メディアグランプリ

AI時代の生き様を教えてくれるプロ将棋棋士を語りたい

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記事:村人F (ライティング実践教室)
 
 

藤井聡太だけじゃないんだ! 将棋界は!
強さでいえば確かに最強だ。
8個あるタイトルのうち7個も制覇しているのだから。
レベル的には大谷翔平と同じ、いやそれ以上に異次元の成績だ。
きっと興味がない人でも彼の名前くらいは知っているだろう。
 

ただメジャーリーグと同じで、この業界にも魅力的なライバルがたくさんいるのである。
彼らは絶対王者すぎてもはやラスボスという表現をしたほうがいい藤井聡太を倒すべく、牙を研いでいるわけである。
 

このバックにあるのはAI。
現在のChatGPTブームになる数年前から浸透している世界なので、将棋棋士の理解度は一般人を遥かに凌駕しているのだ。
 

それはAIに対する疑念も、同じである。
人間らしさとはなにか。
AIによって個性がなくなるのではないか。
そもそも人間が将棋を指す意味があるのか。
こういった問題提起が数年前からされていたのである。
これは私達が生成系AIの登場により危惧している問題と似ているのではないだろうか。
 

そのうえで特に語りたい棋士がいる。
佐藤天彦九段だ。
 

彼は将棋界で最も権威のあるタイトル「名人」を3回獲得したトップ棋士だ。
クラシックやファッションにも造詣が深く、ついた異名は貴族である。
おそらくアザラシの柄が入った和服で将棋を指す棋士など、彼以外いないだろう。
そういう芸術的な側面を持つ男なのである。
 

だからこそ、ずっとAIに疑問を持っていた。
彼を代表する言葉に「評価値ディストピア」がある。
 

これはAIが浸透しすぎた将棋界においてAIが示す「評価値」、どちらが有利か表す数値に囚われて、人間らしい将棋が指せなくなるのではという問題提起をした言葉だ。
実際、この言葉が出た当時はAIが推奨する戦法を皆が採用するので、どこを見ても同じような対局が行われてバリエーションがない状況になっていた。
この危機感が言わせた言葉が「評価値ディストピア」である。
 

しかし将棋は勝負の世界。
AIを使わないと勝てない以上、使わざるを得ない。
彼はずっと、このジレンマに悩み続けていた。
それに伴い成績も落ち気味になっている。
 

そして、彼は選んだ。
「振り飛車」という道を。
 

「振り飛車」は将棋の戦法の1つで、縦横どこにでも行ける最強のコマ「飛車」を最初にいる右側から左側に移動して戦う作戦である。
この戦法の特徴を一言で示すと、AIに嫌われていることが挙げられる。
 

なにせ選んだ瞬間に勝率が5%くらい下がるのだ。
もはや自分からハンデを相手に与えているレベルである。
ゆえに、勝負の世界である将棋界でも当然敬遠されていた。
 

しかし佐藤天彦九段は、あえてこの道を選んだ。
そして、彼の将棋も蘇った。
 

トーナメントでも決勝まで残るケースが増え、将棋界の最上位リーグである「A級順位戦」でも1位である。
この好調を、AIがNGと見なした振り飛車で手に入れたのである。
 

これはAI社会で皆が不安に思う、人間らしさを示す好例ではないだろうか。
よって、この要因を分析すれば、私達の生きる道のヒントになるはずである。
 

ではそれはなにか。
1つは「AIに嫌われている」戦法をあえて選ぶメリットだ。
 

「振り飛車」は実際、評価されていない。
だから研究も当然ながらおろそかになっている。
 

しかし逆に言えばサンプル数が少ないからこそ、そこを重点的に調べれば自分だけが理解しているフィールドに持ち込めるのである。
これは将棋においてはかなりのメリットだ。
 

そもそもAIを使う理由がテスト勉強の予習、すなわち前もって出てきそうな局面を抑えておくところにあるのだから。
ゆえにAIが評価しない振り飛車を使った時点で、ここまで相手が使った研究時間をすべて無に返すことができるのだ。
この側面で理にかなった戦い方と言えるのである。
 

そして最も大事なのは、AIが示す評価をそのまま鵜呑みにしないことだ。
そもそもAIが示す「勝率5%低下」は、どういう意味なのかよくわかっていないのである。
というかAI開発者の中にも、疑問を感じている人は多い。
 

つまりAIの評価値も生成系AIと同じで、疑問の余地がある数値なのだ。
しかしそれを見抜くためには、将棋の強さが絶対に必要なのだ。
 

なぜなら、AIは理由を決して言わないから。
ゆえに彼らが示した答えの正当性を知るためには、己を鍛えるしかないのだ。
 

だが、これは希望だろう。
AIがいくら社会に浸透したとしても、人間らしさは決して失われないということだから。
逆に言えばChatGPTのような彼らが示す参考例に対して、どう捉えるかがこれからの時代に必要なのである。
 

それ次第でAIは私達を助けてくれる味方にもなるし、反面教師にもなる。
結局どれだけ進歩しようとも、最後に大事なのは人間力なのである。
 

この希望を振り飛車で示したのが佐藤天彦九段である。
彼が再び藤井聡太に挑む日はそう遠くないだろう。
 

きっと2人のタイトルマッチは、世界全体にAI社会の生き様を示すことになるはずだ。
 

彼らの示す人間ならではの将棋が示すきらめきを期待して、これからも熱心に注目していこう。

 
 
 
 
***
 
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2024-10-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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