私が、戦う日本のビジネスパーソンに茶道をすすめる理由
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記事:大場 安希子(ライティング・ゼミ2月コース)
「今月のお軸はね、宗中公のお書きになった和歌の短冊を掛けたのよ」
掛け軸を見上げていた私は、先生がおっしゃったその一言でビューンと江戸時代にタイムスリップした。
先月のお茶のお稽古のことだ。
私は6年ほど前に茶道を始めた。茶道歴としてはまだ短い。
私が習っている流派は、最もメジャーな三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)ではなく、遠州流という。
遠州流は、江戸初期に近江小室藩主で徳川将軍家の茶道指南役でもあった小堀遠州が始めた武家茶道である。
冒頭の宗中公(そうちゅうこう)というのは、遠州流の8代目である小堀宗中のことで、1800年代に活躍された。
この人は芸術面で大変に秀でており、茶道を通じて狩野派など芸術分野の人との交流も多く、合作で各種の作品を作られ、「目利き」であったという。
その人が実際に200年も前に書いたものが、博物館でもない一般家庭である先生のお宅にあり、2024年の私が見ている。
当たり前だけど、「江戸時代にも生身の人が生きていたんだ!」と実感し、歴史と自分がつながる。
この、頭の中でダイナミックに時空の波が押し寄せるような感覚が、たまらなく好きだ。
そんな茶道も始めるまでは、シャカシャカと点てた抹茶、なぜか飲む前にお茶碗を回す、正座で足がしびれる……お茶を飲むためだけにいったい何を? というイメージだった。
でも、お茶を点てる、いただくというのはごく一部であると今は分かる。
茶道とは本来、もてなす側(亭主)ともてなされる側(客)が茶室という小さな空間の中で起きること・モノに向き合い、コミュニケーションを愉しむ遊び全体を指すのだ。
先の掛け軸もそのコミュニケーションの一つで、亭主が仕掛けた今日の茶室のテーマを解くヒントになる。
客は、茶室でほかにも出されるお道具やお菓子などから今日のテーマ・ストーリーを導く謎解きをして、亭主との会話を愉しむ。
さて、私はこの茶道を始めてからというもの、厳しい競争の中で生きる現代のビジネスパーソンこそ嗜んだらいいのに、と思っている。
だって、茶道はもともと男性が嗜んでいたものだ。
鎌倉時代に中国に留学した禅僧の栄西が茶を源実朝に献上し、「茶の湯」として武士階級に広まったと言われている。
その後、戦国時代になると織田信長、豊臣秀吉をはじめ、名だたる武将たちはみな茶の湯に夢中になり、「名物」と呼ばれる名高い茶道具をコレクションし、戦場にも持ち込んで、戦闘の合間に茶の湯を愉しんだそうだ。
戦国武将がそんなにものめり込んだのは、生きるか死ぬかの毎日を生きていた彼らにとって、美しいものを眺め文化に触れるという時間が、心のバランスを取るためにも必要なものだったからかもしれない。
そう考えると茶道は、戦う現代のビジネスパーソンにもいい効果をもたらすのではないか。
具体的には3つの理由がある。
【理由① 無心になれるから】
ビジネスパーソンの皆さんは、恐らく、日々考えを巡らせて頭の中がいっぱいという状態にある。
茶室で起きること・モノだけに集中すると、ヨガのように無心の時間を作り、ストレスを取り除く効果があるはずだ。
ちなみに、私がお茶のお点前をする際に一番気持ちいいと思っているのは、シュンシュンとお湯が沸く音(松風の音ともいう)を立てている釜の中に、ひしゃくで汲んだ水を差すときだ。
一気に松風の音が止んで茶室に静寂がおとずれ、そのあとの湯返し(ひしゃくで釜の湯を汲み、釜へ戻す動作)でお湯を釜にこぼすときのちょろちょろちょろ……という音だけが響く瞬間がたまらない。
まぁ、完ぺきに無心とはいかず、「今日の主菓子はどんな味かなぁ」なんて邪念もチラつくけれど。
【理由② 学びが得られるから】
茶席には禅の精神あり、いつも先人の教えがそこにある。
先人の教えからは、人生に大事なこと・叶えたいこと・豊かな人生って何だろう……という思いを巡らせることができる。
私がお稽古で出会った禅語で印象的だったのは、「積善余慶(せきぜんのよけい)」である。
意味は、善い行いを積み重ねた家は、子孫にもその恩恵=「余慶」があるということ。
私がこうやって学びを得て幸せでいられるのは、ご先祖様たちの積善によるものなのだと急に時間の奥行を感じ、その中に今生きている自分の有難さを感じた。
こんな話を、飲み会やお客様との会食でちょっと織り込むのも素敵かもしれない。
そう、茶道は明日から使える「へぇー!」に溢れている。
【理由③ ビジネスパーソンとしての洞察力が研ぎ澄まされるから】
茶道では、お点前、お道具、掛け軸、お花、季節のお菓子などのすべてに亭主のお客様に対する「おもてなし」が現れる。
例えば冬は、水指(みずさし)の蓋を開けるお点前のタイミングが変わるが、それはできるだけお客様に水を見せる時間を短くして、寒々しい心地にしないようにという配慮の現れなのだ。
お点前は単なる“型”ではなく心遣いの現れであり、すべて意味や目的がある。
この、もてなしをする側、受ける側が分かりあう世界が、高次元でビジネスを交わす人たちの間にあったら、すごくいいのではないだろうか。
茶道を続けていくと、自分が相手を気遣うだけでなく、相手が何を思って準備してくれているのかを汲み取る洞察力も育まれ、研ぎ澄まされたビジネスパーソンになれる気がする。
最後に、ここまで(ビジネスマンではなく)ビジネスパーソンという書き方でダイバーシティに配慮したものの、敢えて言う。
私は、やはり男性にこそ、お茶を嗜んでいただきたい!
男性は、シャキッと背を正して茶を点てるだけですごくカッコよく、お得なのだ。
男っぷりは3割増しになり、きっとモテる。
この記事を読んで茶道に興味を持った方がいらっしゃれば、ぜひ茶道体験にお連れしたい。
どうぞ、お声がけあれ。
***
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