福島の人、ごめんなさい。福島って魅力的な観光名所ないっすよね?(^^;)
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:たかてぃー(ライティング・ゼミ4月コース)
6月の終わり、私たちの家族は車で東北に旅行した。青森に2泊、その他の県には1泊ずつ、そして栃木と茨城にも泊まるという人生最長、9泊10日の旅だ。もちろん、あちこち行きたい気持ちはあったのだが、0歳の赤ちゃんと行く旅行だったので1つの県で1つだけ観光名所に訪れるというルールを設けた。
計画をしている中で、どの県も行きたいところがパッと浮かんだ。ただ、住んでいる方がいらっしゃったら申し訳ないのだが、福島だけは正直どこも思いつかなかった。福島の友だちがいたら言ってしまっただろう。
「ごめん、福島って魅力的な観光名所ないよね?」
と。もちろん知らないだけで調べれば出てくるはずだと、「福島」「観光」と入れてネットで検索する。
大型スパリゾート……行きたいけど、子どもが泳げるくらいになってから行きたいなぁ。
水族館……自分が住んでいる神奈川にも、江の島近くに大好きな水族館あるし……
城……誰がいた城かもわからないのに行っても……
うぅん……
そんな中、同じくスマホで調べていた妻が「ねぎ1本を箸がわりにして食べるねぎそばがあるらしいよ」と言った。
すぐに写真を見たが、なぜねぎを使うのか意味がわからない。絶対に箸で食べた方が食べやすいに決まっている。箸にしたねぎも食べられるそうだが、そんなの切って薬味にしてくれた方がいい。
こんなにネガティブな気持ちしかないにもかかわらず、他に行きたいところがない私たちは、興味のない福島県の、食べたくもないねぎそばを食べに、発祥の店がある大内宿というところへ行くことにした。
というか、そもそも「大内宿」ってなんと読むのかすらわからない。 おおないやど? おおうちやど? だいないじゅく? おおないじゅく? 何パターンも思いつく音読みと訓読みの組み合わせ。正解を調べたのに何度も忘れてしまうほどに興味をもてていない。
結局、どれもちがって「おおうちじゅく」が正解だったのだが、宿という字が示すように、ここは江戸時代の宿場町なのだとか。
旅行も終盤9日目に車を走らせ、くねくねの山道を進み続ける。しかし、日曜日だというのに対向車はほとんどない。こんなところに観光名所があるのか? と疑問を抱き始めた頃ようやく目的地に到着した。
駐車場は思ったよりも多くの車で埋まり、バスが何台も停まって意外に人で賑わっている。こんな山奥にこんなに集まるってことは、やっぱ福島ってそんなに行くところがないのか……と思ったが、口には出していないので、これを読んでも福島の人は怒らないでほしい。
全長450m白い砂利の一本道が通る。その両側に茅葺き屋根の古民家がずらっと並んでいる。用水路を流れる水の音、風と共になる風鈴の音が暑い日に涼しさを感じさせてくれる。
舗装されていない道路、どこにもない電柱、見渡す限り江戸時代になかったものは使われていない光景を見ると、タイムスリップしてしまったように感じるのは必然だった。こんな景色を昔の旅人も見ていたのかと思うと、少し足取りが軽くなった。
ここでは古民家1軒1軒がお店になっている。手作りのお手玉屋、カフェ、資料館に旅館、そしてお目当てのねぎそば屋などお店の種類は多岐に渡る。
カフェでこの地域でよく食べられている揚げまんじゅうを買って食べてみた。サクッとした食感、熱々のあんこを同時に楽しめるのは、自分の家の近くではできない食体験だ。
お店の方が話しかけてくれる。思い出せないのでその通りには書けないが、ちょっと理解できないくらいの方言を交えながらの会話も印象的だった。
「どこから来たの?」
「神奈川から来ました。ここは素敵なところですね」
「そうだよ。生まれも育ちもここだから」
「えーそうなんですか?」
「ここの半分くらいの人はここにずっと住んでいるんだよ」
「すごいですね! 家も素晴らしい家ばかりで」
「そうだよ。茅葺き屋根はみんなで協力して直して昔のままの生活をしているんだよ。あの上からこの大内宿が一望できるから行ってきな」
終始笑顔で話すその姿から、この町に対する愛を感じずにはいられなかった。言われるがままに階段を上って大内宿を見渡すと、いつか忘れてしまったような、日本人だからこそ感じられるような、うまく言葉にできないノスタルジックな感情がわいてきた。
……きれい。
自分の意思ではなく体が勝手にスマホを出して写真におさめていた。それほどにこの街並みは美しかった。
一通りお店を見た後、お目当てのネギそばを食べた。食べたいと思っていなかったのに、目の前に運ばれた大きなお椀にどかっとのっかっている1本のねぎを見ると、思わず口角が上がる。
ただやはり、ねぎでそばは食べづらかったし、薬味にもなると言われて生でかじったらめちゃくちゃ辛かったし、家に帰っても食べたいとは到底思えなかった。しかし、そば自体は手打ちされていて市販のものとは大きく異なり、噛み応えがあっておいしいものだった。大根おろしをベースにしたつゆも独特でクセになる味だ。何より、古民家の中でしかも窓から見る景色もすべて古民家、そんな場所でねぎを箸にして食べるそばというのが、やはり非日常的でおもしろかった。
ただ、やはり気になったのでお店の人に聞いてみた。
「どうして、ネギで食べるんですか?」
「うちは代々大きなお椀でそばを提供してきたので、それに合うお箸が見つからないと社長が言って、ネギ1本使ってみようって半分ふざけて始めたんですよ」
「そうだったんですね、そばもおいしくて、場所も素敵で最高でした!」
「そうなのよ! この町って半分くらいの人がここに住んでいて……」
と気づいたら、ねぎそばではなく聞いたことがあるような町の自慢話になっていた。やはり、この町を愛しているからこそ皆さんが口をそろえてこの町の魅力を語り、この町の歴史や文化を守ってきたのだろうなと思う。
そんなことを考えていると、全く福島にもネギそばにも興味がなかったのに、めぐった東北の観光地で最もワクワクさせられていた。
ふと思う。「どうして、僕はこの町にこんなに魅了されているのだろう?」
普段の生活と別世界な建物、働いている人の笑顔が素敵、ここでしか食べられない食事……
これ何かに似ている……
あ! あそこだ。夢の国。
え? 夢の国における大事な大事なキャラクターがいないではないかって?
安心してほしい! ネズミのキャラクターが音楽にのせてダンスするように、牛のキャラクターが風にのせて首を揺らす「赤べこ」がいるのだから。やはり、大内宿は福島の和製「夢の国」と言っていいだろう。
そして、夢の国とも共通する大内宿における最も魅力的なポイント、それはやはり働いている人の「愛」だと思う。
そこを愛しているからこそあふれる言葉。
愛しているからこそ大事にされる伝統。
こんな素晴らしい場所が福島にあったなんて……きっと他にも魅力的なところがあるはず。
それなのに、行ったこともないくせに、自分が知らないだけのくせに、気軽に魅力がないなんて思ってしまった自分が恥ずかしい。
勝手に書いておいてなんだが、しっかり謝らせていただきたい。
福島の人、行ったこともないのに魅力がないなんて思ってしまってごめんなさい。
信じてもらえるかわかりませんが、福島・大内宿、本当に本当に大好きです!
***
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