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楽しい仕事とつまらない仕事のたった一つの違い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小栗 健吾(ライティング・ゼミ 10月コース)
 
 
「楽しい仕事とつまらない仕事の違いは1つしかない。何だかわかるかい?」
 
不意に師匠から投げかけられた質問に、僕は沈黙した。
ちょうど職場が離職者もクレーム対応もとても多いコールセンタを複数束ねる責任者になったばかりで、日々起こるトラブルの中で仕事を楽しめずに悩んでいたところだった。
 
「同じ仕事を、楽しそうにしている人とつまらなそうにしている人にあったことはないかい?」
続けてそう言われて、一生懸命に考えて、いくつかの光景を思い出した。
 
高校生の頃、朝早く乗る最寄りの駅で、いつも不愉快そうに手荒く掃除をしながら、大きな音をたてて屑入れをけとばさんばかりにしている人がいた。この人が近づいてくると、ホウキで乱暴に足をすくわれそうな気がして怖かった。
一方で、降りる駅には、同じく掃除をされている方がいたが、動きは丁寧でやさしい。いつも笑顔で「おはよう」とか「いってらっしゃい」と声をかけてくれる。こちらも嬉しくなってあいさつを返していたし、気持ちがすがすがしくなった。
前の人は、いかにも自分の仕事がいやで仕方ないという気持ちがあらわになっていて、こちらも不愉快な気分になった。一方で後の人には、自分の仕事を丁寧に一生懸命やっている姿勢が伝わってきた。まったく同じ仕事なのに。
 
そう考えていたら、いろいろと思い出してきた。
かつて、「驚くほど楽しそうにティッシュ配りをしているおねえさん」にあったことがある。朝から、地下鉄の出口をあがったところに、満面の笑顔で元気よく「おはようございます!」とか、「寒いですね。今日も元気にいってらっしゃい!」などと声をかけながら次々とティッシュをわたしていく。
もちろん、下を向いて無視する人もいたが、圧倒的多数はうけとっていた。その醸し出す明るい雰囲気に元気をもらえるたからだ。
翌朝も楽しみにしていたら、今度はやる気のなさそうな若い男性が、無言でティッシュを配っていた。ほとんどの人は受け取らない。もちろん、僕も受け取らなかった。
 
こんな話も思い出した。
ある大企業には、文書処理室というのがあって、社内の郵送物を仕分けして届ける係があった。ほとんどの人がつまらなそうに仕事をする中で、絶大な人気を誇るAさんがいた。Aさんは、郵送物を配りながら、元気がなさそうな社員をみつけると、「自作の名言カード」や「一言メッセージ」を一緒にわたしてくる。会社が大きな問題に揺れたときは、社長が苦悩する姿を見てしまい、さすがに直接お会いはできなかったが、秘書を通じて毎日毎日励ましのメッセージカードを100日以上入れ続けたという。
翌年、Aさんは「社長賞」を受賞し、「あなたの仕事は郵便物を配るのでなく、私を含めて社内中に元気を配る仕事をしてくれていた」と社長からの感謝状をもらっていた。
 
Aさんの後輩のBさんは、新入社員で最初の配属がいきなり「シュレッダー係」だった。各部署からでる大量の顧客情報などをシュレッダーしていく仕事だ。機密書類などもあるので、こちらは集めるのでなく各部署の若手社員などが書類を運んでくる。
最初は嫌で仕方なかった。「なんで、同期は楽しそうな仕事なのに、自分ばっかり……」と落ち込んだ。ただ、Aさんの仕事ぶりを見ていて、自分もできることをしようと決めた。「ようこそ、シュレッダー室へ」といった明るいのぼりをつくったり、コーヒーを飲めるスペースを用意したりした。
シュレッダーをしながら、いろんな社員の話を聴くようになった。段々と、「シュレッダー室にいくと元気になる」という評判ができて、シュレッダー室はカウンセリングルームみたいになっていった。
あるとき、その評判をきいた新任の取締役が、面白半分に見に行った。Bさんの明るい対応や雰囲気をすっかり気に入った役員はBさんを役員秘書として抜擢した。
 
清掃員、ティッシュ配り、郵便配送係、シュレッダー係。
一見、どれもこれもつまらない仕事のように思えてしまうかもしれない。
実際、自分もその立場に配属されたら、ふてくされてしまうかもしれない。
 
ただ、そんな中で実際には、その仕事に意味や楽しさをみつけて、違う仕事にしてしまう人たちがいる。「まわりを元気にする仕事」に。
 
そんなことを思い出しながら、急にしゃべりたくなって、一気に話をした。
「あはは。そうそう、自分の中で結論がでているみたいだね。
どんな仕事でも、自分の受け止め方、考え方次第で楽しくもつまらなくもなるんだ。そのために大事なのは、自分らしい【こだわり】をもってやっていくこと。
そうしたら、どんな仕事でも絶対に楽しくなってくる。つまらない仕事があるのでなく、自分がつまらなく仕事をしているだけだよ」
 
本当にそうだと思った。
僕は、会社にもどって、特に厳しい対応を求められているコールセンタに顔をだした。
そこの電話オペレータで、お客さまからの評判が最もよいCさんに、「仕事のときに、自分らしい【こだわり】ってある?」と聞いてみた。
すると、「もちろんあります。見えないお客様との対応を心から楽しむことと、電話応対でお客様が見えないからこそ、人生最高の笑顔をだして対応しています!」ととびきりの笑顔で答えてくれた。なんともすがすがしい気持ちになるとともに感謝したくなった。
 
不思議なものである。気持ちが変わったその日を境に、毎日つまらなかったコールセンタ運営が楽しい仕事へ変わっていった。
 
 
 
 
***
 
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2024-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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