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辛さは味ではなく快楽、人はなぜ激辛を求めるのか


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記事:上山竜太(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「辛味って味じゃなくてただの痛みですよ」
ある日、そう聞いた。辛い料理が好きで、たまに無性に食べたくなる自分にとっては衝撃の事実であった。味じゃなければ何なんだ。痛みと言われればそうなのかもしれないが……。
 
味覚というのは甘味、塩味、酸味、苦み、うま味の5つのことであり、これらは舌で味を感じる感覚だ。辛味は味覚に含まれない。舌で痛みを感じるという、ただの痛みなのだ。つまり辛味が好きと言うのは、叩かれたりして痛いのが好き、というのと大して変わりがないことになる。辛い物を食べると「口から火が出そう」とか言うけど、口の中が痛くてヒリヒリしているだけである。
しかも、自分の場合は「辛すぎる」と思うレベルのものを食べるともれなくおなかの調子も悪くなる。辛さは舌だけでなくおなかも刺激してしまうので、腸の運動が活発になりすぎてしまうのだ。
一体なぜそれほどつらい思いをしてまで人は辛い物を食べたくなるのか。
 
「激辛ブーム」は1984年ごろからと言われており、もう40年にもなる。お菓子やカップ麺の「激辛化」からはじまり、東南アジア系のエスニック料理のブーム、ハバネロや食べるラー油、シビレ系と、ブームは途切れることなく続いている。
20代~50代の男女にアンケートを取ったところ、約8割もの人が辛い物は「とても好き」「好き」「どちらかといえば好き」と回答したアンケート結果もある。逆に言うと2割の人は「辛いものが好きではない」ということになるけど、カレーや麻婆豆腐、辛子明太子、キムチ、ペペロンチーノあたりの辛い料理を嫌いという人はあまり見たことがない。
 
辛い料理といえば中華料理が思い浮かぶが、中華料理では辛味にもいろいろある。痺れる辛味が特徴の「麻(マー)」、いわゆるトウガラシのような熱をもった辛味である「辣(ラー)」といったものは聞いたことがある人は多いだろう。ただ単に「辛い」というだけでなく、様々な種類の辛さがある。
日本でもわさびやからし、山椒等の調味料で辛味を楽しむ文化は昔からあり、大根や玉ねぎのような調理方法によって辛味を発揮する食べ物も多い。古今東西津々浦々、辛い料理は発展しているのである。
 
辛味は味覚ではなく痛覚だ。しかし、辛い物が好きな人は多い。人はなぜ辛いものを求めるのか。「辛い!辛い!」と言いながらも食べてしまう。
最近はカレーや辛麺等の料理で辛さを選べるお店は多いし、テレビなんかでは激辛料理が罰ゲームで使われてしまうこともあるけれども、辛さと旨さを両立した激辛料理の完食にチャレンジする企画はたくさんある。格闘家が「殴られる蹴られる締められる」等の痛みには慣れていくのと同様、辛い物を食べ続けると舌が鍛えられていくのだとか。そうするとより辛い物を求めていくようになる。
 
一見すると、味でもないし痛いだけで体調も崩してしまう辛い物だが、なぜ人々は辛い物を求めるのであろうか。それは、辛い物を食べると身体の機能を活性化するホルモンが分泌されるからである。また、別の脳をリラックスしストレスから解放するホルモンも分泌される。そのため、辛い物を食べると「気持ち良い」と脳が判断するのだ。気持ちいいを求めてさらに辛い物を食べる。
なんだかこれだけ聞くと「辛い食べ物ってヤバイ食べ物だな」と思うのだが、これらのホルモンは運動しているときや、恋愛感情を抱いているとき、入浴中等にも分泌されるものであるので、ヤバイものではない。
 
それに、「痛い」という感覚は悪いことばかりではない。「痛気持ちいい」と言われることもあるように、多少の痛みは気持ちいいと感じることもある。適度な運動の後の筋肉痛は心地いいし、少し強めのツボ押しやマッサージなんかもわざわざ人は痛い思いをしながら受けに行く。
これが激しい運動の後であれば筋肉痛も日常生活に支障をきたすほどだし、足ツボの激痛に悶える人をテレビで見ることもある。辛さだってほどほどであればとても気持ちの良い痛みなのである。
 
このように、辛いものは脳的にも肉体的にも心地よさを生み出すものなのである。そのため人は辛味を求めるのだ。決して、辛い思いを我慢しているわけではないのである。他の味覚とは違い、全身で快楽を感じるのが辛味の魅力なのである。辛ければ辛いほど良い、ということではない。その人にとって程よい辛さは異なる。ちょうどいい辛さを楽しめばいいのである。辛さに慣れてしまった人は、さらなる快楽を求め、より辛い食べ物を求めるのであろう。
 
寒くなってきたこの頃。辛い物といえば汗をかき、疲労回復にも良いので夏というイメージがあるが、体を温めるために寒い冬でも食べたいものだ。
さて、今日も辛い物を食べよう。辛麺屋で自分の限界に挑戦したい。
 
 
 
 
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2023-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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