上手く騙されれば迷わず楽になる理由
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:小宮悦子(ライティング・ゼミ2月コース)
私は現在61歳。いいお年頃になったと感じている。昔はお年頃っていう表現をこの歳の人には使わなかったけれど、人生100年時代の現在では、折り返しを少し過ぎた「本当にいいお歳ごろ」なのだと思う。60歳の還暦をまるで人生の勝者のような気持ちで迎えて、気が付いたら61歳になった。あーあ、1年なにやってたんだろうね。浮かれている間に1年を無駄にしてしまった。そんな自分に呆れながらも、今日も61歳と2か月目を楽しんでいる。
タイトルと無関係なここまでの話を読んだら、もう読むのをやめてしまう人もいるかもしれないけれど、ちょっと我慢してこの先も最後のオチまで騙されたつもりで読んでほしい。
私が騙され続けてきた61年間の話。
最初に私を騙したのは母だった。4歳のある日に「ピアノ習ったら、楽しいよ」と私をピアノ教室へ連れて行ったのがほんの少しの記憶にある。超スパルタな先生は、毎日1時間の練習を要求してきた。これも記憶をたどれば、の話だけれど概ね間違いなく、その日から言われるままにピアノの練習の日々となり、楽しくなるのはいつだろうと何度も泣いた記憶さえある。
その次は父だった。小4になったときに某合唱団の入団テストを受けてみないかと言われ、なんでかと聞くと「才能あるみたいだよ」という返答。その返答に何の疑いもなくチャレンジをし、難関を突破し合格。そのあとは、学校のない日はいつも厳しい練習に明け暮れる毎日。ピアノの時と同じだなと思いながらも退団年齢まで続けた。
ここまでの話も、音楽の才能があった自慢に聞こえるかもしれないけれど、結局は大人になって音楽の道に進んだわけではない。だから、両親に騙されたという代表的なエピソード。
さて、そんな経験をしながら高校を卒業し、看護師になろうと決めて希望通りに看護師になり、ひとつの決心をした。それは「一生仕事をしよう」ということ。なんの夢を描いたとかではなく、何があっても仕事をしよう。ただそれだけの決め事が61歳の私を今の場所へ連れて行ってくれた。
このエピソードは自分に騙されたってことだと思う。
そう、子供のときの2つの出来事で私は「上手く騙される」ことができる人になったのだ。
よく人は誰かにアドバイスするときに「騙されたと思ってやってみて」という魔法の言葉を使う。母は心から私がピアノが弾ける子になってほしいと思っただろうし、父は私に音楽の才能があると思っていただろう。そんな大好きな両親に「騙されたつもりで」やってみることにまんまと乗せられて、へこたれない私が出来上がったような気がする。
看護師になった私は、職場で仲良くしていた子育てをしながらもかっこよく働く女医に「せっかく得た資格だし、仕事と家庭の両立なんて簡単だよ」と言われ、騙されたつもりでやってみろとの仕事はやめないという2回目の無意識の決意をしたのだ。
30代前半では母が余命宣告を受け、せめて数か月なら看取りをしたかったし、子供が不登校になれば心配で家にいてやりたいとも思った。けれど、自分に上手く騙されているから「仕事を辞める」という選択肢は全くなく、看取りと仕事の両立や子育てとの両立方法しか考えなかった。
そして人生の分岐点は39歳。看護師という資格でもっと色々なことをしてみようと起業。
そこからも数えきれないほど上手く騙されたことで道を踏み外さずに、今の場所にたどり着けた。もちろん、起業してうまくいくかはわからない中で「騙されたつもりで」という頑張ろうと思える魔法の言葉をたくさんもらった。
私もこのお年頃になり相談にのるという、人を騙す側になることもしばしば。うーん、私の騙し方ではまだまだ騙されてくれない。これは相談している人がまだまだではなく、私がまだまだなのか、難しいジャッジなのだ。
冒頭の還暦の話に戻ると、実は58歳で大きな決心をしたので、大騒ぎの還暦だった。これが直近の騙されエピソード。50歳から太り始めたのを放置し、人生最大の大きさになっている身体を何とかしたくて、58歳のときに「30代の体重に戻すチャレンジ」をした。マイナス12キロ! 59歳で達成。これも素敵なインストラクターさんの「騙されたと思って〇〇して」の連続ワザに上手く騙されたお蔭様。どうか世の中の人が、上手く騙されることができますように、と願うばかり。
騙してくる人を信じて尊敬できる、それがなくてはこの話は全く意味をなさないことをお見落としなく。
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