仕事第一主義になっている社会
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記事:なごみ(ライティング・ゼミ2月コース)
世界的に見ても、日本人は働きすぎとよく言われている。長時間労働からの過労死問題も深刻であり、近年では「Karoushi」と世界的に取り上げられているほどである。
例にもれず私も長時間労働に悩まされた一人である。数カ月前に過労からの精神疾患と診断され、1か月休職をしていた。働きはじめて10年近くであるが、こんなにまとまって仕事をしなかったことが無く、この1か月は私にとって思考も身体も変わるきっかけをくれた貴重な時期となった。
元来、私は仕事大好き人間ではないし、興味はあるが完全に「好きなことを仕事に」しているかというとそうでもない。しかし自分の時間や思考・労力の大部分を仕事に割いていたのだ。
一体なぜそのような状況に陥っていたのか。それは、仕事が第一だと思いこんでしまっていたからだ。自分の仕事以外の部分を大切にしてあがられなかったからだ。
私は独身で子どももパートナーもいない独り身である。一緒に働く同僚は子育て中の方が多い。彼らは「子育て」を理由に、保育所の迎えのために早く帰り、参観日のために休暇をとる。家族との時間がもっと欲しいと少し寂しい思いをしていた自分の幼少期を思い返し、家族との時間をつくることは大事なことだと思う。
私は、今は家族がいないから彼らが忙しくてできない分はフォローしようと思った。それで気付けば長時間労働に陥っていた。
「保育所の迎えがあるから帰ります」と言われたら、正当であると思ってしまう。そして、子育てをしていない私には「正当」な仕事をしない理由がないとも思う。
しかし、仕事を休むことに「正当」な理由なんていらなかったのだ。仕事は私の人生の一部に過ぎないのだから。
子育てをしていない私にも仕事以外の私はいて、何にどれだけの時間や労力をかけるかは自分が決めることであり、時間を自分がマネジメントして作ってあげることが大事だと気付いた。
仕事第一主義になっていると、趣味の時間も「仕事が忙しいから」と何カ月もとれていなかった。日々の掃除や洗濯、料理といった家事の時間も「仕事が忙しいから」とおざなりになっていた。
仕事第一主義からの脱却のため、まずは「仕事が忙しいからやりたいことができない」とならないよう、優先順位の付け方を変えた。趣味の予定がある日は仕事を「正当」に休むようにした。子育てや介護をしている人と立場は同じ従業員であるが、休む理由は人それぞれ違って当然である。自分の人生でやりたいことがあるなら、仕事を理由にしないなんてもったいない。自分の時間をとることの大切さを今学ばないと、将来子育ても介護もできないだろう。やりたいこともおおげさなものではなく、家事、趣味、友人との懇談、体力づくりなど小さなことでいい。仕事を第一に捉えず、自分の人生の時間の中で配分を考えていくことが大切だ。
私は休職をすることで仕事第一主義の考え方を変えていったが、周りを見渡すと社会自体が仕事第一主義であると感じる。
ある友人は激務の会社員生活を10年近く続け、妊娠、出産を機に退職した。彼女と久しぶりに会った際に「仕事が激務だったため今は育児に専念できているだろうからよかった」と思っていたところ、彼女からの言葉に驚いた。
「社会とつながるために何か仕事をしたい」
経済的に余裕ができるといった理由ではほとんどなくて、社会とのつながりのためだと言う。これを聞き、社会とのつながりを一番わかりやすく感じられることは仕事という考えが浸透しているのだと思った。
そして、人とのつながりを自分で作り出す機会を持つことはなかなか難しいのかもしれないとも思った。ちょっとした相談をできる関係性は、仕事仲間となら築きやすいが他のコミュニティというのが思い当たらない。こういう声は何人かから聞いたことがある。
仕事以外の人との関係性をつくりやすいような社会になってほしい。それは仕事第一主義の考え方から脱却することが大事であり、仕事以外も充実している人が増えたら実現できるだろう。
家族や友人と過ごす自分も、興味のある勉強会やセミナーに参加する自分も、地域活動やボランティアに参加している自分も、趣味や家事に打ち込む自分もどれも大切な自分である。仕事以外の自分も尊重して誇りを持って生活していきたい。
初めて会う人に仕事の肩書で紹介することが多いが、仕事の肩書がなかったとしてもどの自分でも自信をもって接すればよい。
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