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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:パナ子(ライティング実践教室)
 
 
なんだ、その態度は。
昭和の親父が言いそうなセリフが喉元まで出掛かったが、とりあえず一旦飲み込んだ。
 
小2で8才になる息子が学校から帰宅したが、明らかに態度がおかしい。
4才の弟のおもちゃを横取りしたり、尻を思い切り叩いて泣かしたり。挙句の果ては「何してるの? やめなさい!」と叱る私を見て「はぁ?」とヘラヘラ笑う始末。
 
次から次にイライラの燃料を投下してくる息子が非常に腹立たしい!
だが、しかし。
彼はいつもこうなわけではないのだ。
 
帰宅してひと呼吸置くと「おれ、宿題するわ」と取り掛かるし、こないだなんてこちらからお願いしたわけでもないのに「風呂、洗っとこうか?」と進んでお手伝いもしてくれた。素直でいいやつなのだ。
 
加えて、最近になって急にお兄さんらしくなった彼は、母親である私と落ち着いて話をしてくれる時間も増え、それについては嬉しく安堵していた。
 
幼稚園時代はとてもじゃないがこんな穏やかな時間とは到底無縁の日々だった。
色々な感情の言語化が難しいうえ正義感がやたら強い彼が、お友達との間で起こしたトラブルの数々は、母としての自信を確実に失わせた。もう嫌だ! と子育てから逃げ腰だった事も確かだ。
 
それが今では家に遊びに来てくれる仲良しのお友達ができたり、勉強や好きな趣味に意欲的に取り組む姿勢を見せてくれる。なかでも肝心な人間関係においては自分だけの主張をし過ぎることもなくだいぶん調和が取れるようになってきたと感じていた。
 
1年生の頃に不登校になり、フリースクールも経験したことのある彼は、きっとそれなりに人間関係に揉まれて成長したのだろうし、親子で濃密な時間を過ごせたことはプラスになっているらしかった。
 
それなのに、今日は急に出現したヤンキーのようだ。
 
さて、どうするか。
母としての力量が問われる案件な気もしたが、主婦の夕方はそれなりに忙しい。洗濯物を取り込んで畳み、夕飯の支度をしながら、風呂を洗いつつ、たまに近づいてくる4才の相手なんかをしていたら時はあっというまに過ぎる。
8才については若干放置気味になってしまったが、いつも通りの時間に食卓は整い、私は子供たちを呼んだ。
「ご飯だよー」
 
食卓についてそれぞれ好きなものを皿に取り、食べ始める。8才はみそ汁を一口啜ってひと呼吸おくとポツリと言った。
 
「実は、おれ、今日学校で嫌な事があった」
 
ハッとした。そういう事だったのか。それであんな大気不安定、一触即発な雰囲気を醸し出していたのかと納得した。
 
8才の話によれば、期待と憧れを持って初めて就任したクラスの体育係でちょっとした事件が起きたらしい。
 
その日は校内の大繩大会に向けての練習だったが、授業終わりに8才が良かれと思って使用済みの大繩を片付けようとしているとクラスメイトが近づいてきて言った。
 
「それ、俺の仕事なんやけど」
仮にA君とすると、このA君は人一倍体格が良く、スポーツ万能、勉強もできるエリートコースまっしぐらな男子である。昨年秋の運動会の日には組んだ円陣で声を掛ける大役を担任から仰せつかった強者でもあるのだ。
しかも、体育をこよなく愛する彼は、他の生徒が色々な係を渡り歩くなか、1学期から3学期まで一年を通して体育係を務めてきたらしかった。
 
おそらくではあるが、A君から見たら息子はぽっと出の新人ということになるのだろう。
 
「え……別にいいやん。おれが片付けたって」
そう言い返したことによって軽い小競り合いが発生。担任の先生が介入してくれて事態は解決に向かったにみえたが、心の底から納得できない8才はモヤモヤを抱えたまま帰宅したようだった。
 
事情が把握できた今、できる事は一つしかない。私はある人の言葉を思い出していた。
 
それは、不登校をきっかけに今でもお世話になっている臨床心理士の先生の言葉だ。
「まずは、共感。正しいかどうかは一旦置いておいて。子供は『この人は味方だ』と思えば何でも話してくれるようになります」
 
そうだ、まずは共感だ。
私は8才が話している途中で言葉を挟むことは決してせず「うんうん」と頷き倒した。話が終わるとこれだけ言った。
「そうか。ちょっと嫌な思いをしちゃったんやね」
A君の気持ちもわからなくはないとか、お互い譲り合って仲良くできたらいいのにねとか、正直思う所はあったがそれらはもちろん封印した。
 
すると、8才は「うん……」と静かに言ったが数分もすると元気を取り戻し、可愛らしい様子でたくさんおしゃべりしながらモリモリご飯を食べた。
そしてあくる日、彼はいつも通りに元気よく学校に向かった。
 
あの時一瞬だけ見せた態度で「反抗的な態度!」「全然言う事を聞かない!」と決めつけて感情的に責めたりしていたら結果は違ったものになったかもしれないと思うと怖い。
 
この一件で、私は、子供の感情は喜怒哀楽がそのままに表現されるばかりではないということを学んだ。もちろん大人だっていつ何時も純度100%で感情を出せるワケではない。立場や場面を考慮して上手く立ち回ったり、素直な感情を出すのをためらったり。
 
しかし、子供においては「どうしていいかわからない」「イヤな気持ちがする」「なんか悲しい気分になった」といった心のモヤモヤを上手く言語化できない未熟な面がある。ラッピングに騙されずにその中身が一体どうなっているのかをよく観察していこう。そして子供が安心して中身をさらけ出せるよう安全基地な母でありたいと改めて心に刻んでいる。
 
 
 
 
***
 
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2024-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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