メディアグランプリ

別に贈らなくても不幸にはならないけど、贈ると必ず幸せになれるプレゼント


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:たかてぃー(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「ごめんなさい。明後日予約のオードブル、友だちが熱を出してしまって、1週間後に変更してもらえませんか?」
 
2日前になってしまったので、申し訳ない気持ちで電話しました。
 
いやでも前日までに言っていただけたらキャンセルしてもいいですよ! って言ってくれてたよなぁ、うぅん、でも食材とか準備してくれてただろうし、ただ、キャンセルっていうか延長だし、体調悪いっていうのも事実だし……
 
頭の中で勝手に浮かんだ言い訳は、予想だにしない返答で、全く必要のないものになってしまいました。
 
「すみません。明後日で閉店するので……」
 
ん? 理解がおいつかない。教室に黒板があるかのように、いつもそこにあるのが当然になっていたお店。町の人に愛されている人気店が突然の閉店……
 
なんでも、マスターが高齢になってきて、何年か前からその小さなお店をたたむことを考えていたのだとか。
 
そこは、高台の住宅街にある一軒家。
自宅がお店となっている「れすとらん」
 
こんな近くで、こんなに肩ひじはらずに、コース料理が食べられるところなんて、他には思いつきません。
 
僕は職場の人に連れてきてもらったのをきっかけに、実家の母、妻と一緒にランチを食べに来たり、お弁当を頼んで出かけたり、友だちがきたらオードブルを頼んだり……とたくさんお世話になってきました。
 
風貌には似つかないと言ったら失礼かもしれませんが、マスターが繊細な料理を作ってくれる。そして優しい奥さんが、にこやかに料理を説明しながら提供してくれる。そんなお店。
 
異常なまでのもりもり野菜にオリジナルドレッシングをかけて食べるサラダにテンションが上がらない人は今まで見たことがありません。
 
もちろん、メインの魚・肉料理は最高で、値段もそれほど高くないとあって、このお店に行ったことがある人はみんな好きにさせられてしまう場所でした。
 
そんなお店が閉店。オードブルの延長をあきらめ、予約していた日に妻と二人でお弁当を頼んで食べることにしました。
 
これまで、僕たちの人生を、僕たちの町を、きれいな思い出で彩ってくれたお礼がしたい!
 
そうは思うけれど、お世話になっているとはいえ、常連というほど通ってきたわけではありません。年に数回行かせていただく程度の僕たち。正直、お店の方は僕たちの顔と名前は一致していないでしょう。
 
お礼なんていうのもおこがましい。何かもらっても迷惑では? そんなことも思いましたが、想いだけは伝えようと手紙を贈ることにしました。あの「れすとらん」に妻と初めて行った時の写真を入れて。
 
そして、予約していたお弁当を受け取るときに手紙を渡したのです。すると、その日の夜、あの「れすとらん」の奥さんから電話がかかってきました。
 
「お手紙ありがとうございました。旦那から手紙を受け取って、娘と一緒に泣きながら読みました。こんなことを言っていただけて、本当に、本当に幸せです。他の方からも嬉しい言葉をいただけたこともあって、しばらく休んだら、お店としては難しいかもしれませんが、お弁当だけでもやろうかなって気持ちになってきました。その時は、お知らせするので、よろしくお願いします。それと、この手紙、とってもうれしかったので、お店のブログにも載せていいですか?」
 
ところどころ感情があふれて少し言葉につまりながら話してくれる声を聞いて、手紙を贈った自分が幸せになっていることに気づきました。
 
その時気づいたのが「感謝の手紙って贈ると必ず幸せになれるんだ」ということ。
 
いやいや、たまたま嬉しい電話がもらえたから幸せを感じたかもしれないけど、電話がなかったら幸せになっていないのだから“必ず”なんて言えないでしょう?
 
なんてこれを読んでいて言う方がいらっしゃるかもしれません。
 
いや、“必ず”幸せになります。
 
おいしく料理を食べた時の写真を見ながら手紙を書いていると、思い出すのです。あの時のお店の雰囲気を。別に何を話したなんて覚えていなくても、ナイフとフォークを動かしながら。「おいしいね」と笑う妻の顔を。
 
手紙を贈るというのは、自分の思い出を自分自身に贈るということでもあったのです。つまり、書くために素敵な時間を思い出すだけで幸せになれるのだから、感謝の手紙を書くと“必ず”幸せになれるわけです。
 
もちろん、閉店するという悲しみは消えません。それでも、この「れすとらん」との思い出が最高の形になったと思うと……うん、嬉しい!
 
ああ、やっぱ手紙っていい! 
 
電話だと後からアレを言えばよかったと後悔することもあるけれど、手紙はゆっくり自分の考えをまとめられる。
 
電話だと1度しか聞いてもらえないけれど、手紙だと何度も読んでもらえるし、その時を思い出して時間が経った未来でも読んでもらえる。
 
電話だと一人にしか伝えられないけれど、手紙だと今回家族にも読んでもらえたように、他の人にも想いを伝えられる。
 
音声ではないから、電話ほど感情をこめて伝えられないけれど、読む人次第で電話以上に感情を伝えられる。
 
確かに手紙を書くためにはそれなりの時間がかかるので大変な側面はあります。ただ、その時間もお金のかからないプレゼントになると思うのです。
 
こうして僕は手紙・言葉の魅力に気づくことができました。名前も覚えられていない存在の僕。手紙を贈らなくても生活は変わっていなかったでしょう。ただ、「感謝の手紙は別に贈らなくても不幸にはならないけど、贈ると必ず幸せになれる」のだとしたら「感謝は伝えた方がいい。どんな人にでも」そんなことに気づかせてくれた出来事になりました。
 
 
 
 
「れすとらん」さんへ
 
僕たちにとってれすとらんに行くのは旅行でした。
 
お弁当、オードブル、お店で数えたら10回どころではなくお世話になってきました。
 
お店に行くと忙しい日々を忘れて、ゆったりとした時間を過ごせたのがいい思い出です。
 
予約して行くのを楽しみにする日々。
 
見て楽しく、食べておいしい料理、非日常の空間を楽しむ時間。
 
ああおいしかったねと言って振り返る思い出。
 
そんなに遠くにあるわけではなかったのですが、旅行に行くときと同じ気持ちになりました。
 
子どもが生まれて最近なかなか伺うことができませんでした。
 
地元の親も一緒に行ったことがあり、家族三代でいつかいけたらいいなと思っていたので、その夢が叶わないのは少し心残りです。
 
ただ、長い間、素晴らしい料理と素晴らしい空間を提供してくださったこと、とても感謝してします。
 
個人的に大好きだったのが、もりもりの野菜にオリジナルのドレッシングをかけるサラダです。
 
最初に出てきて、気持ちがいつも高まりました。
 
お肉もお魚も行く度に最高な気持ちにさせられましたし、箸置きやお茶碗がかわいかったのも印象的です。
 
ついつい友だちが家に来る時は、あの雰囲気を少しでも感じてほしいと何度もオードブルをお願いしてしまいました。これから友だちがきたらどうしようかと困っています……
 
奥様はいつもにこやかにわかりやすく料理を説明してくださって、
 
マスターも奥様に負けない素敵な表情で素晴らしい料理を提供してくださいました。
 
とにかく伝えたいことは、大好きです! ってこと。
 
長い間お疲れ様でした。これからも幸多き人生でありますよう願っています。
 
 
 
 
***
 
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2024-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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