メディアグランプリ

失敗のかぼちゃケーキに学ぶ夢の叶え方


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:パナ子(ライティング実践教室)
 
 
「最初は仕事がなくてねぇ。どこからどうやって仕事をもらったらいいのかもわからなくて困りましたよ」
 
今、私の目の前では、70に近い老紳士が昔を思い出しながら一つ一つ噛みしめるように語っている。
世間一般では独立していわゆる「成功者」に見えるこの方にも、そんな風に胸がざわつくような不安な夜があったのかと思うと何故か感慨深いものがあった。
 
体操教室仲間であるこの老紳士のNさんが、実は夫と昔、仕事で一緒になったことがある方だとわかったのは通いだして半年以上が過ぎた時だった。2人は脱サラしてそれぞれ独立した業種で仲間だったのだ。
夫のことを懐かしんでくれたNさんは、時折目線を斜め上に向けながら、サラリーマンの早期退職を経て、独立した際の苦労などを教えてくれた。
 
知り合いのつてを使って細々と仕事を始めたNさんだったが、進め方がわからない時もあり、最初は変な汗をかきながら参考書片手に臨む日もあったという。
 
夫もまったく同じような経験をしており、独立したての頃は明日の仕事があるかもわからない状態で不安に押しつぶされそうだったと言っていた。
 
今、その専門職として独立してやれている二人に共通して言えるのは、恥をかいたり汗をかいたりしながらも、失敗を恐れず果敢に挑戦し続けたからこそだということだった。
 
いい話を聞かせてもらったなぁと思った数日後、小さな出来事とはいえ、私はまたこの事を噛みしめることになるのである。
 
予定のない土曜日の昼下がり、何気なくSNSをスクロールしていると美味しそうなケーキの画像が流れてきた。
炊飯器でも作れるというかぼちゃのケーキだった。
 
これはいい! これなら特別な器具がなくても作れそうだし、いい暇つぶしにもなりそうだ。
料理に興味のある7才の長男に聞くと案の定「やりたい!!」との答え。
しかも、奇跡的にかぼちゃ、卵、砂糖、小麦粉、バニラエッセンスなど自宅に全ての材料が揃っている。よし、これは作るしかない!
 
早速かぼちゃを電子レンジでチンして裏ごしする作業を始める。台所でなにやら動き始めた私と7才を見て、慌てて4才の次男も飛んできた。
「ぼくもやる!!」
二人はしっかりとエプロンに身を包んだ。
 
ここで一つ問題点が起きる。
日頃から本格的なお菓子作りとは無縁の我が家には、「はかり」がない。仕方がない、目分量でなんとかレシピの映像に近いものを目指す。
一番気になったのは砂糖の量だった。だいたいこんなものかなと思われる量をスプーンで2、3杯入れてみる。
 
二人の小さなコックたちが一生懸命に攪拌していくと、とろっとしていていい感じのなめらかさになった。出来上がった生地を炊飯器に入れ、「炊飯」のボタンをエイッと押す。
 
どうか! おいしく出来上がりますように!!
 
30分程が経過してリビングにふわっといい匂いが漂ってきた。
ピーピーピー!! 炊飯器から完成の合図。
 
さあ運命の分かれ道! かぼちゃケーキは美味しく出来たのか!?
 
パカッと蓋を開くとモアモアと大量の湯気が吐きだされた後に、いい感じに膨らんだかぼちゃケーキがお目見えした。大きめの白い皿にそれをひっくり返して出してみる。
 
ほんの少し焦げてはいるがなかなかうまい具合に焼けている。これは期待できそうだ。いそいそと取り分け皿とフォークを準備して、いざ実食。
 
ところがみんな、無言……からの、無言。
 
7才が言いにくそうに呟く。
「あのさ……、これ……、味がないね」
 
そう! それは、みんなが心の中で思っていたことだ。味が薄いとかまずいとかじゃなくて、味が無い!! 敗因はすべて良かれと思って少し遠慮がちにいれた砂糖の量だった。
 
ショックだった。簡単とはいえ、みんなでワクワクして作ったケーキの味が無いなんて。土曜の昼下がりに焼き上がったケーキが超美味しかったら、「顧客満足度100」って感じで子供たちも大喜びするはずだったろうに。私は心底落胆した。
 
しかし、次の瞬間、私は7才の長男に救われることになるのである。
 
「いやぁ、でもこれ食べたらさ、普段買っているお菓子に使われている砂糖の量がどれくらいかってわかるよね。すごく使われてるんだろうね」
我が息子ながらその視点で物を語ることに感心した。
 
ポカンと口を開けている私に向かって、息子は続けた。
「ぼくはさ、作っている間すごく楽しかったよ」
「今日の失敗をさ、また次に活かしたらいいやん!」
「次作るときは、もう少し砂糖の量が多めやな」
 
なんという事だろう。私の落胆が見ていられなかったのか、息子が次々繰り出してくる言葉は私にトライ&エラーの大切さを教えてくれた。
 
そうだよな、一回失敗したくらいでなんだよ。
元々お菓子作りが得意なわけでもないのに、またやり直せばいいじゃん。
一回きりで大成功を収めようなんて虫がよすぎるんだよ。
息子の言葉を噛みしめているうち、私は元気を取り戻した。
 
失敗は、改札口のようなものだと思う。
ゴールという名の目的地に向けて電車に乗り込みたいなら、まずは改札口を通過しなければならない。
何かの成功を収めたい時もそれは同じで、失敗は避けて通るものじゃなくて、むしろ必ずそこを通るものなのだ、きっと。
 
そのときに痛みを感じるかもしれないし、弾き返されて恥をかくこともあるかもしれない。それでも今のコンフォートゾーンを抜け出したいなら痛みや恥の改札口を通る必要があるのだ。
 
お菓子作りの失敗を経て、やはり思うのはNさんや夫が恐怖と戦いながらも通り抜けてきた改札口がいくつもあるのだろうということだった。
そして長男が教えてくれたように、失敗があるからこそ次にいかせるポイントをゲットできるこということだ。
 
夢や目標があると言いながらも、痛くも痒くもないコンフォートゾーンから抜け出せない自分になってはいないか。
成長するなら失敗ありき、だよ。3人が教えてくれたこのことをお守りにして次の一歩を踏み出した
 
 
 
 
***
 
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2023-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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