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散財妻、節約ゲームを開始します

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:パナ子(ライティング実践教室)
 
 
「あの……ちょっと言いにくいのだけど……私用通帳の残高がわずかで心もとないです。20万程入れて頂けないでしょうか?」
 
昨年の12月初め、夫のLINEにメッセージを送った。
どんな反応をされるのか若干恐怖で直接は言えない。普段よりも丁重な雰囲気と低姿勢の感じを出すため、敬語に加え「点々」と「汗をかいた苦笑いの絵文字」を乱用した。
 
生活費とは別の完全に私のプライベート通帳、すなわち小遣いとしての貯金が底を尽きそうになっていた。これでも新卒として働きだしてからわずかながら毎月貯金はしていたのだ。私の計画性の無さを熟知していた母が口やかましく「天引きで必ず貯金はしておきなさい」と言い続けてくれたおかげだった。
 
しかし、額が少なかった。
今思えばもう少し貯蓄に回すことができただろう。手元に残るお金が少なくなるのを危惧した結果、貯蓄を2万程度に後は毎月全て使ってしまった。
そう、私は、あればあるだけ使ってしまう散財野郎なのである。
 
アラフォー出産により気力体力が完全に追いつかなくなった私は専業主婦となったが、勤めていた会社を退職した後もその傾向は一向に治らなかった。さすがに生活費からジャンジャン遊びに使う程余裕はないので、会社員時代に貯めておいたささやかな貯金を食い潰しながら、今まで通り洋服を買ったり、ランチをしたり、好きな勉強をするために講座代金を支払ったりしていた。
 
あれよあれよと言う間に貯金は目減りし、山頂からスキーで滑り降りるように下降線を辿っていった。
 
さすがにまずいと思ったのは、ある講座の代金を支払ったら残高が限りなくゼロに近づくことが確定した時だった。しかもある一定額を夫から毎月もらっているというのに!
 
これはもう夫にお願いするしかない。
頭を下げて自由に使う金をくれ、と言うのだ。
 
ドキドキしながら待っていると、仕事中の夫からLINEの返信が来た。
「では、2人になれるタイミングで一旦話を聞かせて」
いかにも夫らしい返信であった。
 
夫は仕事柄、決算書を読んだり、収支に関するチェック等もやる。加えて超絶几帳面なA型という性質も加わり、なんとなくでお金を支払うことを極端に嫌う。
 
私は悟った。これはもう事情聴取される未来しかない。
あぁこわい! なぜそんなに計画性がないのかとこってり絞られはしないだろうか。
 
実を言うと、おおかた決まった額でやりくりしてほしいと言われて受け取っていた少し余裕のある生活費でさえ何度か赤字を連発して、臨時で追加してもらった。私は既に前科があるのだ。
 
いよいよ、事情聴取の日がやってきた。
「で、どういうことかな?」
夫の笑顔がこわい。もう逃げられないと観念した私は洗いざらい話すことにした。きっと犯人もデスクの照明を顔に当てられる時はこんな気分なのだろう。
 
洋服や化粧品、友達との付き合いや好きな勉強につぎ込んだ受講料の数々……。気が付けば残高が底を尽きそうだった事。次の諸々の引き落としも決まっているのでお金がないと困る事。
 
「ほう、ほう」と相槌を打ちながら話を聞いている夫がもう刑事にしか見えない。全てを話し終わった時「なるほどね」と言った後、夫は、まず今回支払いが決まっているものについては出そうと言ってくれた。
 
その後こう続けた。
「で、ここからは提案なんだけど。物価の上昇により生活費がもっとかかってしまう可能性も出て来たよね? だからこれまでにプラス2万円の生活費を口座に入れるよ。それで何とかやりくりをしてほしい。ただし、もし生活費を抑えて余った場合はパナ子ちゃんの好きにしていいことにしよう」
 
なんと余剰金は使うもよし、貯蓄もよし、はたまた投資にまわすもよし! というではないか。さすがコーチングを勉強しているだけのことはある。私に選択の幅を持たせることにより、当事者意識を持たせることにより楽しみながら節約させるということなのだろう。俄然やる気が出てきた私は低い立場の者のくせして脳内では腕組みをしながら高笑いした。
「はーっはっは! 実に面白い。やってやろうじゃないの!」
 
そうと決まれば今まで鎮火していた私の節約魂に一気に火が付いた。
 
ちょっとでも浮かせて、こづかいを増やしたい!
まず癖になりつつあったコンビニ通いを半分以下に減らした。過去の傾向を探ると私の場合、子育てで疲れた際にコンビニに吸い込まれるように入店することが多かった。美味しいコーヒーやコンビニ限定のスイーツやチルド商品などを買って気分転換をしていたのだ。コンビニは現代人のオアシスだ。ただ便利なだけあって単価が高い。働きぶりより多めに自分へのご褒美を多発してしまっていた自分を改めコンビニ節約により500円×5回……これで月2,500円は浮いた。
 
また幼稚園に通う次男の単発のお預かり料金も節約に該当した。小学生の長男の習い事の送迎等でバタつく際、単発の延長保育をしていたのだが、一回あたり600円×6回……これで3,600円かかっていたのを多少バタついても次男を預けずに時間をやりくりした結果、この額が浮いた。
 
この時点で6,100円がチャリンと私の懐に入ることになると思うと、1円も稼いでいないものからするとヨダレものである。
 
この他にも全体的に節約魂のおかげで、電気をマメに消す、水道を出しっぱなしにしない、ドラッグストアでの買い物はポイント5倍デーのみ、などゲーム感覚でお金を無駄使いしない精神が鍛えられつつある。
 
人間行動の心理学者のブルームはモチベーションについてこう定義している。
 
「がんばればどれだけのことが成し遂げられ(期待)、
それが成し遂げられたらいったいさらになにがもたらされ(用具性)、
もたらされたものそれぞれにどれだけの値打ちがあると予想されるか(誘意性)、
についての知覚、信念や態度という心理的過程がモティベーションを左右している。」
 
私はこづかいを増やすべく、これから毎日節約に励むことを誓う。
 
 
 
 
***
 
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2024-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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