代わりに文章を書いてくれるAIに勝つためのミスり方
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:村人F (ライティング実践教室)
「AIに自分そっくりの文章を書かせましょう!」
という宣伝があった。
でも、大多数の人は「そんなものがあってもなぁ……」と正直シブい顔をすると思う。
僕もそのタイプだ。
理由は簡単。
僕みたいな文章を書くAIができたところで役に立たないと思うからだ。
なぜなら、そもそも僕の文章が微妙なのだから。
文章講座を何年か受けているから苦手意識は無くなってきている。
それでも、質の面ではまだまだ圧倒的に下手なわけだ。
つまり、この僕にそっくりの文章をAIに書かせたところでイマイチな文章が量産されるだけだ。
そんなポンコツができたところで意味がないだろうと思うから、魅力を感じなかったのだろう。
ただ、この広告の本当の恐ろしさが何かも、当然わかっている。
僕よりもっと上手い文章を書く人そっくりのAIも、同じ要領で作れるということだ。
プロの小説家やエッセイスト、スポーツ評論家まで好きな作家のクセを覚えこませれば見分けがつかないレベルに仕上げられるわけである。
実際、広告元である「天狼院書店」の文章生成AIはそのレベルで仕上げている。
『ライティング・ゼミ』という文章講座の先生をしている店主三浦さんそっくりの文章を書くAIを店主本人が作っているのだが、もう全く違いがわからない。
このレベルで再現できてしまう。
そして、そういうAIを自作できることが技術の真価だ。
こうなると、やってみたい気持ちも出てくる。
しかし同時に嫌悪感が生まれているのも正直なところだ。
これは文章講座を受講しているから起こるのだろう。
プロそっくりの文章を書けるAIができたら全部それに任せればいいわけで、こうなると自分で書く意味がないじゃないか。
だから便利だけど、嫌。
そういう贅沢なイライラをしてしまうのも人間だろう。
だが現実問題として、すでにそういうAIが実用化されてしまっている。
だから便利に使いこなそうというのも進むべき道だ。
でも、この状態で人間がやるべきことは何か考えるのも避けてはいけない課題だろう。
なにせプロそっくりの文章を書くAIを作れる時点で、大多数の人に文章を書く意味が無くなってしまうわけだ。
クオリティがAI以下の代物を作るなんて時間の無駄でしかない。
逆にいうと、この時代にわざわざ自分で文章を書く場合は、AIにはない優位性が必要になってくる。
これについて本気で考えないと、人の仕事が無くなる未来になりかねない。
ではAIに出せない人の優位性はなにか。
その1つは、ミスりまくることではないだろうかと思う。
例えば僕の頭はポンコツなので、文章も粗い。
読み返してみて何じゃこりゃみたいな間違いもよくする。
きっとAIだったらこんな不正確な状況には陥らないことだろう。
ただ、そういう雑さが魅力にも思えるのだ。
なぜならミスは、本人にすら読めないから。
本格的なライブ、生きた文章だから生まれるアウトプットなのだ。
これが人の書いた作品の面白さだろう。
そして、それを証明している業界がある。
将棋界だ。
藤井聡太先生を始め、現代はすべてのプロがAIを使っている。
もちろん人間より遥かに強いレベルだ。
だから強さだけ求める場合はAI同士で戦わせればいいわけで、人がやる意味なんてない。
しかしプロの将棋は今も大人気である。
僕も長いこと観戦しているけれど、メチャクチャ面白い。
その要因が何かを考えてみると、実はミスをするところなのだ。
AIが示している評価値、どちらが勝っているか示す値を見ながら観戦するのだが、あの藤井聡太先生もよく50%から40%に落ちるような悪手を指すわけである。
こういう場面がたまらなく好きなのだ。
なぜなら最善手を示すAIには絶対指せない手だから。
つまり、評価値が下がる悪手、ミスこそが人のみが指せるライブなのだ。
もっと面白いのはプロの解説が入ると、それがミスではないことがわかる点だ。
「この手は評価値的には40%と下がるけれど、次に指すべき正解手が絶対にわからないレベルのひっかけ問題なのだ」
こういう具合に間違っているように見えて、その裏には恐ろしく深い罠が込められている。
それが面白くて僕は将棋を見ている。
周りでも、そういう手が好手だと語り継がれているので、ここが最大の魅力なのだろう。
そして人の書く文章の面白さも、同じようにミスする点にあるのだろう。
なにせ、魅力を語ろうと思ったら将棋に話が飛ぶなんてAIにできるわけがない。
こういう予測不能性、ある意味では不正確なライブ感。
これこそがAI時代だからこそ際立つ、人の文章の魅力だと思う。
つまりAIに勝つ上で伸ばす点もここなのだ。
その力を身に付けるにはどうすればいいか。
それは一周回って、自分で文章を書いてみることなのだろう。
何事も筋トレのように継続しなければ力はつかない。
実際、僕も最初はヘタクソだった。
これが文章講座を続けることで、いつの間にかAIより好きだなと自分で思えるレベルには書けるようになっている。
よってAIで優れた文章を簡単に作れる時代だからこそ、人が自分の力で書くことが必要なのだ。
このサポート役としてもAIは非常に優秀だ。
なにせ優れた文章を書けるのだから、当然優れたアドバイスを出せるわけだ。
ゆえにとても厄介なライバルは、とても心強い相棒でもある。
これからは、そんなAIと一緒にミスをしながら歩む時代なのだろう。
プロに匹敵する文章を量産してくる困った対戦相手。
同時にメチャクチャ鋭い視点でサポートしてくれる味方。
二つの面をもつ最新技術と共に、ポンコツだけど愛すべき自分を磨いていこう。
***
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