私たちは大文字山ファミリーだ!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:おまど(ライティング・ゼミ2月コース)
「こんにちはーー」
「あと少しで頂上ですよ!」
「頑張ってくださいね」
私は京都市に住んでいる。
京都市には、大文字山という山が左京区に存在する。
最近、旦那さんや私の家族とこの山を登ることが2回ほどあった。
毎年、夏の夜空を彩る「京都五山の送り火」。
これは、お盆の精霊を送る京都の古くからの伝統行事。
東山如意ヶ嶽に「大」の字が浮かび上がり、続いて、松ケ崎西山と東山に「妙法」、西賀茂船山に「船形」、大北山に「左大文字」、そして、嵯峨に「鳥居形」が点火される。
この5つの送り火はすべて京都市登録無形民俗文化財になっている。
もしかしたら、ニュースなどテレビ放送で一度は見たことがある人もいるかもしれない。
毎年、この五山の送り火を見ると「お盆だなぁ」としんみりした気持ちになる。
きっと京都に由来がある人は同じように感じる人も多いだろう。
実は、この大文字山、登山に人気な山だというのをご存じだろうか。
標高は465メートル。
登山ルートにもよるが、おとなであれば1時間程度で登れる難易度。
登山が初めての人や、小さい子どもでも気軽に挑戦することができる登山初心者はもちろん、家族みんなで登れるファミリー登山にぴったりの山なのだ。
私の母が、昨年の秋に「登山をしてみたい!」と急に言い出した。
(普段、そんなに運動もしていないのに、本当に大丈夫なの……?)と心配したが、なんだか本気の様子だったので2週間後、まずは手始めに、この「大文字山」を登ることにした。
京阪電車にのって、終電の「出町柳駅」に到着。
そこから登山口まで約30分かけて歩いて向かう。
生まれてからずっと京都市に住んでいても、なかなか観光地などに行くことがないので、京都大学や哲学の道、銀閣寺などを横目に、なんだか遠足に来たような楽しい気持ちになることができた。
少し汗ばみながらも、なんとか登山口に到着。
(さあーーーて、登りますか!)と心の中では腕をブンブン振り回していた。
登ってみると……
階段の1段1段が高い! 葉っぱや数日前の雨で土がぬかるんでいる!! 木の根がボコボコ地面から出てきて、まさにトラップ!!!
(大文字山! 君のこと、なめていたよ……)
登っても登っても、一体いつになったら到着するのか。
というか、本当に到着するのか!?
という気持ちがフツフツとわいてくる。
(前に歩いている人がいないし……。もしかして、道、間違えたのか!?)なんて不安がつのる。
そんなとき、
“こんにちはーー”
前から1人のおじさんがやってきた。
頂上から下ってこられたようだ。
「こんにちはーー」私たちもあいさつを返す。
“あと、もう少しで頂上ですよ! 頑張ってください!”
(おぉ! 天使!!)
「あの……頂上って、この道で合ってますか?」
“はい! この左側をまっすぐ行って右に曲がると頂上です。あと……5~6分ってとこですかね”
「そうなんですね! ありがとうございます! 頑張れそうです!」
そのアドバイス通りに道をなき道を進むと、ベンチが並ぶ頂上に到着した。
京都市を一望できる大パノラマ!
思わず「おぉーーー!!」なんて歓声が自然と出てきた。
写真を撮って、少しお茶を飲みながら休憩。
途中であきらめかけたけれど、登り切れてよかったね、なんて話をしていた。
大文字山に登ったのはこのときが初めてだったが、この山はすれ違う人同士が自然と「こんにちはーー」とあいさつをし合っている。
もしかすると、山登りをする人にとっては当たり前で、どの山でも自然としていることなのかもしれないけれど、これって普段経験しないことだなぁと思った。
毎日の生活の中で、自分にとって関わりのない人とは、あいさつをすることはない。
それなのに、誰かわからない、性別や年齢、話す言葉も違う人たちと、あたかもそれが当たり前かのように普通にあいさつをしているのだ。
私も、最初は下ってくる人からしてもらったあいさつの返事しかしていなかったけれど、自分が下る頃には、あたかも最初からそうだったかのように自分からあいさつをしていたのだ。
一歩一歩、転ばないように足元に注意して下りながら、この【あいさつの連鎖】について考えてある結論に至った。
このあいさつには「どうぞご無事で」の意味が含まれているんじゃないかと。
頂上に向かって懸命に登っている人に対して、「ケガせずに、最後まで登り切ってくださいね」
それに対して、「ありがとうございます」と返しているんだと思うと、なんだか心があたたかくなる。
きっと、これって、昔から続いてる連鎖なんじゃないかなと思うと、未来にも繋げないと!と強く思う。
誰かわからない、性別や年齢、話す言葉も違う人たち。
でも同じなのは、「この山を頂上に向かって登る」という目標。
相手の無事を願う心。
そして、昔から続く、途切れさせてはいけない伝統。
大げさかもしれないけれど、私たちは大文字山ファミリーだ! なんて考えながら帰路につくのだった。
***
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