メディアグランプリ

マナーとは、うなぎのタレ、かもしれない


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記事:きむらあや(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
4歳のわが子と二人で食卓を囲んで夕食を摂っていたときのことだった。
ずいぶん箸を使って食べるのが上手になったな、と思いながらその食べっぷりを眺める。
ふとしたとき、子どもが、話しながら夕食の炒めものを箸でつまみ、両ひじをテーブルに付けて、そのまま口に食べ物を頬張った。
 
む。これはお行儀よくないな。こういうのもちょっとずつ、ちゃんと教えないとね。
頭ごなしに言いたくなくて、説教っぽくならないように、なるべく軽い口調で語りかけた。
 
「あのね、ひじ付けて食べちゃだめなのよ~」
 
そして返ってきた言葉は、いつも通り。
「なんで~?」
 
ですよね。うーん、なんでだろう。
それがマナーだから、と言ってしまえばそれまでだけれど、それでいいのか? そういう決まりだから! と押し通すのは、頭ごなし以外の何物でもないのでは?
 
答えに窮したわたしの口から出たのは、よりにもよっての、この言葉。
「……マナー、だから……」
 
それを聞いた子はちょっとだけ間をおいて尋ねた。
「マナーって、なあに?」
 
ですよね。
「マナーってなんだろうねえ」
 
 
 
その日はマナーについての話題はそれっきりだったけれど、自分が4歳に「マナー」の概念を説明できなかったことが、なんだかずっと心の中に引っ掛かっていたので、ちょっと深掘りして考えてみることにした。
 
そもそも、なぜ子どもに「マナー」を説明できないことがそんなに気になるのか。
ある程度成長して、家の外でマナーに反する行動をしたら、恥ずかしい思いをするかもしれないから、四の五の言わずに叩き込んだ方がいいのでは? というココロの声Bも聞こえてくる。
 
でも、わたしはあまりそれをしたくないな、と思う。
理由を説明できないこと。説明できたとしても、相手に納得させられないこと。それらを強いるのはとても理不尽なことだと思う。
そして、理不尽なふるまいは、人からの信頼を失う。
 
個人的には、人間関係を築くことは信頼関係を築くことだと思っている。だから、なるべく人に対して誠実に、信頼に足る自分でありたいと願う。それは子育てに限らず、家族全員にも、仕事でも同じだ。
 
「人に誠実でありたいから、理不尽なことはしない。」
初めて言葉にしてみたけれど、かなりしっくりくる。人生の中で自分が大切にする価値観と言えそう。
 
 
 
では、次に、なぜわが子に「マナー」について理解して、身に着けてほしいと思うのか。
マナーを知らなくても、守れなくても、危ないわけじゃないし別によくない? 恥ずかしい思いをさせたくないって親のエゴじゃない? そもそもマナーに厳しいとか時代遅れじゃない? ココロの声Cが矢継ぎ早になんか言ってくる。
 
しかし、子どもにどう教えるかは別にしても、わたし個人としては、自分が知っているマナーはきちんと尊重して守りたいなと思う。(もちろん、専門家ではないので、知らない、身についていないマナーがあって、どこかで不興を買っている可能性は否定できないが。)
 
そう思うに至ったのは、たぶん、マナーを身に着けた過程としての幼少期の経験が影響している。
 
両親はそこそこマナーに関しての小言が多かった。
「そんなことでは立派な『レデー』になれないよ。」
というのが、お小言にくっつくお決まりのセリフだった。
「レディ」じゃなく「レデー」なのはあえてのユーモアで、おそらく両親の気遣いである。
今思うと両親も、わたしと同じように、幼子に頭ごなしにマナーを叩き込むのに抵抗があったかもしれない。
(平成初期の話で、現代の感覚からするとジェンダーバイアスを大いに感じる表現ではあるが、それは置いておく。)
 
幼い日のわたしに、レディ=淑女=品位のある女性、を、あえて目指さない理由はない。特に抵抗することなく、教えられたマナーは身に着けてきた。(つもりである)
同じように育てられたきょうだい含め、家族全員が同じレベルのマナー感を共有している生活では、たまにうっかりマナー違反してしまっても、ルールは頭に入っているから、「ピピッ!」とか「お~い!」とかなんとか言って、楽しく注意し合えていた。
家族団らんの風景の中で、自然にマナーが共有されていることが心地よかったのである。
 
そのことを思い出して、新たに家庭を持った今、子どもと夫とも、そんな生活をつくっていきたいと思った。マナーは、「人と心地よい時間、空間を共有するために、こんなところに気を付け合っていきましょう」という価値観のすり合わせなんじゃないかと感じたからだ。
 
言い換えると、マナーとは、時間と空間を共有する人と誠意を見せあい、信頼関係をつくり、人間関係を築く、ということではないだろうか。
 
だとすれば、マナーを知る、守るということは、わたし自身にとってものすごく大事だし、子どもにも伝えていきたいと思うのは自然なことだ。
もちろん、伝えた後に、わが子がどう受け止めるかはわが子に任せるとして。
 
 
 
過去、両親から授かって、自分なりに新しく見出した「マナー」への考え方を、そのときそのときにふさわしい言葉でゆっくりと子どもにも伝えていきたい。わが子も、大人になったとき、そんなふうに、自分の価値観を継ぎ足して、うなぎのタレのように、誰かに伝えたいと思ってくれたらいいな、と感じる。
 
 
 
4歳のわが子へ。
あの日説明できなかったマナーの説明を、今するなら、精一杯の誠意をそえて、こう伝えようと思う。
「マナーっていうのはね、父ちゃんや母ちゃんといっしょに、たのしくすごすための、おやくそくだよ。」
 
 
 
 
***
 
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2024-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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