人はいずれ死ぬというたしかなことと安住の地を求めて
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記事:山口純子(ライティング・ゼミ4月コース)
この度、お墓を建立し開眼法要を行い、ようやく義父の骨を埋葬することができました。
いまは肩の荷を下ろせた気もちでいます。
開眼法要とは、墓前でご住職にお経をあげていただき、建立されたお墓に魂を入れる法要のことです。ただの墓石だったものに、先祖代々の魂を宿し、故人を供養するためのお墓に変える儀式のこと。
お焼香をするための香炉を置き、粗塩や酒、丸もちや米そして小豆。昆布や干しシイタケなど、山海の乾物、果物などをお供えして、厳かに執り行われます。
義父がなくなって1年半になろうとしている。1周忌を無事に終えてホッとしたのもつかの間、あとは遺骨をどうするのかが大きな問題として残っていました。
昭和11年生まれの義父は3男で、本家のお墓に入ることはできず、自分たちでお墓を用意しなければなりません。
義父はビジネスマンとして海外生活が長く、日本の慣習にとらわれることなく暮らしてきましたから、古い時代の人でありながら生活すべてにおいて、押しつけがましいことは一切なく、おだやかで理知的な人でした。
子供たちに面倒をかけたくないという理由で、お墓はなくてもよいという考え方でした。
そこには、私たち(長男である息子)に子供がいないことも影響していたかもしれません。
このことは義父の決断ではありましたが、実際には、私たちの死後をどうするのかということと向きあうことでもありました。
老後すら考えられないこの時代に、死後について考えるのはなかなかむずかしいことです。けれど、子どもがいない以上は、自分たちの死後、遺骨の行き先を明確にしておかなければ、まわりが困ることになるんだろうなと想像してしまうと、いやがうえにも向きあわざるを得ません。
今の時代ですから、お墓以外の方法でご遺骨を供養することもできます。
たとえば、散骨や樹木葬、納骨堂に合祀墓(ごうしぼ)など。
変わったところで言えば、宇宙葬なんかもありました。
お墓はいらないと言われたけれど、どのように供養することがよいのか決められず、課題が残されたままです。
義母の気もちを確認すると、義父のおもいを叶えたいからと納骨堂におさめるのがよいのかもと、逡巡する様子。
年老いた母が一人で決断するのは悩ましいことだろうし、自分に置き換えてみたら、そうそうたやすく決断できることではないことが察せられます。
こんな話をしているさなかに、義父母が墓地を購入していたことがわかりました。
時代は30年ほど前、霊園開発が盛んにおこなわれていたときに、みんながこぞって進められるがままに購入していたようです。
管理費がかかっていることと、お墓は建てないという思いがあって放置されていたようでした。
墓地や、墓石を買うのにもお金はかかります。納骨堂におさめるにしても、しかるべきお金はかかるし、そこの霊園は20年という期限を超えると、みんなと一緒に埋葬されるようですから、どれをとっても一長一短はあります。
見かねた主人(息子)は、幸いにも墓地があるのなら、お墓を建てないことに固執する必要はないのではないかと考え方を変えました。
納骨堂におさめる代金と、お墓を建てる代金は大して変わらない。それに永代継続使用料をまとめて51年分支払えば、それ以降も私たち家族が管理料の心配をせず、その場所で永遠の眠りにつけるのだとしたら悪い話ではありません。
何よりも、自分たちが亡くなったあとに、納骨する場所を決めておけると、最後にお世話をしてくださる方を悩ませることがなく、スムーズに自分たちの人生を終えられることが何よりの安堵となっています。
義母も、父を埋葬できたことと、自分が弔われる場所を確保できたことで少しは気が楽になったのではないでしょうか。
人はいずれ亡くなるという、まぎれもないことから目をそらすわけにはいかないし、自分がどのように葬られるのかを考えるよい機会となりました。
散骨や樹木葬が当たり前の時代になるのも近いと思います。
ただ、残された者が故人の意思を尊重できるように、どうしてほしいのかを明確にしてあげられればより、残された者の救いになるのではないかと感じています。
死んだ後のことを考えることは、なかなかハードですが、避けて通るわけにもいきませんから、元気なうちに、決めておくことがいいんじゃないかなと思っています。
もちろん、気が変わればそのたびに修正すればいいことですから、どうしたいのかを書き記しておくことをおすすめします。
時代には逆行しているかもしれませんが、人生を生ききるためにも、自分の死生観を見つめなおす機会ができたので、お墓を建ててよかったと思っています。
父が安らかに眠れる場所ができたことを喜んでくれているといいんだけどな。
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