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友人から卒業旅行に誘われないキミは、「勝ち組」だ


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記事:K子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
今から約10年前、大学4年生の私は絶望していた。
友人の誰からも、卒業旅行に誘われなかったのである。
最後のテストが終わる頃、学食ではサークルやゼミの仲間と集まって卒業旅行の計画を立てるグループが目についた。ウユニ塩湖やらサグラダ・ファミリアやら、有名どころの旅行ツアーのパンフレットを広げる人達を私は指をくわえて眺めていた。
 
きっと、国内外で1回ずつくらいは誰かしらに誘われて卒業旅行に行くと思っていた。
友人は多かった。しかし、広く浅い付き合いばかりで特定のコミュニティに属していなかったことが災いしたのかもしれない。
旅行費用のためにアルバイトで貯めた20万円と、年明けから3月まで真っ白な予定表がむなしく宙に浮いていた。
 
このままではまずい。卒業式のとき、私だけ卒業旅行の思い出話が一つもないなんて「負け組」じゃないか。
そんなつまらない見栄に急かされて、ふと「アフリカに行こう」と思いついた。
私は国際関係学を学べる学部に所属していた。高校時代に見た『世界がもし100人の村だったら』というフジテレビのドキュメンタリー番組がきっかけで目指した学部だった。
特に印象に残っていたのがアフリカだった。番組で映し出されたアフリカは、貧困と戦争ばかりの場所だった。「私が助けてあげなければ」と、幼い心に焦りを覚えた。
大学生活の締めくくりに、大学進学を決めた原点を見に旅に出る。ええやん、なんかかっこいいやん。
そんな軽い気持ちで、たったひとりで卒業旅行の行き先を決めた。
 
親を説得し、行き先は比較的治安が落ち着いていて英語の通じるタンザニアに決定した。期間は1月からの約3ヶ月。インターネットで現地のNPOを探し、インターン生として働く代わりにその団体の代表の家にホームステイさせてもらうことになった。
 
格安飛行機を乗り継いでたどり着いたのはタンザニア北部の街、アルーシャ。
ホストファミリーの車で街を走ると、道路に鮮やかな赤い服とカラフルなアクセサリーを纏った男が歩いていた。
それはまさに、マサイ族だった。牛と共に生き、高くジャンプできる男が最高にモテるという日本でも有名な遊牧民だ。
興奮して車の窓ガラスを覗き込むと、そこに見えたのは意外なものだった。
 
男が持っていたのは、槍でも網でもなかった。
なんと携帯電話だったのだ。
 
え! マサイ族が! 携帯電話を?!
ホストマザーに向かって、思わずぎこちない英語で叫んだ。
Masai people have mobile phones? Really? (マサイ族が携帯持ってるんだけど、まじで?)
彼女は笑って答えた。It’s for their business! (そりゃ、仕事に使うからよ!)
 
彼女によると、観光客相手に「マサイ族体験ツアー」なんてものを催してがっつり稼いでいるマサイ族は今どき珍しくないらしい。
「あのへんにいい感じの観光客いたよ〜」という客情報を、携帯電話を使って仲間内でやり取りしているそうだ。日本の繁華街にある居酒屋のキャッチと同じやん、と思わずツッコんでしまった。
 
貧困と戦争ばかりのアフリカのイメージが、早速音を立てて崩れた瞬間だった。
 
その後もアフリカのイメージ崩壊は止まらなかった。
ITとは程遠いと思っていたこの国で、私よりパソコンに詳しい現地の人にWi-Fiの繋ぎ方を教えてもらったりもした。
一方で、高校生のときにテレビで見たより数倍厳しい現実にも沢山出会った。
色んなアフリカの姿を、私は全身で感じた。
 
そしてホームステイの最終日。食卓にはフライドチキンが並んだ。
何度も食べた定番のメニューだったが、その日はなぜか格段に美味しく感じた。
ガツガツと食べる私の隣で、同じインターン生としてホームステイしていたアメリカ人の友人がこっそり教えてくれた。
チキンが美味しい理由は、明日旅立つ私のために、家族の商売道具である家畜の鶏をさっきさばいて調理してくれたからだということ。
友人は私より数ヶ月長くホームステイしているが、この家族がインターン生にそんな旅の餞をしたのは今回が初めてだということ。
聞き間違いかと思った。3ヶ月間の滞在で上達したはずの自分の英語のリスニング力が信じられなくて何度も聞き返した。本当に嬉しかった。
 
自分で言うのは憚れるが、私はインターン先で心を尽くして一生懸命働いた。頑張って働いた成果は、ちゃんと誰かに届くのだ。
ありがとう、そして、これからもがんばれよ。私へのそんなメッセージが込められたチキンを泣きながら食べまくった。
 
3ヶ月に及ぶ私の卒業旅行が終わった。
大学の進路を決める原点だったアフリカは、私の大切な故郷になり、そして社会で働く理由になった。
社会人になって沢山の挫折を経験した。そのたびに、あのとき見たタンザニアの辛い現実が私を奮い立たせてくれた。そして今でも数年に一度「How are you?」と突然届く故郷の人達からのFacebookメッセージが、諦めようとする私の背中をそっと支えてくれた。
 
タイパが重視される令和の時代。
大手旅行ツアー会社にお金を払わずとも、YouTubeやInstagramの投稿では「たった3日で満喫する◯◯」といった数々の旅行プランを見ることができる。
友人と一緒にそのプラン通りに旅行をすれば、まるで有名インフルエンサーのような素敵な写真をスタンプラリーのごとく撮ることが出来る。
しかしその旅行で得られるのは、ただ「楽しかった」という記憶と、SNS上のイイネだけかもしれない。
 
卒業式が間近なこの2月に、まだ友人の誰からも卒業旅行に誘われていないと嘆くキミへ。おめでとう、キミは「勝ち組」だ。
いまこそ、自分の興味の赴くままに、憧れの土地に旅立とう。映える写真が取れる場所でなくてもいい。他の誰かが作った旅行プランをなぞるのではなく、その土地で、他の誰でもないキミの五感を使って様々な体験をし、感動を身体に刻み込もう。愛着を持てる人や場所を増やそう。
 
その感動はこれからの社会人生活で心が折れたときにキミを再び奮い立たせ、その愛着は今後社会でキミが何か行動を起こすことの強烈な動機になるはずだ。
 
 
 
 
***
 
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2024-02-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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