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人生の成功とは、自分は何者か

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

上所祥子(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 

人生の成功とは?
 

このところ考えさせられることが多く、気持ちが揺れている。
 

先日、久しぶりに短大の同期会が京都であった。女子4人と男子1人。7、8年ぶりだった。63歳と64歳。え〜っ。還暦を挟んで、みんなどんな人生を歩んでいるのか。
 

皆、ある意味、人生の成功者だ。誰もお金に困っていない。この日集まった全員が、一流会社に就職した。総合商社2人、損保2人、男子は飲料メーカーに就職し今や役員だ。ビックリ!
 

私達は、応援団吹奏楽部。同じ釜の飯を食った仲間だ。大学の学部の一つに女子短期大学部があり、クラブ活動は男女一緒に活動した。懐かしいメンバー達だ。
 

女子で定年まで勤めたのは、総合商社の2人。別々の会社で、1人は私。ひとしきり近況報告が済んだあと、もう1人の友人A子に尋ねた。
 

「いま、どうしてるの?」
 

彼女は答える。
「何もしてない」
 

「え〜っ、もったいない」
思わず言った。
 

A子は頭がよく、文章がとても上手な学生だった。私とA子は2人とも教師志望だった。しかし、2人とも、途中で企業に志望を変えて就職した。教育実習にも行き、教員免許も取得したのに。この学校には同じような学生が何人かいた。
 

今にして思う。どうして、教員から企業に、志望を変えたのだろう?
 

理由を探ってみる。
当時わが短大は、短大の東大と言われ、優秀な人材が集まっていた。実際、大学に行かないのが不思議なくらいの学生が多かった。
 

一つ 社会情勢
1980年代は超売り手市場で、大学よりも短大の方が就職がよい状況にあった。女子の大学生はまだまだ少ない時代だった。
 

一つ 学校推薦制度
当時、企業への就職は、学校推薦制度があった。企業は、学校推薦を受けた学生の中から、選抜して採用する。学校推薦は1社のみ。もちろん、就職試験は、普通に筆記と面接がある。ただし、採用された場合は、その企業に就職することがルールであった。
 

わが校の場合、学生数が少なく、求人数枠が余っていた。2社ほど人気の企業があり、枠を超えて志望者があった場合、なんとジャンケンで決めていた。順当に行けば、学校推薦=就職決定であった。ちなみに、私が志望した会社は、4人の求人枠に対し、応募は2人で、2人とも合格した。
 

一つ 時期の問題
教職試験が例年7、8月の夏休みに開始されるのに対し、学校推薦は2年の5、6月頃に決まった。
 

一つ 教職になれる確率
当時、教員採用試験の倍率は、1980年当時、中学教員は8倍だった。数回にわたる試験があり、必ず採用されるとは限らなかった。
 

一つ 教育実習
2年次に、母校の中学校に教育実習に行った。学校の授業は楽しかったが、当時は、学校は荒れ放題の時期で、窓ガラスは割れている、新米教師は生徒に殴られる、という状態だった。放課後の職員会議では、日教組が盛んな時代で、若手の教員が管理職に詰め寄っていた(ように見えた)。そんな、「教えるー学ぶ」以外の、教師のナマの実態が、私にはショックだった。
 

一つ 家庭の事情
当時は、就職して結婚して家庭に入るのが当たり前とされていた時代だった。男性優位な時代であり、高校3年の進路選択時、「大学に行きたい」と訴える私に、親は「女に教育はいらない」と言った。親に逆らえず、不本意ながら短大に入った。私だけかと思っていたが、同じような理由で、入学していた学生が複数いた。
 

一つ 私自身のアイデンティティの問題
短大2年の就職選択時、「教師になりたい」と訴える私に、親は「お前に教師はつとまらない」と言った。親に逆らえばよいものを、逆らえず、またもや断念した。19歳。精神的に自立していてもよい年頃だったが、自我が育っていなかった。幼少期から、100点取っても褒められず、当たり前と言われて育った。何か「やりたい」というと、「お前にできるわけがない」と言われ続けた。勉強はできるのに、自尊心が低く、自己肯定感が低く、自己評価が低い子どもに育ってしまった。
 

改めて、40数年前の複雑な心境を振り返る。教師になりたいという子どもの頃からの夢を、なぜ諦めてしまったのだろうか?
 

そうか。
私は、自分に自信がなかったのだ。教員採用試験の倍率 8倍に対し、受かるかどうかが不安だったのだ。長年にわたり、「お前にできるわけがない」と言われ続けていたため、高い倍率を前に、「私にできるわけがない」と思ってしまったのだ。
 

夢と現実を天秤にかけ、難しい道よりも、安易な道を選択してしまったのだ。
 

そうか。
親は後年、「女に教育は必要ない」と言って大学進学に反対したことを「申し訳なかった」と謝った。正月に実家に帰るたび、毎年毎年謝った。「今更そんなこと言われても」と、私は腹立たしかった。しかし、親が間違っていたのは、そこだけではない。子どもの人格を否定したことだった。「お前にできるわけがない」その言葉は、子どもの心を深く傷つけ、子どもの心の成長を止めた。
 

私は、自信のない子供に育ち、子どもの心のまま大人になってしまったのだ。
 

私は、自己評価が低いために、自分ができることを、「あたりまえ」で「たいしたことがない」ととらえていた。会社に入ってから、他の人が、たいした仕事でもないのに、「こんなに大変だったんですよ」「こんなに頑張ったんですよ」と言うのが、不思議で、理解できなかった。
 

学業にしても、仕事にしても、自分のやったこと(成果)を正当に評価できない。私は、自分の成績をたいしたものではないと思い、自分の仕事は誰でもできるもの、と思っていた。自分ががんばった成績を、がんばった仕事を、自分を “大切にしない” 大馬鹿者だった。そして、究極の自己アピール下手だった。
 

「自分は何者か?」
 

青年期、13歳から19歳くらいに、人は自問する、らしい。「自分は何者で、何がしたいんだろう、何をするために生まれてきたんだろう?」そんなこと、若い時に考えたこと、あったっけ?
 

記憶が、ない。もともと、記憶力は良い方では、ない。しかし、考えるべきときに、真剣に考えていなかったように思われる。
 

63歳の今になって、ようやく自分の内面に問うことができるようになった。そうだ、私は、しごく幼かった。成長が遅かった。人が、青年期にある時に考えるべきことを、今頃、考えていることに、気づいた。
 

しかし、気づかないよりは、気づけたことを嬉しく思おう。
 

今更と思うだろうか。何故なら、今になり、あの時、やっぱり教師になっていた方がよかったと、後悔する気持ちが生まれたからだ。
 

いま、やっと自分に向き合えた。内省が深まった。やっと、私は、大人になり、精神的な成長を遂げたのだ。やっとここまで来たね、と自分を褒めてあげたい。
 

人生の成功とはなんだろう?
 

第一の総合商社での職業人生は、表層的だった。定年退職後、私は第二の人生をキャリアカウンセラーとして始めている。
 

人生はこれからだ。今度こそ、自分は何者なのか、をしっかり自分に問いながら、生きていこう!

 
 
 
 

 

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2024-09-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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