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令和の米騒動で気づく マリー・アントワネットの言葉に隠されたメッセージ


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記事:かたせひとみ(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「米がないなら、パンを食べればいいじゃない」
この夏の米不足を報じるニュースを聞いたとき、私はそうつぶやいた。
伝説のフランス女王、マリー・アントワネットの有名な言葉、「パンがないならお菓子を~」を思い浮かべて。
 
ニュースでは、昨年の猛暑による収穫量の減少と、インバウンド需要の増加により、全国的に米不足が深刻化していると報じていた。
 
「別に米じゃなくたって……。パンでもいいでしょ」
我が家には米のストックが十分にあったため、最初は他人事のように思っていた。
しかし、台所に行って残量を確認してみると……。オーマイガー! 予想をはるかに下回るたった2合程度の米しか残っていなかった。これでは今日明日にも底をつきてしまう。対して醤油は3本もあった……。なぜ? 在庫チェックは大事だと痛感した。
 
そして、この瞬間、他人事と思っていた令和の米騒動に、私も急遽参加する羽目になった。エントリーする気なんてまったくなかったのに……。
 
私は昔からパンより圧倒的に米が好きだった。食べ盛りの中学生だったとき、おにぎりを11個完食したこともある。呆れる母の横で、妹だけは「おねえちゃん、女山下清だね!」と称賛してくれた。
 
米好きの師匠である山下清画伯は、いつも「ぼ、ぼ、僕はおにぎりが好きなんだな」と言っていた。
ええ、ええ、わかります、わかります! 私もおにぎりも米も好きなんです。だから365日ほとんど毎日米を食べています。パンも美味しいけど、私にとってはおやつでしかないんです。やっぱり米なんです! 
 
まずい! 米がないと困る! 危機感を覚えた私は、早速、近所のスーパーに行ってみた。しかし、いつもは棚いっぱいに米が積んであるコーナーは、清々しいほどスッカスカだった。既に争奪戦は終わっていた。国破れて山河あり、米破れて棚だけあり……。
 
それならば別の店へ……と、気概のある主婦なら思うだろう。頭の中に近隣のスーパーを思い浮かべ、在庫率の高さや移動距離を瞬時にシミュレーションして、次の行動に出るはずだ。しかし、私は早々に米を探すことを諦めた。これだけニュースで騒がれている中、完全に出遅れているのは明らかだった。
 
米を買うのを諦めた私に、あの言葉がつき刺さる。
「米がないなら、パンを食べればいいじゃない」
さっき他人様に向けて言った言葉が、ブーメランとなって自分に返ってくる。他人様じゃなくて「私が」だったのね……。
 
仕方がない。一日3食、パン生活をしてみるか……。しかし、よくよく考えてみると、米がないだけで食糧自体が不足しているわけではない。パンの他にも代替案はある。
ということは……。
 
「米がないなら、パスタを食べればいいじゃない」イタリアーン! 
「米がないなら、おかずを食べればいいじゃない」糖質オフ! 
 
新米が出回るまで、あと少しだ。なにも永遠に米を食べられないわけではない。女山下清だって、1カ月程度なら米ナシでも我慢できる。
この際、米のことは忘れて、普段とは違う食文化を楽しんじゃおうかなーと、ウキウキしてきた。
 
ないものではなく、あるものに目を向ければ済む話なのだ。
実際、私達は普段から自然に「AがダメならB」と代替案に切り替えている。
 
例えば会社にて。
「A会議室空いてるー?」
「あー、埋まってますねー。B会議室なら空いてます。こっち取っておきますね」
 
例えば居酒屋にて。
「すみませーん。注文いいですか。えーっと、『タコのから揚げ』ひとつ」
「あー、それ出ちゃったんすよ」
「わー、残念。じゃあ、『イカゲソ』で」
 
例えば電話したとき。
「話し中かー。じゃあ、メールで連絡するかー」
 
なあんだ、これって、私がいつもやっていることじゃない! ただ、ひょいと方向転換すればいいだけなんだ。
 
そして、ふと気づいた。さっきまで冗談のように使っていた「パンがないならお菓子を~」というマリー・アントワネットの言葉には、意外にも深い意味が隠されているのではないかと。
これまで世間知らずでわがままなお姫様の失言だと思っていたが、時代背景を脇に置き、この言葉だけを見てみると、思いのほか本質を突いた言葉のように思えてきたのだ。
 
AがダメならB。Aにこだわって停滞しているより、アプローチを変えて方向転換するのも一つの手だと、彼女が教えてくれているような気がした。
 
さすがマリー・アント……ここからは親しみを込めて「マリちゃん」と呼ばせてもらおう。
では改めて。マリちゃんたら、良いこと言う! 
ちょっと彼女に聞いてみよう。
 
仕事でうまくいかないんだけど……。
マリちゃん「うまくいかないなら、手伝ってくれる人を探せばいいじゃない!」
 
結婚したいんだけど、相手がいなくて……。
マリちゃん「相手がいないなら、マッチングアプリに登録すればいいじゃない!」
 
病気になったらどうしよう……。
マリちゃん「病気になったら、休んでのんびりするチャンスじゃない!」
 
マリちゃんの手にかかると、どんな悩みも秒速で回答してくれる。
なんてシンプルで明快なんだろう。この言葉は真理をついている上に、汎用性も高い。パンだの菓子だの食に限った狭い範囲の話ではなく、仕事に恋愛に人間関係、果ては人生にも使える守備範囲の広い言葉だった。
 
さすが、マリちゃん。没後何百年も経ってもなお、この言葉が脈々と受け継がれ、色褪せない意味がわかった。若いころから人生の示唆を含むこの言葉を口にしていたとは。
私は彼女のことを見直した。世間が抱くイメージとは裏腹に、彼女はとても聡明で、人生を切り開いていく逞しさを兼ね備えた女性だったのかもしれない。
 
米騒動を通して、私はマリちゃんから人生に対するアプローチを学んだ。
「いつまでもこだわっているなんて愚かですこと! こだわりなんて捨てた方がよろしくてよ。今あるものに目を向け、柔軟になって、前をお向きなさい!」と。
 
何を質問しても、即答するマリちゃん。口元に手を添え「オーホッホホ!」と高慢な態度で、高らかに笑う姿が目に浮かぶ。
小さなことでクヨクヨ悩んで、同じ場所に停滞しているなんてことは、マリちゃんの辞書にはないのだ。きっと。
 
 
 
 
***

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