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私はついに、自傷行為を止める決心をした。


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記事:岩田千栄美(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
私はついに、自傷行為を止める決心をした。
どうやら、15年ほど繰り返していたようだ。
はっきりしないのは、自分で自分を傷つけていることに全く気付いていなかったせいだ。
 
自傷行為といっても、傷跡は見えない。
なぜなら、私が傷つけていたのは、自分の肉体ではなく心だからだ。
 
自覚するようになったきっかけは、ある食事会の席でのこと。
なぜそんな話になったのか覚えていないが、ある人に「自分で自分に無数の傷をつけているように見える」と言われたことだった。子育てを通してそうなっているのではないか、とその人は言った。
(え? どういうこと? 全然わからない……)
もう少し色々聞きたかったが他の話題ですぐに押し流されて、それ以上聞けなかった。
 
頭の中にはてなマークが並んだままどうすることもできず、そのまま日常が過ぎて2ヶ月ほど経った頃、何となく観てもらった占い師にも同じことを言われて、再び衝撃が走った。
 
え!? また言われた! どういうこと!?
 
占い師は、「お母さんという意識が、自分に制限をかけている」と言うのだ。
どちらかというと、母親という一般的なイメージに囚われず自由にやっていると思っていただけに驚いた。
 
その後も続く、占い師の説明。
「家族のために自分の行動を制限し、我慢をするといがみ合うようになりますよ」
 
う~ん、まあ確かに、心当たりが全く無いこともない。
仕事が終わって、というより半ば無理やり切り上げて家に帰り、急いで晩ご飯を作り、その間に干していた洗濯物を取り込み、慌ただしく動いているときに、子ども達がマイペースにごろ~んとしているのを見てイラっとする自分がいる。
 
「でも、でも、でも」
占い師の言葉がまだ何となく引っかかる私は、さらに食い下がる。
 
子どもを相手に親の自分が我慢するしかないときって、ありますよね。
そのほうがスムーズだったり、自分もそんなに苦じゃなかったり。
例えば、デザートを食べていて子どもに「ちょっと頂戴」と言われて、自分の分をあげるとか。
休日にどこに行くかというときに、子どもが行きたい先を優先するとか。
 
「ええ、確かにそんなときもありますよね」と占い師。
(ほら、ほら、そうでしょ)となぜか得意げな私。
 
占い師の説明は淡々とつづく。
子どもが欲しいと言ったものを譲ったら、次の日はそれを3倍、自分に食べさせてあげるとか、親として遊びに連れて行かないといけなかったら、どこか空いた時間にたっぷりと自分にご褒美をあげる、空いた時間に自分のために尽くしてあげる。それが大切だ、と言うのだ。
 
う~ん、確かにそこまではしてこなかった。
 
子どもが満足ならそれで構わない、と思っていた。
子どもの嬉しそうな顔を見れば、親としても嬉しい。
自分の気持ちが全く満たされなかったわけでもない。だから、平気。
ほら、私、ちゃんと「親」してる。
そんなふうに思っていたのかもしれない。
必死の毎日の中で、いつしかそれが一生懸命な育児のテンプレートになっていた。
 
つまり、「親としての自分」は満たされていたかもしれないが、子どものことを抜きに考えてみて、ひとりの人間として自分の欲求をちゃんと満たそうと、大切にしてきたかと言われれば、してこなかった。自分の気持ちを粗末に扱っていた。それをずっと繰り返していた。
 
「自分が我慢していると、子どもさんの要求に快く応じられませんし、イラッとすることが増えてしまうものです」と、占い師。
 
くぅ~~~~! 悔しいけど、これには痛いほど心当たりがあった。
イライラしてしまうときは、自分が満たされていないときなのだ。
ここまできたらもう、自分を大切にしていない自分を認めざるをえなかった。
私の大切な主は、ずっと留守番をさせられていたのだ。
私が母になってもう15年。そんなに長い間、無自覚に自分を傷つけていたなんて……
 
ロープ際に追い込まれ、もはや私の敗北は確定。
そして、占い師からとどめのひと言。
「子どもを幸せに自由にしてあげたいならば、まず親の方が自由に生きて、徹底的に幸せになっていくことが大切ですよ」
 
ゴングが鳴った。試合終了。
このとき、粗末に扱われてきた自分がようやく認められて癒されたのか、自然と涙がこぼれた。
 
こうして私は、無自覚の自傷行為をやっと理解することができた。
自分のことを大切にしたいし、子どもにも自由に幸せになって欲しいから、私は自傷行為を止める決心をした。
母としての自分、役割としての自分ではなくて、ひとりの人間としての自分をしっかり満たしていこう。
 
仕事でも家庭でも、みんな何かしら役割を背負って生きている。
それも大切な務めだけど、たまには背負っているものを全部おろして、何者でもない自分をめいっぱい甘やかそう。
 
 
 
 
***
 
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2024-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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