メディアグランプリ

マッチングアプリを古典文学的に楽しんでみたら~すさまじきもの、いみじきもの~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:加藤 真矢(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
およそ世の中で、マッチングアプリほど理解に苦しむ男性が有象無象に存在する市場はない。
 
30代で酷い失恋をし、長らくの傷心期間を経て40代からマッチングアプリを始めた私は、これまでの人生で出会ったことのないような信じられない輩の数々に遭遇し、
「年を取ったババアが受ける扱いなんてこんなものか」
と深く絶望し、自己肯定感が下がり続ける日々を過ごしていた。
 
そのような時に、大河ドラマ「光る君へ」を観ていて、ある台詞が耳に飛び込んできた。
 
「書くことで己の悲しみを救い、妾の痛みを癒したのでございます」
 
摂政、関白、太政大臣を務めた藤原兼家の妾であった藤原道綱母が、兼家との結婚生活を回想した「蜻蛉日記」を書くに至った動機として語った言葉。
そうか、私も書くことで傷ついた心を癒して、あわよくばネタとして昇華できまいか。
「源氏物語」のような、男女関係におけるさまざまな人間模様を
「枕草子」のように軽妙に、第三者的に観察する目線で振り返ってみるのだ。
 
書き出しが「学問のすすめ」のようになってしまったが、かくして私は悲しみをこらえて筆を執った。
 
◾️すさまじきもの~ピーターパン男
 
「地元同じなんですね。嬉しいです!」
 
出身地が同じで、親しみやすそうな写真の雰囲気に惹かれて「いいね!」をしたこの方は、ビデオ通話した際もフレンドリーで話しやすく、次の週末にお茶に行く約束をした。
 
空いているお店探しもスムーズで好印象だったのだが、
開口一番から信じられない発言が続いた。
 
「俺、見返りを求められるのって駄目なんですよね」
 
は? 何を言っているの?
 
「私はこんなに尽くしているのに、あなたはしてくれないって言われることがよくあるんですけど、それって違うと思うんですよ。相手にしてもらったから自分もするんじゃなくて、自分がそうしたいから、するもんだと思うんですよね」
 
一見正論のようで、極めて自分勝手な発想であるが、序盤なのでとりあえず流すことにした。
 
「あれですか、付き合ったら頻繁に会いたいタイプですか?」
「いや、自分の趣味も楽しみたいので、二人の時間も過ごしつつ、お互いが打ち込んでいることも尊重し合えるといいなと思います」
「よかったー! たまに、毎週末絶対会えないと嫌だという人もいるんですけど、俺そうい
うの駄目なんですよね。友達の方が大事じゃないですか。彼女とはタイミングが合えば、会いたいというか」
 
え? 自分が合わせるつもりはないの? それって本当に付き合いたい相手なの?
 
違和感を覚えつつも、とりあえず相手を知る時間にしようとひたすら流すことにした。
 
「あれですか、すぐにでも結婚したいタイプですか? どれぐらい焦ってるのかと」
 
焦ってる、って直球過ぎて失礼すぎじゃない?
 
「まぁ、年齢的にできれば早いと嬉しいですが、お互い接してみないと分からないことも
あるかと思いますので、お付き合いして、その延長戦上にあれば嬉しいですね」
 
「よかったー! いや、すぐにでも結婚したいっていう方だったら合わないと思うんすよ
ね。結婚はそんなこだわってないんで」
 
マッチングアプリやってるなら一応、パートナーは探しているんだよね? 身体目的?
 
そこからは過去の恋愛遍歴を聞かれ、あまり慣れていないことを話したところ、
 
「え、でも、そんなに経験無いといっても、そういうことは興味あるんすよね? 触られるのも嫌とかじゃないですよね?」
 
相手に尽くすのは嫌、都合を合わせるのも嫌、結婚で縛られたくない、
でもやることはやりたい! のか?
 
いつまでも大人になれないピーターパンのような方だなぁと急速に冷めていった。
当然のようにお会計は割り勘だった。
 
◾️いみじきもの~お金を巻き上げてトンズラ男
 
「自称」経営者の方。
最初のデートで、私の趣味であるヴァイオリンに興味を持ってくださり、共通点を掘り下げる質問も巧みで盛り上がり、お互い高校時代が弓道部だったことも踏まえ、2回目のカラオケデート(ここでヴァイオリンを弾いてほしいとのリクエスト)、3回目の弓道体験教室デート(予約と支払いまで完了)の約束まで一気に畳みかけられた。
 
ここまでは丁重な態度であったのだが、LINE交換後は急にタメ口に。
違和感を覚えつつも、なんとか2回目のデートまでやり取りを続けていたのだが、
前日になって
 
「ごめん、待ち合わせ場所を○○に変えられない? 直前の予定によって動きあるかもしれないんだけど……」
 
え? 前日に? しかも直前までどうなるか分からないってどういうこと?
 
とりあえずもう前日なので渋々了承するものの、当日の待ち合わせ時間直前になって、更に信じられないメッセージが届いた。
 
「ごめん、熱が出ちゃったからリスケさせて!」
「めっちゃ楽しみにしてたんだけど、朝から熱があって、下がらないかずっと寝てたんだけど……」
(ご丁寧に体温計の写真つき)
 
なぜ、体調が悪い時点ですぐ連絡しない?
とりあえず返信したメッセージは既読にならなかったので
おそらくブロックされている気がする。
次の約束に関連してお金を巻き上げ、当日トンズラするクズだったか。
小さい男だな……。
きっと体温計の写真もググったら出てくるやつなんだろうなと思いつつやめた。
 
「ピーターパン男」は、事前のやり取りの印象が良かっただけにがっかりした、という意味を込めて、「期待はずれであること」を表す「すさまじい」という古語を、「お金を巻き上げてトンズラ男」は酷すぎて、ただただ言葉を失ってしまったので、「善悪ともに、程度のはなはだしいこと」を表す「いみじ」という古語を当てはめてみた。
現代語版と合わせて、「この男性はどんな表題を付けようかな」と振り返ってみると、まるで他人の物語のように見えてきて、不思議と悲しみは和らいでいった。
 
さぁ、次はどんなネタを提供してくれる男性かな。
 
 
 
 
***
 
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2024-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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