松も竹もひとも同じ地球上に育っているもの/ことである
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記事:井上和興(2023年・年末集中コース)
「松のことは松に習え、竹のことは竹に習え」
このことばは、松尾芭蕉さんが残してくださったことばである。と言っても、今日朝出勤する途中のラジオで初めて知ったことばではある。いままでわたしはこのことばを聞いたことがなく、「ああっ、知らなくてごめんなさい」となぜか少し恥ずかしくなった。まあそれは横に置いておきたいと思う。この芭蕉さんのことばを聞いて、「松のことは松にしかわからない。竹のことは竹にしかわからない。なので、○○のことが知りたければ、○○(をちゃんと知っているひと)に習わないと本質はわからないでしょ」ということが言いたいのかなあとぱっと頭に浮かんだ。
こんな風に思った後にラジオのパーソナリティの方は、芭蕉さんのことばの解説的なことを教えてくださった。わたしが頭に浮かべた内容はあながち間違ってはいなかったようではある。もう少し付け加えるとすれば、「人間は先入観を持って、もの/ことを見る傾向がある。そのため、もの/ことをあるがまま見るのは難しい。難しいが、もの/ことそのものになろうとすることで、理解ができるのではないか」ということが解説された(わたしの受け取ったニュアンスが加わっていることは勘弁していただきたい)。
なるほどなあと思いつつも、「もの/ことそのものになろうとする」ということとはどんなことなのだろうか、とも思った。本当は良くないが、車を運転しながら考えてみた。
松にはわたしはなれない。ただ、松をじっと観察することはできる。松のことを観察し続けて、興味をもって理解しようとすることもできる。そうすることで、松の周辺にある土・太陽・水が松にどのように関わっているのか、どのように松が育っていくのか、どのような歴史があって松が生まれてきたのか、などいくつもの問いが生まれる。こうやって松のことを理解しようとすることで、同じような問いで竹を理解しようとすることができるのかもしれない。松のことを今見えているところだけ観察していると、竹の理解につながるような観察はできない。表面的な観察だけだと、松と竹は別々のものに見えてしまうかもしれない。同じ地球上に育っている植物なのに……。
いまのところ、「もの/ことそのものになろうとする」ということはこういうことなのではないかと考えている。こうやって考えてみて、物事を理解するときには観察し続けることが重要なのではないかということを芭蕉さんは言いたかったのかなあという結論に至っている。
今まで書いてきたことは、ひとを理解しようとするときにもつながることなのかもしれない。ひとを理解しようとするとき、「あー、こんなひとかな」というファーストインプレッションというものがある。案外、このファーストインプレッションは強力である。わたしは、ファーストインプレッションを結構大事にしている。が、今回の芭蕉さんのことばと出会って、ファーストインプレッションとどう付き合っていくか考え直す必要があるのではないかと感じている。わたしの場合、初めて出会ったひとに「悪い」印象を持ってしまうと、そのひととまた会いたいとはなかなか思うことができない。そうすることで、そのひとを観察する機会を作ることができなくなる。もちろん、「悪い」印象を持ったひとに対して、無理に会う機会を作る必要もない。無理に会うことによって、自分自身が不快な気持ちになってしまう。その一方で、無理に会わないようにする必要もない。初めて職場で一緒に働くことになったひとは、また次の日も会わないといけない。なにかの趣味のサークルに参加し始めたときにも「悪い」印象を持ってしまったひととまた顔を合わせないといけないこともある。そんなときに松や竹のことを思い出してみる。そうすると、もう一度その「悪い」印象をもってしまったひとのことを観察し続け、興味を持って理解しようとすることができる機会を自分自身に与えることができるかもしれない。そうすると、そのひとの周辺にあるもの/ことや仲良くしているひとたちとそのひとがどのような関わりを持っているのか、どんな風に育ってきたひとなのか、どんなルーツがあるひとだろうか、のような問いを立てることができる。これらの問いを持ちつつそのひとを観察し続けると、強力であったファーストインプレションを手放し、もしかしたらほんとうに気の置けない仲間に変わっているかもしれないし、そうでないかもしれない。
「松も竹もひとも同じ地球上に育っているもの/ことである」、そんなことを考えるとつながらなかったもの/ことがなぜか愛おしくなるんじゃないか。そんな想いで江戸時代に芭蕉さんは俳句を詠んでいたのかなあと想像するだけで、ワクワクする今日の朝の出勤であった。
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