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【体験レポ】緊縛で誰でも覚醒体験が出来ると聞いたから、本当かどうか緊縛師に縛られに行った話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:石原 真由美(ライティング・ゼミ4月コース)

 
 

「亀甲縛りのマユミさんですか?」
 
初対面の男の子から聞かれて、「はぁー?! そんな趣味ないし! ってか、なんていうイメージ植え付けっちゃったのよ!」と内心憤りながら、思わずテツコの顔を睨みつけた。テツコは笑いながらこう言った。
 
「この前、物理学者の勉強会に参加したんだけど、緊縛の話だったの。1~2回緊縛されると誰でも覚醒体験が出来るんだって。マユミは内気だから、もっと自分を出せるように縛られてきたらいいと思って!」
テツコはいつも本当なのか冗談なのかおちゃらけているから話半分に聞いていた。でも、折角勧めてくれたから検索してみたところ、関連する動画が見つかった。
その動画では、物理学者がある喫茶店で女性から声をかけられた話から始まり、緊縛には卑猥なイメージがあるから難色を示したけど、
 
「緊縛は今は芸術なんです。緊縛師が女性を美しく縛り、作品として展示したり写真を撮ったりしています」
「覚醒や悟りを開くために、何年もヨガや瞑想などの修行が必要だったことが、緊縛では簡単に出来てしまうんです」
 
この話を講演会や勉強会でしていると、実際に同じ体験をした人も現われて
 
「縄が皮膚に当たる感覚が、いつもは意識していない身体の境界線を認識させて……すると、意識が身体を超えて広がった」
 
と、臨死体験のように自分の身体を上から見下ろす感じに意識が拡大するそうだ。その方はヨガのインストラクターであり、普通の人よりも感覚が繊細だからか、1回で覚醒体験が出来たそうだ。
 
私も興味を持ったものの……緊縛には低俗なイメージが付きまとうし、何より怖かった。痛そうだし、知らない人に縛られるのも不安だった。でも、気になって、緊縛師を検索していたら、浴衣を着て緊縛された女性の写真を見つけた。卑猥なイメージは全くなく、ただただ美しかった。
 
こうして、私は緊縛師を見つけた。
 
でも、どうしても、いきなり知らない人に縛られるのは怖かった。タイミングよくその緊縛師は東京に新しくサロンを開いたばかりで、第一回目のお話会があるとのこと。そこに参加してどんな人なのか探りに行ったところ、
 
「緊縛はオートクチュール」
「型もパターンも何もない、その時、その女性を美しく縛る一点物の芸術」
「紐や縄で結ぶ文化は日本の伝統文化。結び目ひとつひとつに仏が宿る」
 
緊縛師の語る縄の世界観は美しかった。元々、デザイナーとして会社経営をしていたが、たまたま入った店でお師匠様の緊縛を見てその芸術性に感動したそうだ。緊縛に対して変態的なイメージが広まっていることを嘆いていた。
 
結び目ひとつにも美しさに拘る流派で、
「そんな汚ねぇ結び方じゃあ仏がはいらねぇぞ!」
とお師匠様によく怒鳴られたそうだ。
 
「私の緊縛は抱擁です」
緊縛が痛くないか問い合わせしたら、このような回答があった。メニューにもセラピーとあり、私は申し込むことにした。
 
当日、黒のランジェリーに映えるように赤い縄で縛られた。緊縛師が自ら染めた麻縄は、深紅の美しい色合いだった。
 
無音の中、シュルシュルと縄が擦れる音に、時折「ハッ」と気合の声が響く。白い肌に深紅の縄、その対比もまた美しかった。
 
緊縛師に抱きしめられながら、体中に縄が巻かれて固定されてゆく。
 
ぎゅぅ~と抱きしめられ
ぎゅぅ~と縛られる
 
その度に、「ここにいていいよ」って言われているようで安堵感が湧き上がり、泣きそうになる。
 
全身を縛られて身動きが取れなくなると、鞭で叩かれた。
 
「あっ! これ、テレビか漫画でみたことあるやつ~!!」
と、縛られ鞭打たれている変態的状況が可笑しくて爆笑しちゃったんだけど、緊縛師曰く、「ごめんなさい!」となって興奮するシーンらしい。
 
私には全然、縄も鞭も良さがわからなかったけど、本当にこれで興奮する人がいることに驚いた。自分は変態ではないことがわかって安堵したものの、変態の嗜み(?)を楽しむことの出来なかった自分が少し悔しかった。
 
縛られることで、「ここにいていい」という強い肯定感が得られた。そのことにより、今まで抱えていた自分には価値がない、ここにいてはいけないという気持ちから解放され、自己受容の一歩を踏み出せた。普段は忙しく意識が外に向きがちで、自分自身をおざなりにしていることが多い。そんな中、自分の身体を強く意識させられる緊縛は、じっくりと自分の身体と心に向き合う時間になった。
 
私にとって、緊縛はセラピーであり心の解放であった。
そのような意味で、私は「緊縛で覚醒」したのだった。
 
 
 
 
***
 
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2024-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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