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不登校の解決は、昼夜逆転生活にあり?!


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記事:関谷陽子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「お母さん、いま不登校って20人に1人になっやんやって」
先日、次男が突然こんなことを言ってきた。
 
正確には、2023年の小・中学生の不登校児童生徒数は、29万人。小学校では60人に1人、中学校では17人に1人の割合というから、次男が言うよりも少し多い。
そう言う次男も、紛れもない不登校生。小学2年生から、中学3年生の現在まで8年間不登校のベテランだ。
 
そんな中で、忘れられない思い出がある。
 
 
不登校の子は、基本的に自分のことを責めている。外からは元気そうに見えても、内面は責めている。他の子は毎日学校に行けるのに、行けない自分を責めている。そんな罪悪感や自責感が、昼夜逆転という行動に現れることが多い。
次男も実際に、「昼間はみんな学校に行っていると思うからしんどい。起きていたくない」と言っていた時期があった。そうして、どんどん夜更かしをするようになっていった時期がある。
 
当時、まだ小学2年生。不登校の親の会などで、「昼夜逆転は、一過性のもの。心が元気になれば生活習慣も整うから、大丈夫」という知識は持っていた。だが、それを教えてくれたのは、ほとんどが高校生くらいの子どもの母親だ。中学生の保護者もいたけれど、当時小学生の、しかも低学年の不登校はとても珍しかった。
 
そして、小学校低学年なんて、成長期真っ盛りだ。ある程度大きくなっている高校生や、百歩譲って中学生はいいかもしれない。でも、まだ8歳なのに昼夜逆転をしていいものか。不登校であろうとなかろうと、規則正しい生活をしてほしい。そう思って私は非常に悩んだ。
 
そんな時だ。先輩ママたちからのアドバイスで購読を始めた「不登校新聞」に、昼夜逆転についての記事が載っていた。それによると、「むしろ昼夜逆転をした方が、不登校の解決は早い」と書いていたのだ!
 
この記事は、当時の私にとって非常に魅力的に感じた。だから思い切って、昼夜逆転を受け入れようと思った。だが、先ほども書いたように、次男はまだ小学2年生。1人で夜中起きているなんて、心配だ。
 
だから私は、一緒に昼夜逆転生活を体験することにした。
 
 
せっかくなので、購入しただけで遊んでいなかったゲームをすることにした。次男もゲーム。母である私もゲーム。夜中にポテトチップスを食べながら、それぞれが好きなゲームをする。
 
 
思い切って飛び込んだ生活だったが、これが意外と楽しかった。昼間と違って静かだし、世界から私たち2人が静かに切り離されたような、不思議な安らぎを感じていた。例えて言うなら、夜の中に、次男と私を乗せた無人島が、ぽっかり浮かんでいる感じ。昼夜逆転、いいかもしれない。そんなふうに思っていたある日、あることに気がついた。
 
 
昼夜逆転を2週間ほど続けたころだったと思う。次男の表情が、なんとなく穏やかになってきたのだ。最初は、こわばった顔で、本人も言っていたとおり、「眠るのがイヤ。寝ると、朝起きて学校にいかなきゃって気持ちになるから、眠りたくない」と言う気持ちで起きているのが伝わってきていた。
ところが2週間ほどした時に、夜更かしを楽しむような表情になっていた。
 
 
それを裏付けるかのように、ある日、「お母さん、今日の夜のおやつは何にする?」と、まるで秘密の共有をするかのように、ひそひそ話をしてきた。私と一緒に過ごす夜の時間を、宝物のように感じているようだった。
 
 
その瞬間、「昼夜逆転をした方が、不登校の解決は早い」という、不登校新聞の記事の本当の意味が、わかった気がした。今の次男は、朝起きることに恐怖を感じていないんだなと思った。確かに、昼夜逆転を始めた頃は、思い詰めたような、何かから追い立てられるような表情だった。
 
 
次男との昼夜逆転生活は、その後1ヶ月ほど続き、幕を閉じた。私がしんどくなってしまったからだ。どんなに楽しいと思っていても、さすがに40もすぎての不規則な生活は、体が限界だった。いくら昼寝をしても、やはり夜眠るのとは訳が違うらしい。その頃には、次男はもう「楽しい昼夜逆転」だったので、少しずつ私が次男より先に眠るようにしていった。
そうして、秋の足音が聞こえた頃、うっかり寝落ちしてしまった次男は風邪をひき、それに懲りたらしく、夏の終わりに始まった次男の昼夜逆転は、完全に終わりを告げた。
 
 
今でも夜更かしはするが、昼夜逆転とまではいかない。そうして、朝起きたい時にはしっかり起きてくる。
さて、不登校新聞に書いてあったように、不登校の解決が訪れたのかは、分からない。結局次男の不登校生活は8年目になっているから、それだけ見ると、全く解決していないと思うだろう。
だが、今私は、次男の不登校を問題とは思っていない。問題とは思っていないから、解決したと言えるのかもしれない。となるとやはり、思い切って本人の好きに昼夜逆転してもらった方が、不登校の解決は早いと言えるのかもしれない。
 
何より私にとって、次男と夜中一緒にゲームをしながら、ぽりぽりとポテトチップスを食べた毎日は、大切な思い出だ。外で思い出を作ることはほとんどできなかったけれど、ある意味他の親子とは違う思い出ができたと思う。
 
だがそう思っているのは私だけで、先日次男に聞いてみたら、そんなことはすっかり忘れてしまっていた。まあいいやって思いながらも、ちょっと残念。
 
 
 
 
***
 
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2024-05-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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