メディアグランプリ

有名人の名を語る投資サギの毒牙にかかったお陰で、自分のクセを知った。


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記事:美月しのぶ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「んんんっ? なんだか変! これって本物?」
投資サギだと気づいたのは3日目だった。
 
新NISAを始めたので、勉強しなきゃと思っていたところに、契約先の証券会社から一通のメールが届いた。
添付してあった勉強会の案内に興味を持ち、リンクをクリックすると、インスタに飛び、LINEに誘導され、アッという間に、誰もが知ってる有名な投資家と繋がった。
「えっ? どういうこと?」と疑いながらも、心の中では「超ラッキー!」とも思った。
ここまでは、まんまとサギ師の手口に引っかかっている。
 
ここで、証券会社の名誉のために述べておくと、この場合、証券会社はサギに加担しているわけではない。サギ師のニセ広告がインスタに忍ばせてあって、私は疑うことなくクリックしてしまったというわけだ。大手証券会社の案内だからと盲信していた。
 
そして、ネット上に有名人の名を語る『SNS型投資サギ』が横行しているという事実を知らなかった。いや、もしかしたら、ネット上で目にしたことがあったかもしれないが、自分がサギに引っかかるなんて、それ程バカではないと自負していた。
 
その後どうなったかと言うと……
誘導されたグループLINEには、80人のメンバーがいた。
そこでは、ボスである有名人投資家のレクチャーが行われており、専門的なテキストを元にメンバーとのやり取りが展開されていた。
 
「こんなに沢山の人が、投資の勉強をしてるんだ」「初心者の私はついていけるかな?」と不安を抱えながらも、投資家の仲間入りができるかもしれないとワクワクもしていた。
しかし、内容が難しすぎて「ムムムムリッ!」 ついていけないと思い、しばらく静観することにした。
 
だが、次第に怪しげな匂いがプンプンと漂ってきたのである。「もしかして、サギ??」
私は脅えるどころか、フツフツと好奇心が湧いてきて、潜入捜査をしてみたくなった。
そこで、アシスタントを名乗る女性に、LINEで「〇〇先生(有名人の名前)のアカウントが二つもあるのは何故ですか?」「〇〇先生のお名前が違っていませんか?」と訊いてみた。
明らかに日本名なのに、アシスタントから返って来たコメントは「先生の英語の名前です」
これには思わず吹き出してしまった。笑笑! もっと気の利いたウソを付けないものだろうかと。
おかしな日本語の使い方や、中国の漢字が混じっていることもあったので、「あなたはどこの国の人ですか?」と訊いてみたが、既読スルーされた。
グループLINEにも、質問を投げてみた。80人もいるグループなのに、既読がつかない。これで決定的である。きっと主犯格を含め数人で操作しているだけなのだ。
冷静になれば、難しい専門的なことの羅列も、生成AIによるものだということが分かる。
 
 
さて、これを機に、過去の似たような経験を思い出したので触れてみる。
「許せん!」と思った次の瞬間に、正義感のようなものがメラメラと燃え盛り、893さんにも、ガタイのいい怖面のおじさんにも、理不尽な怖面のおばさんにも真っ向から闘いを挑むことがあった。
取り巻く人達は固まって動けなくなり、後ろ盾になってくれる人もいなくて、皆さんは遠巻きに見ている。
その人達の心配と恐怖をよそに、怖いもの知らずの私は、相手に意見しているのである。
私だって、鼓動が耳につくほど心臓が強く脈打っている。でも、正義感の方が勝っているのである。
一旦は、相手の理不尽な言動に共感し、気を許したところで、こちらの意見を言うという作戦を取る。するとその結果、円満に収まるのである。中には、その後親しげに声を掛けてくる人もいた。しめしめ作戦成功!!
 
今回の投資サギでも、この正義感のようなものがひょっこり顔を出した。
「おっと危なかった! サギに遭わんでよかった〜」では済ませたくない。
どんな風に洗脳されていくのか? どんな手順で大金を抜き取られるのか? 巧妙な手口を知りたくなり、気づいていないフリをして潜入捜査をしてやろうと思った。
この時点で既に好奇心が優勢になっている。
 
 
サギ確定なので、4日目の朝、金融庁の金融サービス利用者相談室と、県警の組織犯罪対策部に通報した。
なんなら、インターポールにも通報しようかと考えたが、それはやめにした。
被害に遭ってはいないので、軽くあしらわれるだろうと予測しながら電話をかけてみた。
金融庁の対応は、可もなく不可もなく。県警は思いの外、真摯に対応してくれた。
この時のために残しておいたLINE上のデータとスクショが、いよいよ出番を迎えた。
それから数日後にも、県警から電話があったので、手口についてもう少し詳しく話すことができた。そして、「提供してもらった情報を、防犯対策のコミュニティの登録ユーザーにお知らせしてもいいですか?」と確認されたので、喜んでお願いした。
 
電話口の方に、潜入捜査を続けようかと提案したが、「危ないので、すぐにLINEから退会して下さい」と忠告していただいたので、「ですよね~」と素直に受け入れ、潜入捜査を打ち切った。
市井の人である私の闇サバキは不実行に終わったが、少しでも役に立てたのなら良しとして、終止符を打つことにした。
 
 
景気が良くならない側面や、国策として『貯蓄から運用へ』と進めている側面から、昨今の投資ブームは過熱し、金融商品への関心も高まっている。
そんな中、乗り遅れてはならないという焦燥感が私にもあったのだろう。
 
一世風靡したオレオレ詐欺師は影をひそめたようだが、新手のサギは跡を絶たない。
サギの手口も新しくなるんだから、ルールも早く新しくしてほしいと思う。
大手プラットフォームも犯罪対策を強化してほしい。
2023年の被害総額は、約51億円にものぼるそうだ。
これ以上被害者を増やさないために、法的な規制で成敗していただきたいものだ。
そして、善良な市民である私たちは「稼げる」「儲かる」などのワードに心を奪われないようにしたいと思う。
 
投資サギの毒牙にかかったお陰で、自分の特性が色濃く浮き彫りにされたので、危ない橋を渡りたがる行動は慎もうと思った。これにて、私の闇サバキ劇場の幕を下ろすとしよう。
 
 
 
 
***
 
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2024-05-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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