敷だとトイレも心配で・・・。ああゆうのは若い時でないと無理ですよねえ」
 
「ああ、ムリムリムリ。隅田川の花火も中継で見たけど、すごい人やったなあ~」
 
「とにかくラクでないと。その点このツアーは、バス乗ってたら着いて、道後温泉の観光に食事も宿泊もついてるし、花火見てからすぐ帰れるからいいわ」
 
「秋田の大曲の花火大会は2回行ったけど、会場まで1時間歩いて、ほんまにしんどかったわー」
 
「新潟の長岡の花火はいいよー。歩かんでいいし、規模大きいし、おすすめ」
 
みなさんどれだけ花火好きなのか。全国の花火情報が次から次へと出てくる。
北は秋田県大曲の花火大会から、長野県の諏訪湖、新潟の長岡、島根松江の宍道湖の花火に南は沖縄までいろいろある中で、我々は今回、愛媛県今治の花火大会につどった。これも何かのご縁だろう。
 
みなさん70歳は優に超えているとお見受けするが、脂っぽい中華料理のコースをペロリと完食された。何人かはビールも飲んでいる。
足が痛い、とか、歩けない、とか、ぶつぶつおっしゃってはいるが、なんのその。普通に会場で待ち時間含め1時間半ずっと立ちっぱなしでもケロッとされている。
4人中、2人は旅友達、いわゆる「旅とも」だった。クラブツーリズムの別のツアーで出会ったのだそうだ。
 
そんなお二人に「花火ツアーを選ぶポイントは何ですか?」と、聞いてみた。
 
「日程とか金額とかいろいろあるけど、やっぱり何発打ちあげるか、かなあ」
 
とのことであった。
 
なるほど。
私は花火が見れたらなんでもいいわと思って今回、日程とツアー料金のリーズナブルさで選んだのだが、このツアーは10000発の花火というのが売りだったらしい。
そのほかのポイントとしては、観覧場所の設定が、音楽が聞こえるくらい近い距離かどうかが重要とのこと。音楽と共に花火をみるとより気分が盛り上がってよいのだとか。花火大会一つとってもなかなか奥が深い。
 
実際にその日打ち上げられた花火は、大小色もさまざまで、星型、ハート形、斜めに上げる花火や大玉とバリエーションがあって素晴らしかった。近くでどどーんと音がするのも迫力を感じる。やっぱり花火はよい。特に大玉が。
台風が近づいており、雨で中止かもしれないと心配したが、花火の時間だけは晴れてきれいに見れたのもラッキーだった。どなたか晴れ女がいたのだろうか。
 
「まあ、いろいろあるけど、結局はお天気よ」
 
「晴れてよかったですよね」
 
「でも今回の企画は、音楽があまり聞こえなかったので物足りんかったわ」
 
花火を無事に見られて十分では、と思うが、なかなか手厳しい。
 
クラブツーリズムのツアーは、体力やトイレに不安があるものの、一人でも参加したいという女性のニーズをよくとらえている。食べる量も個人差があるし、コストや手間の削減もあるのだろう、朝バイキング昼は自由食と食事の自由度も高い。1泊2食観光付で一人35000円前後というのも絶妙な価格設定だ。
「知り合いのJTBの人」から聞いた、というおばさま情報によると、花火大会のツアーはクラブツーリズムが最も充実しているのだそうだ。本当かどうか検証しようとも思わないが、言われてみればそんな気もする。
 
今回のツアーは、39人中男性は5人しかいなかった。花火大会に行きたいと思うのは圧倒的に女性が多いようだ。確かに、私も夫を誘おうにも、誰がそんな人混みに行くか、と、絶対に行かないだろうという自信があった。代わりに実家の母79歳を誘ってみたが、足が悪いのと、トイレが近くて不安だし、花火にそんなに払うお金がもったいない、という理由で断られてしまった。
 
同じくらいの年で一人参加している女性の方がおっしゃるには、
 
「私にも、お宅さまと同じくらいの娘がいるのよ。私は花火が好きで誘ったんだけど、娘には、花火も人混みもキライだ、と言って断られたので、一人で来ましたわ」
 
とのことで、私と逆のパターンだった。
花火大会というのは開催日が限られているし、天候という運の要素もある。
気の合う人と一緒に花火大会に行く、というのはなかなか難しいんだなと思った。
私も、付き合ってくれる「旅とも」を作らねば。
 
報道によると昨今、協賛金が集まらないという理由で開催中止になる花火大会もそこそこあるのだそうだ。大阪の、以前高校野球で有名だったPL学園でも昔は盛大な花火大会があって楽しみにしていたのだが、資金難なのか廃止されてしまった。他の地域でも、そのような話はちらほら見聞きする。
 
日本経済がさらにシュリンクしているであろう20年後、まだ日本全国で花火大会は開催されているだろうか。
また、私の足腰が全国の花火を見に行けるくらいには元気で、多少自由になるお小遣いがあって、そして茶目っ気のあるおばあさんになっているだろうか。
 
「お金がもったいない? そーんな、お金持って死ねるわけじゃないんだから! 行きたいときに行っとかないと、よ」
 
自称花火狂い、というおばさまは、ガハハハと豪快に笑って颯爽と歩いて行った。その姿はどう見ても普通の「大阪のおばちゃん」だったが、なんだかちょっと、かっこよかった。
 
 
 
 
***
 
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2023-08-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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