読書は地球にやさしい趣味である
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:菅 宏之(ライティング・ゼミ8月コース)
自分でいうのも何だが、私は多趣味人間だ。これまでにカメラ、模型、クルマやバイクいじり、鉄道関係でいくと、撮り鉄、乗り鉄なんでもござれ。スポーツも苦手な部類だが草野球はかじっていた。
どれだけ浪費してきたかは特に記録してきたわけでもなく、記憶に頼るしかない。
そのときどきで熱中しては冷めて、熱中しては冷めての繰り返し。
移ろいやすく、飽き性なのかもしれない。
そんな中唯一続いているのが読書で、未だ飽きたと感じたことがない。
今も週に3~4回は本屋に立ち寄っている。平日だと会社が終わっての帰路の途中で本屋に立ち寄る。
「本屋」と称しているのは、新刊書店だけではなくブックオフや古書店にも立ち寄るからで、
いつもの馴染みの本屋だけではなく、出張時に知らない街にある本屋に立ち寄った時にどんな本に出合うかが楽しみだ。
古書店でずっと探していた本が見つけた時には、深い湖に沈んだ宝箱を見つけた様な感覚でこの上ない喜びだ。
いつ頃から本を読むのが好きになったのだろうか? 振り返ると両親の影響かもしれない。
影響というのは、両親がよく読書をしていたという遺伝的なことではなく、しつけ的なことからかもしれない。小学校の頃だろうか。家族で買い物に出かけた時に、
「このオモチャ、友達同士で流行ってるねん。買って!」
「アカン、そんなお金は家にない」
「ケチッ!」
「それやったら本やったら買ってあげるわ。何がいい?」
「そやなぁ……」
という自分に問いかけておいて考えさせる間もなく、
「そや、巨人の星やったら買ってあげるわ。ちょうど最近、最終巻が出たばかりや」
「なんや、それお父ちゃんが読みたいのとちゃうか?」
「ハハハ……」
結局、そんなやりとりが日常茶飯事で本当に欲しいオモチャは買ってもらえるはずはなく、初めて読んだのがマンガの巨人の星で、確か18巻のコミックだったと思う。
「そんなん、オモチャの方が安いやんか……」
それまでに親から絵本を読んでもらった記憶もないが、こうして本を読むことが始まった。そうこうするうちに気付いたことが一つあった。
当時は毎日のお小遣いが1日20円だったが、当然20円では本1冊も買えるはずはなく、どうしても欲しいものがあれば、貯めるしかなかった。
そんな中で、本だけは両親に相談したら買ってもらうことが出来た。
今思い出すと、本を買う上で以下のような我が家のルールがあったと思う。
その1 マンガは週刊雑誌ではなく、コミックで揃えること。
その2 一人の作家の作品は、数作品を読み続けること。
その3 流行もの本は、世間がさめてから買うこと。
その1にある様に、今でもマンガはコミックで読むことが基本となっている。両親に買ってもらうことも影響していたかもしれない。今思えば、ちょっと大人びた艶やか系のマンガも読んで、子どもながらに刺激的だった。自分ながらに夢中になったのは子連れ狼だった。
その2で夢中になったのは、江戸川乱歩の怪人二十面相シリーズだ。明知小五郎探偵の活躍ぶりにワクワクした。このシリーズは学校の図書室にもあったので、家でも学校でも暇さえあれば読み続けていた。
その3にある流行もの本は、両親はなかなか渋って買ってくれなかった。流行っている時だからこそ、学校や放課後の友だち同士の会話になるのに、いつも付いていけなかった記憶がある。
具体的な本の名称は思い出せないが、いわゆるネス湖のネッシーや曲がるスプーンといった真実味の薄いものだったと思う。
さて、この我が家のルールを読んで、お気づきだろうか?
両親は自宅に増殖した本が一定量になると、古本屋に売って出来る限り高額で引き取ってもらえる様にしていたのだ。
マンガのコミックは全巻揃いが好条件だし、一人の作家で数作品をシリーズ本で揃えていると好条件、それで得たお金で流行ものの作品を古本屋で安く買う。道理で、
「本に折り目が付かない様に大事に読みなさい。ページの端を折るのもダメよ!」
「いちいち、うるさいな! 放っといてぇな」
そんなやりとりが日常茶飯事だった。
本来であれば繰り返し読みたい本もあるので、大切にとって置きたかったが、学校に行っている間に処分するので、どうしようもなかった。
そんな小学生時代の読書体験が今も続いているので立派な趣味なのだが、この趣味の唯一の短所は部屋の場所をとること。
自分の書斎部屋はもちろん、自宅のあちこちに単行本や文庫本、ムックなどの雑誌を積んでいて、部屋によっては足を踏み入れる場所もない状態だ。
これにはさすがにカミさんからも、
「ヒェ~、気づいたら本が細胞の様に増殖して、自宅が占拠されている……」
「そんなことはええから、ええ加減に要らんものは処分してよ!」
そんな一言一言が、今の日常的会話で飛び交っている。
両親が定めていたルールを思い出したことを機会に、いつまでも残しておきたい本、雑誌を選別することにしようと思う。でも待てよ?
「これって、今でいう地球にやさしいSDGsと違うの?」
「SDGsを半世紀も前に実践していた両親はエライ! 読書は地球にやさしい趣味なんや」
さて、ムダ話はそこそこにして、選別を始めよう……
***
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