メディアグランプリ

15年の眠りから覚めるには最愛のモノとの別れが必要だった


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:服部達哉(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
 最初に気付いたのは大学の頃だった。講義の一つとして起きていられたためしがなかったように思う。社会人になってからの講演や会議でもそうだった。最初はつまらないから眠ってしまうのだと思っていた。ただ、興味があって受講した講義であっても、好きで読み始めた本を読んでいても、気が付くと眠ってしまっていた。特に食後は気を失うように、ふっと意識が途切れてしまうのだった。突然襲ってくる強烈な眠気だけでなく、一日中モヤに包まれたように、頭が眠気でボーっとしていた。
 
 単なる怠けか? よほど面白くないことばかりだったのか? いや、違う。つまらないから眠ってしまおう、などと思って眠ってしまったことはない。ただただ眠い。集中力が10分と持たない。頭がスッキリしない日が続いていた。
 
 最初は睡眠不足や睡眠障害を疑った。ただ、睡眠時間に関わらず、また睡眠時無呼吸症候群で眠りが浅くなっているわけでもなさそうだった。睡眠に関する書籍を読み漁っては対処法を試したが、症状の改善には至らなかった。書籍すら集中して読めていたかすら定かではなかった……。
 
 打つ手がなかった。対処法として職場では立ったままデスクワークをする時もあった。しかし、仕事中であろうと電車に乗っている最中であろうと、立っていても突然の眠気に襲われることがあり、ヒザがガクッとなる衝撃で何度となく目が覚めたことを覚えている。
 
 そんな時、一冊の書籍に出合った。「遅発型食物アレルギー」というものがあることを知ったのだ。遅発型食物アレルギーとは、急性の重いアレルギー反応が出るのではなく、数時間から数日後に症状が現れる。遅発型食物アレルギーの症状は多岐にわたるが、全身症状として倦怠感、慢性的な疲労、眠気、というのもあるらしい。これだ、と思った。
 
この書籍との出会いが大きな転機となり、著者のクリニックで食物アレルギー検査をすることにした。なんと、約100種類の食物に対するアレルギー試験で、軒並み反応が出ていたのだ。中でも乳製品、卵、小麦に強い反応が見られ、これらの食品を食事から除去するようにとの生活改善アドバイスを受けた。
 
何てことだ……。好きなものばかりじゃないか。何なら良かれと思って食べているものだって含まれている。
例えば、卵は総合栄養食品として健康のため、毎日食べるようにしていた。
また、乳製品についてもそうだ。重度の花粉症にも悩んでいた時、TVで腸内環境を改善することで花粉症を軽減する方法が紹介されていた。それは、寝る前にヨーグルトを500gほど食べるということ。確か、乳酸菌を寝ている間胃腸内に留めるため、寝る前に500gもの量を食べる、という内容だった。おかげで花粉症の症状はマシになったような気がしていたが、同時に過剰摂取が遅発型食物アレルギーの原因にもなってしまっていたようだ。
 
そして、小麦だ。パンにパスタに揚げ物……。挙げればキリがないが、偏食家の自分は小麦ばかり食べていた気がする。ビュッフェに行けば、自分の取り皿は茶色一色に染まっていたものだ。
 
なかでも、クロワッサンにハマっていた。最初に出会ったのは大学3年の時だったか……。最寄り駅にとあるカフェがオープンした。知らない名前だ。最初は朝食として寄っていた、という程度だったが、徐々にそのカフェのクロワッサンにハマっていった。朝も帰りも食べるときもあったし、自己紹介には必ずこのクロワッサン愛を語り、自分=クロワッサンと知られるようにまでなった。
 
行く先々でクロワッサンを食べられるよう、各地のカフェを調べ上げていた。例えば、出張先でもクロワッサンが食べられるカフェ近くにホテルをとり、徒歩圏内にクロワッサンが食べられるカフェが複数店舗存在する駅は聖地としていた。
引っ越しする際にもクロワッサンが食べられるカフェが近くにあることを条件にし、職場近くより、クロワッサンが食べられるカフェ近くを優先して住む場所を選んだ。
 
クロワッサンにアイスカフェラテ、時には他のパンも。夜には加えてパスタも付けて食べていたため、乳製品、卵、小麦の過剰摂取は明らかだった。自分としてもこの偏った食事と、過剰摂取が遅発型食物アレルギーの原因と言われれば否定しようがない。
 
愛して止まないクロワッサンを断つことになろうとは思いもしなかった。クロワッサンだけではない。乳製品、卵、小麦を食事から除去することは、単に選択肢が減ることに対する不安だけではなかった。自分のアイデンティティさえ失うような感じさえした。
 
15年ほど起きているのか眠っているのか分からない状態だった。10分と集中して座っていられないのは大問題だった。愛するクロワッサンには別れを告げ、乳製品、卵、小麦からも距離を置く新生活を始めることにした。
 
おかげで今では日中の眠気に悩まされることはなくなった。何と表現したらいいか。モヤが晴れたような、霧が晴れたような気分だ。以前はできなかったことができるようになった。以前とは景色が違って見えるほどだ。
 
遅発型食物アレルギーの認知度はまだそれほどではないようだが、世の中の食物アレルギーに対する理解は増え、アレルギー対応食品も増えてきた。グルテンフリーや、特定アレルギー食品を使っていない食品なども増えてきている。これらは急性のアレルギーを持っている人にとってはまさに死活問題だが、遅発型食物アレルギーの人たちも恩恵を被っている。遅発型食物アレルギーは通常の検査では分からない。不調であるのは確かでも、どこも悪くない時、遅発型食物アレルギーを疑ってみるのが解決につながるかもしれない。
 
別れがあれば出会いがある。グルテンフリーの米粉パンに豆乳ラテを愛する今日この頃である。
 
 
 
 
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2024-05-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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