とあるラーメン屋で店主から本気で説教された
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記事:Shota(ライティング・ゼミ9月コース)
「店員はお客様に対してお礼を述べる」
私はそれが当たり前と思っていた。
新入職員時代のマナー研修でもお礼の大切さを教わった。
しかし、約10年前、私はお客として入ったラーメン店の店主に本気で説教をされたことがある。
「お客様は神様ではない」
今、思い返すと、そう痛感する。また、経営者の本気を知れた一日でもあった。
「勝負や!」
私は高校生の頃、剣道部に所属していた。この言葉は剣道部の同級生(以下Aと呼ぶ)が相撲部の同級生(以下Bと呼ぶ)に喧嘩を売った時の言葉だ。
喧嘩と言っても殴り合いの喧嘩ではない。その場にいる者は誰も本気で怒っていなければ、笑顔の者もいる。
それに、武道繋がりということもあって相撲部の同級生とは非常に仲が良かった。
勝負の内容は腕相撲!
剣道部の中で一番の力自慢Aが、相撲部の同級生に勝負を挑んだのだ。そこで登場したのがBだった。
BはAの喧嘩を買った。
結果は……、Bの圧勝だった。
Aは剣道部の中で圧倒的に腕相撲は強かったが、相撲部の力にはまるで敵わなかった。
「もっと鍛えろ! マッチ棒みたいな体をしてから!」
Bが言った。その言葉にその場にいた者全員が笑ったが、Aの心には火が付いたようだ。
「次の勝負や」
「おー」
Aの言葉に周囲が湧いた。
だが、勝負の内容が中々決まらない。
Aが提案するのは、
「チャンバラ、50メートル走」等、
一方でBが提案するのは、
「利き手とは逆での腕相撲、本気の相撲、押し相撲」等、自身に有利なものばかりだ。
中々決まらないのも頷ける。
勝負の内容が決まらず、勝負自体が無くなるかと思った矢先、誰かが言った。
「大食い対決は?」と!
これにはAとB含め、全員が納得した。
客観的にみると相撲部のBが有利に感じるが、Aも剣道部で一番の大食いだった。
自然と大食い対決で決着をつけるといいうことで着地した。
大食い対決と決まると大事な問題がある。
何を食べるのか。だ!
これも決まるまで時間はかからなかった。
学校の近くにあるラーメン店。そこが勝負の場所になった。
どちらが多く替え玉できるか。という勝負だ、負けた方が食事代を支払うという罰ゲームも決まった。
勝負の日時を決め、その場は解散した。
「よっしゃ!」
Aが気合を入れる。
今日はBと大食い対決の日。気合いは十分のようだ
AとB、それに見物人も踏まえ10名近くでラーメン店に入った。
お店に入って何も注文しないわけにはいかず、AB以外は普通にラーメンを注文した。
AとBはまず通常のラーメンを注文する。そのあと何回替え玉ができるかが勝負なのだ。
AB以外は早々に自分のラーメンを食べあげ、AとB、二人の勝負を見守った。替え玉数が増えるほど、勝負は当然盛り上がる。
お互いの替え玉数が増えていくたび、大変盛り上がった。
今思うと、周りのお客様には非常に迷惑だったと思う。
AとB、お互いの替え玉数が10回に到達しそうな頃、我々の盛り上がりもピークになった。
その時、ラーメン店の店主が我々のテーブルにやってきた。
替え玉を持ってきたと思ったが、どうやら違った。店主の手には何も持たれていない。
「私も味に自信を持ってやっているから、そういう勝負はやめてくれるかな?」と、店主に言われた。
一瞬、何を言われたか分からなかったが、真剣にラーメンを作っている経営者の怒りと分かった。
我々の盛り上がりは急激に冷めた。
サウナ終わりに水風呂に飛び込んだ感覚だった。
「すみません」
我々は謝罪した。
謝罪をするしかなかった。
AとBの勝負は店主の言葉で中断した。
支払いはじゃんけんで負けた方が支払うことになった。
じゃんけんの結果、Aが勝った
じゃんけん対決に盛り上がったが、店主に注意を受けた手前、大きくは騒げなかった。
AとBは不服そうだったが、大食い対決は引き分けに終わった。
ラーメン店での大食い対決から10年以上が経過した。
今なら分かる。ラーメン店の店主が言った言葉の意味が。
「独立して自分の店を持つ!」という夢を掲げ、大変な下積み時代も経験しただろう。
そこで独立して自分のお店を出店。自信のあるラーメンをお客様に提供していた中で、高校生がふざけた勝負を開始した。
「それは怒るな」と今なら思う。
ふと思い出し、最近になってそのラーメン店に向かったが、お店は既に無くなり、ラーメン店があった場所には整骨院がオープンしていた。
無くなったお店を見て、私は昔の行為が恥ずかしくなった。
約10年が経過したのだ。お店が無くなったのも仕方ないと思いつつも、どこか寂しい気持ちに襲われた。
「いくらお客の立場とはいえ店員の気持ちを考える」
目の前の整骨院を眺めながら、私はそう心に決めた!
***
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