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「違う街に行く」のイメージの多様性について


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記事:Aiko(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「違う街に行く」という言葉を聞いて、あなたはどのようなイメージを抱きますか?
 
 
先日、東京・浅草で興味深い光景を目にしました。
「ワァオ! アジアン!」
テンション高く叫んだ金髪の外国人観光客が指さしたのは、街角にあるトルコ雑貨店。色とりどりのランプやタイル、絨毯や、青色の目玉をあしらった壁飾りが並ぶ店頭でした。
 
確かにカラフルでどことなくオリエンタルな雰囲気は欧米の方々からすると珍しくはあるのでしょう。ただ、少なくとも私の知る現代日本では青い目玉のモチーフをお守りにする風習はありません。彼らにとっての「アジアン」とは一体何を指すのでしょうか。一体何に「アジアン」の要素を感じたのか、その背後にどのような情報や文化が交錯しているのか、とてもとても気になりました。
 
もしかすると、かつてシルクロードが中東から中国一帯を結んでいた時代から変わらず、彼らの「アジアン」は「オリエンタル」と似たようなイメージで形作られているのかもしれません。
 
外国人観光客から見た「日本」という街を形作る要素を考えると、地理的な範囲以上に時間の感覚は曖昧な可能性がありそうです。トルコ雑貨の店の近くには、「ニンジャ」や「サムライ」を題材にした施設があります。ここにも多国籍の人々が集っており、覗きこめば、日本刀、坂本龍馬、ナルト、手裏剣、エトセトラ。様々なワードが耳に入ります。
 
彼らにとって、実在した歴史上の存在と、アニメや漫画の世界の人物や事物は同じ地平の上にあるのかもしれません。過去に出会った中には「ニンジャは好きだけどサムライは嫌い」と公言する人もいました。古典と現代、フィクションとノンフィクションの境目も気にせず、大きな大きな括りで「日本」という街を楽しんでいるのでしょう。
 
 
実は、少し前にも「街」という概念をどのように捉えるかについて考える機会がありました。
 
口ずさんでいた歌に「街を出る」といった意味の歌詞が出てきた時に、隣の友人が「大冒険だね」と言ったのです。私からすると、「ちょっと気分転換」くらいのニュアンスに捉えていたので、「街を出る」という一節の解釈を巡るちょっとしたすれ違いコントのような状態になりました。
 
その時に気づいたのは、「街」の範囲の感覚は人によって結構違うということです。
 
街は、ある人にとっては、何ヶ所もあるうちの一つです。
一方で、ある人にとっては人生の舞台そのものなのです。
 
私が今住んでいる東京のような大都市では、「街」は身近に何ヶ所もあって、目的によって行き先を選びます。例えば、山手線の駅を思い浮かべるだけでも、各駅が独自の文化や雰囲気を持っているかのような多様性があります。新宿はビジネスや行政の機能を持ち、昼と夜でも趣の異なる活気と混沌に満ちています。渋谷は文化や個性が爆発している一方で、品川や大手町は落ち着いたビジネス街としての顔を持ちます。
 
そこに暮らす人からすれば、住んでいる場所と職場が違う街だったり、平日と休日で違う街に行ったりということもザラです。
 
反対に、「大都市」ではない場所、例えば私が学生時代を過ごした地方の田舎町では、「街」という概念はもっと広いのです。職場も買い物の場所もゲーセンも映画館も、日々の暮らしに関わるアレコレは全て一つの街に内包されていて、その生活圏全体を指すのが「街」なのです。そこには、地域全体が一つのコミュニティを形成し、人々が密接に関わり合って生活している様子がありました。
 
こうした環境では、「違う街に行く」というのは単に物理的な移動を意味するのではなく、流行の何かや新しい文化、価値観との出会いといった非日常を求めて外に出ることを意味します。つまり、単なる地理的な変化以上に、心理的、感情的には目的を持って旅に出るような大移動でもあるのです。
 
そして気づいたのが、「ひとつの街」が人生の舞台である人が多数派なのです。「街が生活の中にたくさんある」という感覚はおそらく、「私の街がまだ1つだった頃の話」なんて話が書けそうなほどに珍しいのです。
 
この感覚にはもちろん個人差があると思います。全く違う感覚を持つ人ももちろんいるでしょう。ただ、こうした様々な感覚の違いはあれど、私たちの「街」への認識は常に変化していて、それに伴って私たち自身も変わり続けるのです。私たちが「違う街に行く」という時、それは違う世界への扉を開いて新しい発見を探す旅に出ることを意味するのです。
 
 
さて。海外からの旅行客は、「自国とは違う街」に遊びに来ているのです。ただ、ひとくちに「街」と言っても、きっとそこには様々な解像度があるのでしょう。「東洋」に来ているつもりなのかもしれないし、「日本」に来ているつもりかもしれない。「東京」、「浅草」を明確に目指してきた人もいるのでしょう。北海道や京都を東京とは別の街と捉えるのか、「日本」という街のパーツとして捉えるのか。様々な感覚で非日常の旅を楽しんでいるのです。
 
最近ますます多国籍感が増しているように感じる外国人観光客の方々がどんな感覚で日本を楽しんでいるのか。街角で思いを馳せ、ときどき会話に耳を傾ける楽しみが増えそうです。
 
 
 
 
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2024-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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