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「飲みニケーション」の代替案ってなに?


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記事:水戸 綾香(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
「今度、飲みに行こうよ」
 
社会人になってからは、プライベートでの遊びの誘い方はこの言葉が最も多く使われる。
もう死語になってしまったのかもしれないが、「飲みニケーション」という言葉があるように、親睦を深めたいと思った相手への誘い文句には「飲み」が使われることが多い。
 
実際に社会人になってからは、仕事関係の人にもプライベートの友人にも
「今度、飲みに行こうよ」と誘われることが多くなった。
「飲み」以外の理由で誘われることなんて片手で数えられるくらい少ないかもしれない。
 
だが、私は「飲みに行こう」と言われるとその返しになんとも困ってしまうのだ。
 
最初に断っておくと、誘われること自体はとてもうれしい。プライベートな時間を割いてでも会いたい、話したいと思ってもらえることは大変光栄なことだとすら思う。
 
だから何も考えずに答えるなら、もちろん回答は「イエス」。
 
でも私が回答に躊躇ってしまうのは、私が酒を飲めない人間であるからなのだ。
 
相手は別に酒を飲むことだけが目的ではないと思う。
だから「酒が飲めないんですけど良いですか?」と一言断ってしまえば良いのだろう。
 
だが、仮にも「(酒を)飲みに行こう」と誘われているのに、「酒が飲めない」のはなんとなく悪い気がする。それに、もし酒が飲めない奴はお呼びでないと言われるのも寂しいので、なんて答えればスマートなのか、返答に悩んでしまうのだ。
 
そしてもっと困っていることがある。
それは私が「誘う」側である時だ。
 
私は大人同士で遊びに行くための誘い文句を「飲みに行こう」以外知らない。
だが、流石に酒を飲めない私が「飲み」に誘うのはどうかと思う。
 
だって、「酒飲みに行きませんか? 私は飲めないけど」と言われたら
「は?じゃあなんで誘った?」「飲みに行く意味なくね?」と思うのがきっと大多数だろう。少なくとも私はこうツッコミを入れてしまうと思う。
 
昔から人と距離を詰めるのが苦手な私にとって、この問題はずっと心に引っかかっている。
大きな悩みではないのだが、良い解決法も見つけられず、悶々とする日々が続いていた。
 
そんな時、高校時代の友人からこんなメッセージが届いた。
 
「ちょっと話を聞いてほしいんだけど、今週末時間ある?」
 
私はこの連絡をしてきた友人の身に何か大変なことが起きてしまったのではと思い、
大慌てで予定を調整して「土曜日なら空いている」と急いで返事をした。
 
だが、週末に現れた友人は深刻な顔をしているどころか、
ここ数年見た中でかつてないほど、満ち溢れた顔をして待ち合わせ場所に立っていた。
 
そして適当に入ったファミレスの席につくなり、こう話し始めた。
 
「ビックニュースがあるの。私についに出会ったわ」
 
私はゴクリと唾を飲み込んで続きの言葉を待つ。
そして友人はこう言った。
 
「見て、水上くん。ようやく見つけた私の推しです」と。
 
何か大変なことが起きたのではないかと、散々心配した私の一週間を返してほしい。
それに好きな俳優の話なんて、事前にLINEで言ってくれれば良いのに!
 
これなら歯医者の後に合流すれば良かったと思いながら呆れ顔で友人を睨む。
一緒に話を聞いていたもう一人の友人は「めっちゃどうでも良い」と言いながらけたけたと笑っていた。
 
そんな姿を見て、私はふと学生時代のことを思い出した。
 
「ねぇ、放課後にマック行かない?」
 
私たちが遊びに行く時なんて、いつもこの言葉で誘い合っていた。
今は、大人になって住む場所も、職場も、休日も異なってしまったので、私たちは約束を取り付けるのが大掛かりになってしまった。でも学生時代はもっと気楽だった。
 
休み時間だけでは話し足りなくて、もっと話したいから「マック」に誘う。
別にマックのポテトが食べたかったわけでも、シェイクが飲みたかったわけでもない。
場所だって、別にマック以外のミスドでも、サイゼでも、ガストでもなんでも良い。
ただもっと長い時間話せて、ついでに小腹が満たせたら十分だった。
 
わざわざ2000文字も使っていうことでもないことだが、
「飲みに行こう」と誘ってくれた人たちは、「親睦を深めること」が目的で、そのための手段として「酒を飲むこと」を選んでいただけ。そんな難しい話ではない。
 
流石に、ボジョレーヌーボー解禁日や酒蔵巡りには誘われないと思うけど、
料理がメインのお店など、お酒以外に楽しみがある時にはきっと声をかけてもらえる。
「私はお酒が飲めません」と伝えたところできっと接し方は変わらないように思う。
 
もしかすると私は心のどこかで「飲めない私」を隠したかったのかもしれない。
ただ自分がカッコつけずに素直になれたらもっと自由に楽しく過ごせるのかもと思った。
 
でも、それが分かったところで私の悩みは解決しなかった。
だって酒が飲めないからと言って、上司に「カフェに行きましょう」とは誘いにくい。
 
そもそも仕事終わりに営業しているカフェは少ないし、空いていたとしてもショーケースの中のケーキはほとんど売り切れで、大して飲みたくもないカフェオレに付き合わせてしまうのは流石に申し訳なさすぎて、気が引ける。
 
結局、「飲み」以外にスマートな誘い文句なんてあるのだろうか。
 
何か名案を知っている人は、私にこっそりと教えてほしい。
 
 
 
 
***
 
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2024-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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