メディアグランプリ

中小企業経営者への手紙 ~脱炭素で思い出す連立方程式の苦い記憶~


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記事:大場 安希子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
突然ですが、ランキングを発表します。
第3位「とりあえず、周囲の様子見てからかな」
第2位「コストでしかないんだよね」
第1位「意識高い人がやるんでしょ」
 
私は都内のIT企業でカーボンニュートラルに関する事業開発を担当しています。
これらのセリフは、脱炭素のための取り組みを始めているかを聞いたときに、まだ取り組んでいない企業の経営者がよく仰る言葉のトップ3です。
 
昨今、日本でも機運の高まってきた地球温暖化防止に向けた動きですが、原因となる温室効果ガスの排出が急激に増え始めたのは、18世紀の産業革命以降、つまり企業活動が原因の多くを占めているといわれています。
環境省の資料においても、日本では、温室効果ガスの排出量の約8割は企業・公共部門から排出されていることが明らかになっています。
 
ですから、企業が脱炭素に取り組むことは必至で、現在プライム市場上場企業は排出量や削減策の開示が義務化されているため、否応なしに取り組みを始めています。
一方、中小企業などの非上場企業はまだ義務化されていないため、取り組んでいない企業が多いのが現状です。
 
ですが、義務化されていない中小企業こそ、早く脱炭素に取り組んだ方がいいのにな、と私は考えています。
脱炭素は、ちょっと難しい、でもやればできるようになる中学校の数学のようなものだから。
 
忘れもしない中学二年生の秋。
学校の数学の授業は連立方程式の章に進みました。
塾に通っていた一部の子たちはスルスルと問題を解いて、涼しい顔をしているのに、私は二行並んだxとyの計算式に絶望。
「私は、数学が、苦手だ……。」
その後、連立方程式に慣れて、解けるようになってからもこの気持ちは高校卒業まで消えませんでした。
塾に通っていた子たちとの差は、少し早く始めたかどうかだけだったのに、コンプレックスになってしまったのでした。
 
逆に、少し早く始めたその子たちは、周りよりもスルスル解けたことで、「あれ、僕って数学が得意かもしれない!」と感じたかもしれません。
そういう少しのアドバンテージが、自己肯定感を上げて、できると思える自分を作ってくれるのだと思います。
 
さて、話は戻って中小企業の脱炭素への取り組みについて。
冒頭で、「中小企業など未上場の企業はまだ義務化されていない」と書きましたが、これも近い将来義務化されるだろうと言われています。
日本の温室効果ガスの排出源の1割~2割弱を中小企業が占め、国内全体の削減目標達成には中小企業の取組も必要不可欠だからです。
また、脱炭素先行地域のヨーロッパでは、既に中小企業も当たり前に取り組みを始めていますが、この領域はヨーロッパで始まったムーブメントが数年後に日本でも起きることが多いことから、やはり中小企業の脱炭素化が当たり前になるのは時間の問題でしょう。
 
日本の中小企業でもこれをチャンスと捉えて、自発的に取り組みを始めている企業があります。
そういった企業は、先進企業として自治体から認定を受けたり、事例がメディアに乗ったりして、評価されています。
そして、既に脱炭素を課題と捉えている大手企業からも評価され、取引先としてお声がかかるようになり、取引量・取引額が増え、売上高・利益の向上につながるのです。
 
評価されると嬉しいのは、経営者だけではありません。
社員は「うちって先進的な企業なんだ!」と希望を抱き、誇りを持って働き続けてくれるでしょう。いわゆる社員エンゲージメントの向上につながるのです。
そして、そんな将来性のある会社に入りたいと、入社・転職を希望する若者も増えるでしょう。
人材不足はご存じの通り現在の日本の大きな課題で、企業は牌を奪い合っている状況ですが、脱炭素に取り組むことが、人材不足解消への一手にもなるのです。
 
では、近い将来訪れる、中小企業の脱炭素義務化に備えるにはどうしたらいいでしょうか。
まずは、冒頭のランキングのよくあるセリフを変えていくところから始めましょう。
「とりあえず、周囲の様子見て」いるのはもったいない、周囲より少し早く始めることが大事です。
「コスト」ではなく、未来のあなたの会社への投資です。
「意識高い人」は近い未来の常識人。
 
他の企業よりも少しだけ早く取り組みを始めておくだけでアドバンテージになり、あなたの会社の価値を高めます。
少し早く取り組んで、脱炭素をあなたの会社の得意科目にして欲しいのです。
連立方程式の章に入る、少し前に勉強を始めておくように。
 
 
 
 
***
 
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2024-02-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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