メディアグランプリ

モノを出して限界を越えていく


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記事:義永 直巳(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「もうこれ以上は無理!」
 
私が音をあげそうになったのは7年前。家の中が片付かなくなった時だった。
私は片付けができない方ではなかったが、仕事が忙しくなるにつれてモノが増え、収納にモノが収まらなくなってきた。もう自分ではどうしようもできないと思った時に断捨離というものに出会った。後から知ることになるのだが、断捨離というのはただの片付けではなかった。
 
家の中のモノを目の前に途方に暮れている私に対して、断捨離の提唱者やましたひでこは「多すぎるから片付かないのは当たり前」と言った。私はその言葉を聞いて目から鱗だった。そうか、多すぎるのなら減らせばいいのだ。当時の私は、そんな簡単なことに気づくこともできていなかった。大量のモノを目の前にして、よっぽど目が曇っていたのだろう。
 
簡単に減らせば良いと言うが、私たちのモノに対する執着は半端ない。手に入れたモノは手放したくないという気持ちになるのだ。手放した方がいいのはわかっているが、手放し難い。「せっかく手に入れたのだから」「もったいない」そんな気持ちがモノと自分の間を行ったり来たりする。後押しするのは、片付けられない惨めな自分から抜け出したいという気持ちだ。どうして私たちは片付けられない自分に対して惨めな気持ちになるのだろう。
 
モノに対して動き出す動機は人それぞれだ。
私の場合は、自宅が片付かないだけでなく、仕事も片付かなくなってきていた。一時が万事とはよく言うもので、一つのことがうまくいかないと、次々にそれが連鎖していく。仕事の予定を詰め込みすぎて、やっても、やっても片付かない。そんな自分が憐れに思えてきた。
このとおり、憐れな感じになっていたが、仕事をすぐに大きく変えるのは難しい。そこで私は、自分の住まいをまず整えることから始めることにした。
 
モノには、自分にとって最適なモノの量がある。それ以上のモノを溜めると、家全体が機能不全を起こしてしまう。我が家は、完全に機能不全を起こしていた。この機能不全は、私が家のモノと向き合うことを避けてきた結果だった。
「出すしかない」
ようやくそのことに気づいた私は動き出した。
 
どうしてこんなにモノを溜めてしまったのか、と考えたくもなったが、そんな理由よりも、私はモノを減らすことに集中した。反省や後悔では状況は変わらないのだ。モノを減らせば先が見えてくるに違いない、そう思って、ひたすらモノと向き合った。
 
私は約1ヶ月、大量のモノを家から出し続けた。家の中のモノを、今の自分が大切に扱えているモノだけに絞りこんだ。自分が大切にできているモノなんてしれている。ほとんどが大切にせずに放置していたモノだった。放置していたモノを手放すと、住まいに空間ができた。扉を開けるとギチギチにモノが詰まっていた収納スペースも、ゆとりができ、モノを美しく並べることができるようになった。それだけで気持ちがスッキリした、と同時に「できた」という達成感を味わっていた。
 
家のモノを出すということをしているうちに、出すことが大切なのは、私たちの身体も同じだということに気づいた。
 
身体には出したり入れたりする働きがある。
例えば呼吸。吐いたり吸ったりするが、まず吐くことが大事だとヨガや運動、音楽でも教えられる。吸いすぎると過呼吸になり身体の機能が不具合を起こすように、まず吐くことが大切だ。吐けば自然に入ってくる。
それから、排泄も同じ。赤ちゃんが生まれたとき、胎便という便をまず排泄する。この便を出してから母乳やミルクを与える。私たちの消化機能も出してから入れるという仕組みになっている。それが、大人になると、頭で作り出した欲望のためか、出さなくても食べるようになってくる。出してから入れるのが身体の仕組みなのに、出さずに入れるばかりだと、身体の調子もおかしくなる。
 
私たちは、こうして空気や食べ物を出したり入れたりしながら生命を維持している。それが止まると生命が営まれなくなってしまう。出すとか入れるというのは、身体にとって大切なことだ。
出すことから循環が生まれる。出さずに出口を閉じてしまうと、うまく循環しなくなる。
 
身体も住まいも同じこと。
家のモノは意識しないとどんどん溜まる。身体と同じようにモノも「出すのが先」ということだ。なくなることの不安から逃れるために、どうしても先に手に入れようとする習慣が私にはあった。出してから入れるという順番がとても大切だということに気づいた私は、先に手に入れる習慣を改めるべく、出すことを意識するようになった。
 
「もう無理」そんな言葉を吐いたことは過去に数知れず。無理だと言いながら、今こうして生きているのは、何とかなってきたということだ。そして、一つずつの無理をなんとか乗り越えられるようになったのは、家のモノを出して「できた」という自信ができたからだろう。今の私には、どんな無理でも逃げずに向き合える気がしている。
 
空間を取り戻した私の住まいにはゆとりと希望が溢れている。
 
 
 
 
***
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2024-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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