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洗濯機選びから開放された私達を待ち受けていたのは「喧嘩上等」の文字


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記事:カナコ(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
3年前、私達夫婦は、2年間の同棲を経て結婚した。
結婚を機に、新居を構えることとなり、埼玉郊外に新築マンションを購入。
初期費用がかなりかかったので、家具のほとんどは今まで使用していた物をそのまま使うことにした。
しかし、その中でも一つだけ買い替えなければならない物があった。
洗濯機である。
 
同棲していた家で使っていた洗濯機は、私が一人暮らしをしていた時から使っている縦型洗濯機で、とっくの昔に寿命を過ぎていた。ボタンがシンプルで使いやすい。さらに、脱水加減が丁度良く、かなり気に入っていた。
しかし、家電製品というものはある日突然故障するもので……。しかも、引っ越しの1ヶ月前に使えなくなったため、新しい洗濯機を買うことになったのである。
 
今まで使っていた洗濯機を気に入っていたこともあり、新しい物を選ぶのに時間がかかった。
何度も大手家電量販店に行き、縦型のシンプルなものから、乾燥機能付きのもの、ドラム式など、様々な機種・機能の説明を受け、頭の中は混沌としていた。
どの機能も素晴らしく、捨てがたい……。
 
悩みに悩んで、一つのドラム式洗濯機の購入を決めた。
安い買い物ではないので、私達夫婦の間では大きな決断の中の一つだった。
 
今までの情報収集で、時間と労力をかなり掛けている。絶対に失敗したくない。
 
私達なりの優先順位を決め、これで文句なし! と言い切れる物に決めた。
 
あとは、洗濯機の到着を待つのみ!!
 
設置当日、好きな俳優さんに似ているイケメンの青年が現れた。
新しい洗濯機の設置に、こんな素敵なおまけ付き!? と思いながら、風呂場横への設置を見守っていた。
無事に設置は終わり、爽やかな笑顔でその青年は立ち去っていった。
 
やっと届いた、新しい洗濯機ちゃん!
これから、大切に使ってあげるから安心してね!
まずは、説明書をパラパラと軽く読み、いざ試運転!
 
「あれ? ドラム式って、思ったよりも音が大きいんだな」
最初は、そんな印象だった。
 
試運転後、実際に洗濯物を入れて洗ってみた。
 
男性でも、少しずらすことすら大変なドラム式洗濯機が、ガタンガタンと浮くほど大きな音を立てて動いている。
例えるなら、工事現場でコンクリートを砕くような騒音。
 
え、これさすがにおかしいよね……。夫婦で顔を見合った。
 
メーカーのトラブルシューティングを見てみると、異常音についての欄には様々なオノマトペを使って音の問題について書かれており、どの音だろう……と迷ってしまう。
You Tubeで調べてみると、似たような問題についてアップされている動画がいくつもあった。
似ているものもあったが、You Tubeだけだと本当にこの音かな……と確信がもてなかった。
洗濯物を減らしたり、水平になるように再調整したりと様々な試行をしてみたが、音は消えない。
一度、メーカーに相談しようということになり、点検の日を調整した。
 
それからの一週間は、コインランドリーに通う日々となり、生活の中の負担が増えた。
 
メーカー点検の当日、担当の方からの一言。
「洗濯機の裏内部にある、輸送用ボルトが固定されたままでした」
輸送用ボルトというのは、洗濯機を移動する時に中のドラム部分が動かないように固定するネジのことである。
 
確かに、トラブルシューティングの中に、そのことも書かれていた。
でも、まさか、あのイケメン爽やかくんがそんなミスをするはずがないと半信半疑でいた。
 
心のどこかで、そうかもしれないと思っていた引っかかりが現実となってしまった。
あのイケメン、仕事してなかったのか!!!
夫は、私の10倍怒っていて、「新品に取り替えてもらおう」と言い出した。
「そこまでしなくてもいいんじゃない?」と言っても、歯止めがきかない。
モンスターカスタマーと化した夫は、絶対に引くことなく、家電量販店とやりあった結果、新品と交換することになった。こういう時に、人の本性って垣間見えるんだな……。
 
そして、同じ設置業者が新品の洗濯機を設置するために現れた。
その方は、イケメンではなく、この辺りのエリア代表のようで、平謝りと共に洗濯機の設置を終えた。なんか、ちょっとチャラい印象を受けた。
 
正直、一言申したい気分だったが、ここで言っても何も生まれないと思い、ぐっと堪えた。
 
エリア代表が家から出ていく背中を追うと、ズボンのお尻ポケットからあるキーホルダーがぶら下がっていた。
 
「喧嘩上等」と彫られた小さな木の板だった。
 
「こっちのセリフだよ!!! どこで売ってんだ、そのキーホルダー!!!」と思いながら見送った。
 
読者の皆様へ
ドラム式洗濯機設置の際は、洗濯機裏面にある「輸送用ボルト」を外しているところを目視で確認することを強くお勧めします。
 
 
 
 
***
 
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2023-09-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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