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君は湿った木

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記事:正月玲子(2023年・年末集中コース)
 
 
「君は湿った木だね」
インド出身のヨガインストラクターが私に微笑みながら言った。
 
海外で初めてヨガに触れ、その魅力に取り憑かれた。
そして約3年間、毎日ヨガスタジオに通い、満を持して2ヶ月間のヨガのインストラクター養成講座を受講した。
 
カナダ人とインド人2人の講師と、中国人・台湾人・デンマーク人・日本人と国際色豊かな受講者と、朝から晩まで、ヨガのポーズや哲学、解剖学などヨガだけに集中できる2ヶ月間。
元来オリエンタルな雰囲気が好きなこともあり、毎朝お香の匂いと英語と中国語が飛び交う環境に身を置く幸せに気分も高揚した。
 
早朝5時半から鼻から水を流したり、1リットルの水を飲んで吐くという体の中を綺麗にすると言われるクレンジングも初めての経験で、最初のうちは人前で行うことに躊躇したけれど、次第に慣れ、そのクレンジングと瞑想の効果も重なり、出来るヨガのポーズの難度が上がっていくにつれ、益々ヨガに夢中になっていった。
 
 
トレーニングが1ヶ月過ぎた頃、ある哲学の時間に「人が学びを習得するペースを3種類の樹木に例えることができる」という題材が取り上げられた。
習得が早い人を乾いた木、普通のペースの人を生の木、そして遅い人を湿った木という3つの比喩が、学びのペースを象徴しているという。
冒頭の一言は、その授業で講師が放った言葉。
 
 
鉄棒の逆上がりや九九など、子供の頃から確かに何かを習得することが人より遅かった。とても器用なタイプとは言い難い。
自分自身でも「確かに自分は湿った木タイプだと」納得する一方で「湿った樹木=君は理解するのが遅い」とクラスメートの前で言われた恥ずかしさもあり、ただ笑っていた……
 
すると、クラスメートのナタリーが「あんなことを皆の前で言うなんて!失礼だわ!」と私の代わりに感情を爆発させ講師に抗議し、台湾人のヴァネッサとクリスティーンもそれに加わった。
講師は恐らく半分冗談のつもりだったのだろう。困った顔で「このセオリーには良し悪しはない。ただ人のタイプだ」とその題材について丁寧に説明した。
私は他人事のようにヒートアップした教室の状況を見ながら、「ここで感情的になれないこと。この事態を特に問題だと捉えないことも、湿った木だからなのか?」などと考えていた。
 
 
暖かい友人たちのサポートと元来のヨガに対する情熱のおかげで無事ヨガ・インストラクターの免許を取得し、その後も数多く異なるヨガスタイルのインストラクター養成講座を受講したがどれも楽しい思い出に溢れていて、あの頃のように苦い思い出はない。
 
先日長年の友人である「湿った木」と言ったインド人講師と会った。
彼とは、月に一度は食事をし、一緒にヨガの練習をする良いヨガ友だが、これまで一度もあの時のトレーニングでの出来事が話題に登ることはなく、私自身がトレーニングの講師をするようになったこともあり、話の流れで思い出話になった。
 
彼が言った「湿った木」には、習得するペースが遅いというだけではなくその理由がカギになっている。湿っているが故に着火するのが遅い。だからこそ、着火するために我慢強く努力し続けるという意味があるという。
 
インド古来の健康法であるアーユルヴェーダでは、人の本質を火・風・水(土)の3つの種類に分ける。私は脈拍や思考の傾向から水(土)に分類される。
水(土)の思考や行動の傾向は、冷静で、穏やか、粘り強く、一つのことを着実にこなす。彼がいう「湿った木」はここから来ているのだと思い納得した。
 
 
自分の性格や性質を理解した上で改めて当時を振り返り、長期的なヨガの道へ受講生を誘導するという講師の使命を考えると、彼の策略にすっかりハマってしまったようだと気づいた。
あの時教室がヒートアップせず、友人や私の心や思考も動かなかったら、楽しいだけの一過性のクラスだったら、身体を動かしただ汗をかくだけの表面上のヨガにハマり、流行が過ぎれば他の流行へ流れていった可能性もある。
あの時のクラスや友人、自分の感情の揺れから「湿った木」の意味を考え、理解が遅いなら努力すれば良いと反発心が芽生えたことで、今もヨガを続けているのではないか?
 
何がきっかけで火が着くか分からない。
 
短所を指摘されたと思っていた「湿った木」。本当に彼が意図していた意味は長所だった!
粘り強さを頑固、穏やかさを根暗と捉える人もいる。言葉をどう捉えるかは本人次第ではないだろうか?
それなら、自分が前向きに進める方を選んでいきたい!
 
 
 
 
***
 
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2023-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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