親友って誰のこと?
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記事:京 みやこ(ライティング・ゼミ12月コース)
「みんなには 親友がいますか」
「親友がいる人は手をあげてください」
学級会で担任の先生がみんなに聞いた。
私は固まった。そして周りをそっと伺った。
「あの子は手をあげているのだろうか、そして私は手を挙げるべきだろうか」
「だけど、親友ってどこまでの友達のことを言うのだろう」
「私が手をあげて、あの子が手をあげなかったら、どうしよう」
「私はあの子のことを親友って思っているのに、あの子は私のことを親友だと思っていないことになるよ」
「そして、あの子が手をあげて、私があげなかったら、あの子は私のことを親友だと思ってるのに、私があの子のことを親友だと思っていないことになる」
もう頭の中がぐちゃぐちゃになり、そして結局手が上げられなかった。そしてあの子が手をあげたのかどうか、確認する勇気もなかった。
中学3年のあの時の思い出が今も頭をよぎる。担任の先生は何をしたかったのだろう。何をみんなに問いかけたかったのだろう。結局それは分からずじまいだったが、結局私はこの質問に手を上げることができなかった。つまり、手をあげないと言うことは「私は今親友がいません」と言うことを表しており、いつも一緒にいるあの子のことを私は親友と思っていない、と言うことをみんなに宣言したことになるのだ。
親友ってなに? その時はそれが分からなかった。あの子とは中学3年で同じクラスになり、それからいつも行動を共にした。授業が終わって休憩時間になると手を繋いでトイレに行った。休憩時間になるとあの子のそばに行き、なんでもない話をして笑い、お昼は一緒にお弁当を食べた。授業が終わると同じ部活動で汗を流し、一緒に帰った。
だけど、中学1年の時のクラスにもあの子のような別の友達がいた。トイレに手を繋いで行き、休憩時間もお昼も、いつも一緒に過ごした。一緒にいることが楽しかったが、2年になりクラスが変わると2度と会わなくなり、そのまま友達ではなくなった。時たま廊下ですれ違った時は、笑顔で「げんき?」などと言うが、それ以上の会話はしないし、あえて連絡して会うこともない。中学2年のクラスにも同じような友達がいた。朝から学校が終わるまでいつも一緒にいたが、結局学年が終わり、クラスが変わると友達ではなくなった。
中学1年、中学2年の時の友達のことを考えた。彼女たちとは今は話もしない。そして彼女たちが私の親友でないなら、今一緒にいて楽しい「あの子」もまた同じようにクラスが終われば消えていく存在なのかもしれない。もしそうならやはり彼女も私の「親友」ではないのだ。
先生に「親友がいますか」と聞かれた時、そのような思いが頭をよぎった。そしてどうしても手を上げることができなかった。
そして彼女になんだか申し訳ないことをしているような気がした。それが心に残った。
私たちは別の高校に進み、そしてやはり、全く会うこともなくなった。私は高校でも一緒にトイレに行く友達を見つけ、高校生活を楽しんだ。そして大学に進んでもやはり一緒にトイレに行く友達を見つけた。
小、中、高、大学とその時その時、一緒に時間を過ごす友人を得られたことは奇跡のようなことだったのかもしれない。
そして仕事につき、結婚すると新しい生活の中で、新しい出会いがあり、昔の学生時代の友達と会うことは全くなくなった。
子供を育てている間、私には友人がいないと思った。それは私が誰とも連絡を取らないことであり、また誰からも連絡がこないことであった。
子供が大きくなり、巣立ち、私も定年を迎え、自由な時間ができた今、時々昔の友人に会って話をしたいと思うようになった。それはランチであったり、アフタヌーンティーだったり、コンサートに行くことだったり。
そしてそれはあの子だった。
今は一緒にトイレには行かない。でも今はあの子は私の親友である。
今までの人生で、たくさんの友人を得た。そして別れていった。
「あなたに親友はいますか」この質問は中学生には酷な質問である。教師は気楽な気持ちで聞いたのかもしれないが、多感な年頃の女の子にとって、この質問に気楽に手を上げることはできない。
そして今、70歳代を迎え、親友とは何かと考える。
今私はあの子に連絡し、ランチをしながら、またお茶を飲みながら、いろいろな話をする。共に時間を過ごすのが楽しい。その時間の過ごし方は中学生の時と同じような気がする。私は彼女と会って、話をしたい。一緒に時を過ごしたい。だから私は彼女のこと、あの子のことを私の「親友」と呼びたい。
「親友とは一緒に時を過ごしたい人である」
もしそう言う定義が正しいとするのなら、私がその時その時を一緒に過ごした、そして一緒に手を繋いでトイレに行った女の子たちはみんな私の「親友」だった。
そして今なら「親友がいます」そう私は胸を張って、手を上げて言える。
***
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