メディアグランプリ

「丁寧な暮らし」という幻想


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:なごみ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「丁寧な暮らし」と聞いて、みなさんはどんなことをイメージするだろうか。
出汁からとった味噌汁や何品もの手料理が小皿に並ぶ食卓。早朝に起きてヨガの後、窓辺で豆から挽いたコーヒーを片手に読書の時間。高級そうな家具と観葉植物や花で彩られるリビングルーム。
 
このようなライフスタイルに憧れつつも、時間とお金に余裕のある人たちのみができることだろうと思う人も多いのではないだろうか。
そして、どこか自分の今の生活との乖離を感じて、現状への満たされない気持ちを高めてしまう。
 
私もその一人で、「丁寧な暮らし」への憧れの気持ちで一杯であった。
しかし、現在は「丁寧な暮らし」というものは幻想だと気付き、今の自分の暮らしに向き合うことができるようになった。
 
私はもともと工業的な製品よりも、古くからのものや職人が造ったものに惹かれるところがあった。日本の地方に受け継がれている伝統的な技にも、強く魅了されている。
そんな趣味嗜好を持つ私だが、社会人生活も10年近く経ち責任や仕事量が次第に増え、深夜帰宅の日が多くなった。スーパーに食品を買いに行く時間もなく、コンビニ食、カップ麺という食事をし、家にはシャワーと寝に帰るだけといった生活。
このような状態が続いていたが、心身ともに限界となり、1か月休職をすることになった。
 
休職する際に社内の総務担当者から「期間中は何をしても構わないが、旅行やお出かけは気付かないうちに自分を疲れさせるから控えて、しっかり休養するように」と言われていた。
私は基本的には外に出ることが好きで、一日中家にいることは珍しいタイプだ。
仕事をはじめてから初めての長期間の休みに加え、遠出も制限され少し不安も覚えた。
しかし、心身の疲れは日々の生活の乱れが原因であり、この休暇は生活を整えるとっておきの機会。わたしは担当者のアドバイスどおり、ほぼ徒歩20分圏内での生活を実行することを決めた。
 
せっかく家での時間があるのだから、憧れていた「丁寧な暮らし」を存分に楽しむと意気込んでいた。
さて、「丁寧な暮らし」って一体、何だろう。
あんなにコンビニ食への不満を垂れていたのに、いざ時間ができても何をすればいいのかわからなかった。
とりあえずスーパーには行けるようになり、季節の野菜、地場の肉、魚を購入してみる。
料理の時間がとれないこともストレス要因だと言っていたはずだが、手の込んだ長時間かける料理をする気はなぜか起こらなかった。
出来上がったのは、炊き立てのご飯、顆粒だしを使った味噌汁、魚の煮つけ、野菜炒めといったシンプルな料理だった。
「丁寧な暮らし」から連想するような料理ではないが、自分で作る出来立ての素朴な家庭料理はなんとも美味しかった。
 
それから1か月、このような食卓が続いた。
数々の贅沢なフレンチや上品な和食も味わってきたが、手の込んでいないどこか脱力感もある日常の手料理をとても美味しく感じ、毎日食べたいし作りたいと思った。
時間はあるけれど、料理に時間はかけなかった。
調味料づくりや煮込み料理、季節の手仕事などに憧れていたが、手を出さなかった。
 
私にとってちょうどいい食に関するスタイルは、スーパーで地物の食材を手に入れ、それを素朴で気楽に調理し、出来立てを食べることだと気付くことができた。
もちろん、今後、出汁からとることに挑戦したり、野菜を育てたりするかもしれない。けれど、今の私のちょうどよいはこのくらいなのだ。
 
住まいに関してもこだわりがあり、古くからの日本家屋に住んでいる。和室が3部屋あり、床の間もある。
休職して時間ができたので、素敵なしつらえをしたいと思った。
 
季節に合わせた掛軸や花器、調度品などを揃えることで、素敵なしつらえになるだろうと思うが、いきなり全てを手に入れるのは、費用面や自分の感性を徐々に育んでいきたい観点からもハードルが高い。
そこで、まずは知人からゆずり受けた道具やすでに持っていたものをうまく使い、空間を演出することとした。
近くの花屋で買った数本の季節の生花を飾るだけでも、部屋に彩りが生まれ華やいだ。もともと持っていたお気に入りの香合を飾ると、空間に気品をもたらした。
 
季節に応じて掛軸を変え、年季の入ったインテリアに調度品をディスプレイするといったことは憧れるが、今の私には荷が重い。
 
「丁寧な暮らし」に憧れていた私は、たっぷりと時間のある1か月間で、今の自分にぴったりな暮らしを手に入れることができた。
 
品数の多い料理を作り毎日たくさんの観葉植物に水やりをするといった「丁寧な暮らし」は、わたしたち消費者に典型的なライフスタイルを刷り込んでいるように感じる。
そして、承認欲求を満たすために忙しくても無理やりSNSに「丁寧な暮らし」を発信し、写真以外の現実と憧れとの差に虚無感を抱いてしまう。
 
現代人は忙しい。それは決して悪いことではない。
自分が持っている時間と自分の暮らしを見つめ、何を望んでいるか自分の気持ちを深掘りし、試しながら今の自分が心地よいライフスタイルを探していけばよい。
 
 
 
 
***
 
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2024-04-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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