メディアグランプリ

不登校の子どもの世界を広げるために、大人たちに伝えたいこと


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記事:関谷陽子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「今から逃げてばっかりでどうするん? これから大人になったら、もっと大変でしんどいことが、たくさんあるよ? 今頑張れないと、その時に乗り越えられないよ」
これは、2人の息子たちが小さい頃に、わたしがよく言って聞かせていた言葉だ。
特に、甘えん坊で、人前に出るのが苦手な次男に対しては、頻繁に伝えていたと思う。
当時のわたしは、それが真実だと思っていた。でも、他の人にとっては、真実ではないことを知ることになる。
 
当時のわたしは、フルタイムで働くサラリーマンだった。研究開発職で働くわたしは、全てのことに全力投球してきたと言える。仕事はもちろん、出産後は自分の思い通りにならないことにも、たくさん直面した。
その都度、必死の思いで乗り越えてきた。わたしの中で、「努力と根性」は、もはや切っても切れないくらいの癒着状態だった。
だからこそ、ちょっとしたことで弱音を吐く息子たちには、「もっと頑張れ」と言い続けた。
子どもの嫌がることなんて、本当にささいなこととしか思えなかったから。
ただの甘えだと思っていたから。
 
 
そんな時だ。次男が、小学1年生の3月末、学校に行かなくなってしまった。
 
 
当時のわたしは、不登校になるのは、お友達や先生、学習面などに、明確な理由がある場合だけだと思っていた。
だから、次男が学校に行かないことを、ただの甘えでわがままだとしか思えなかった。
その結果、いつもお得意のセリフに輪をかけて、次男を説得し始めた。
 
学校なんて、行きたくて行っている子はいやしない。みんな、いやいや行っているんだよ。
小学1年生や2年生なんて、まだしんどいことなんてないやろう?
これくらいで逃げていたら、一生逃げるだけの人生になってしまうよ?
 
 
そんなわたしの言葉に対して、次男は泣いて謝るだけだった。でも、学校に連れていこうとすると、頑として動かない。もう、どうしていいか全く分からなかった。
 
 
実はわたしも、学校に行きたくない子どもだった。特に義務教育時代は、本当に窮屈で、イヤだった。加えて、わたしは友人関係がうまくいっておらず、いじめられた時期もあった。
だからこそ、自分の子どもがいじめを受けたら、すぐに学校に行かせるのはやようと心に決めていた。逆にいえば、友達に恵まれて、一切問題ないと思える次男が、学校に行けない理由が全くわからなかったのだ。
 
 
今の次男の境遇なら、わたしだったら学校に行けるのに。
仲の良い友達もたくさんいるし、先生も優しい。
学校の決まりや校則は窮屈だけど、我慢できる程度だと思う。
一体、次男は何がイヤなのだろう。
 
そう思いながら、わたしは子どもの頃に自分が考えていたことを思い出す。
そうだ、あの頃は、大人になったら、もっと自由に生きられると思っていたんだ。学校という世界がいつかは終わることを知っていた。狭い世界だと知っていた。
だから、高校や大学を卒業して大人になれば、自由で楽しい人生が送れると思って、憧れて、頑張れたんだよな……。
 
 
そこまで考えたときに、はっとした。
大人になったら、もっと辛いことがたくさんあると、息子たちに言い聞かせてきた。
それって、何の希望もない言葉ではないだろうか。
理由はわからないけれど、次男は今、あの頃のわたしと同じくらい、学校に行きたくないとしよう。そんな時に、「大人になったら、もっと辛いことがある」と言ってしまえば、生きる希望なんて、なくなってしまうのではないだろうか。
 
 
次男が学校に行けない理由は、相変わらず分からない。分からないがしかし、行けないというのは、今の次男にとっての真実なのだろう。
そしてもうひとつ忘れていたことがある。学校は人生のゴールではない。
学校に行くことが目標ではなくて、毎日を幸せに生きていくことこそが、目指すところなのではないだろうか。
 
だとしたらわたしは、何という言葉を息子たちに投げかけてきたのだろう。
子どもたちにとって必要なのは、将来辛いことがあるから、歯を食いしばって頑張ることではない。
大人って楽しいよ、ということを、大人自身が日々の姿で伝えていくことなのではないだろうか。
 
 
その日から、息子たちへの声かけをがらりと変えた。
「大人になったらもっと辛いよ」という言葉については、正直に謝った。「ごめんね、確かに辛いこともある。でもそれと同じくらい、楽しいことや嬉しいことがたくさんあるよ」と。
そして、言葉だけではなく、自分自身の姿勢としても、楽しく生きる姿をみせるようにした。まずは頑張りすぎていた自分を改めて見つめ直し、もっと自分に対して優しくなることや、必要以上に頑張らないようにした。
 
 
あれから8年の時がたち、その間に不登校の子どもを持つ母親たちと、たくさん出会った。その人たちにこの経験を伝えていくと、賛同してくれた人は、まず自分の人生を生きることを頑張ってくれた。そうしていくと、彼女たちのお子さんたちもまた、自分の道を歩き始めた。
学校に戻った子もいれば、学校以外の場を見つけた子もいる。いろんな場所で、自分の人生を親子で生き始める姿を、たくさん見てきた。
 
我が家の次男は、まだまだ学校には足が向かない。それは本人の特性かもしれないし、わたしのかけた呪縛が強かったせいかもしれない。
でも、自分の人生を生きていると、胸を張って言える。
世界中の、真面目な大人たちに伝えたい。子どもたちのために、まずは自分たちが生き生きと、自分の人生を生きよう、と。
 
 
 
 
***
 
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2024-04-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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