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三途の川を渡りかけたことで、人生観が変わった話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:愛(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

あなたは命の危険にさらされたことが、死にかけたことがあるだろうか。
十人十色、色々な経験があるだろうが、私は交通事故によって死にかけたことがある。
この交通事故が、人生観を変えてくれることになる。
 
約10年前、実家から最寄り駅までを原付バイクで行き来していた当時。
雨上がりの日にカーブで白線の上に乗り、スリップしてしまった。
身体が宙に舞う。本当にスローモーションだった。
しばらく地面を滑り、人に見られた恥ずかしさで「いてて……」と起き上がる。
腹部に激痛が走る。動けない。
この一部始終を唯一見ていたはずの若い女性は、何も見ていないかのように私の横を通り過ぎた。
 
道のど真ん中に横たわった原付バイクのエンジンをなんとか切り、端でうずくまる。
しばらくして走ってきた車の夫婦が駆けつけてくれ、救急車を呼んでくれた。人生初の救急車に乗った。全身が震えて冷や汗が止まらず、車内の記憶はほとんどない。
 
運ばれた先で検査をされた結果、膵臓から出血が止まらない状況とのことだった。
どうやらバイクのハンドルが腹部に刺さるように入ったのではないかと言われている。今も真相はわかっていない。
手術をしなければ私は助からないようだった。しかし、運ばれた病院ではその手術ができない状況らしく、医師は静かにしていた。
 
「え? もしかして私……死ぬ?」
激痛で悶える中、その空気を察した私は冷静さを取り戻した。
「いや、まだまだ旅行したいし、彼氏とも行きたいところいっぱいあるし。え、死ぬの? 今日もこのあと友達と約束してたのに……。絶対ダメでしょ、死にたくない」
根性だけは人一倍ある自信があった。気力で乗り越えようとした。
 
しばらくすると、他の病院で受け入れ先があったとのことで、再び救急車に乗った。
しぶとい私のために、その病院から医師が点滴の交換で同乗してくれた。母も同乗してくれていたようだが、ほとんど記憶はない。
ただ覚えていることは、2度目の救急車の中はうたた寝をするときのような心地よい眠気が襲ってきた。
異常な気持ちよさを感じたが「これ、寝たら多分死ぬやつだ」と悟り、必死で目を開ける。
 
その後私が目を閉じたのは、麻酔を打たれたときだった。
次に目を開けたときは、ベッドの横に両親が立っていた。
何を考えるでもなく、「ごめん」と一言目に出て、涙が出ていた。
心配かけてごめん、迷惑かけてごめん。全てが詰まった3文字が出た。
ここで私は、親より先に死んではいけないと痛感した。それまではそんなことを考えたこともなかった。
 
ICUの中で数日、今が昼なのか夜なのかもわからないほど眠り続け、約20日間の入院生活を終えた。ここでも根性を発揮し、予想より早い回復をして医師に退院させてくれと懇願し続けた。
その後は膵臓の機能も問題なく働いており、運動や飲酒、何をしても影響は出ていない。
運と根性だけはあると胸を張って言える。
これ以降、救急車が近づく音が聞こえると、周りの人より早く止まって道を譲るようになった。救急車の中にいると、想像以上に遅く感じたからだ。
 
もう一つ変わった人生観がある。
 
祖母は「死ぬのが怖い」と嘆く。それを聞いた私は母にこう言った。
「どうせ同じ10年を生きるとするなら、悲しんで10年過ごすよりも楽しく10年生きたほうがいいのに」
母は「それ、死にかけたことがある人しか思わないことだよ」と言った。
母も数年前に癌と闘い、死にかけた経験がある。
死にかけたことがなくても考えられそうなことだと私は思ったが、この経験をするまでは悲しいならただ悲しいと、底まで落ちていた。ポジティブになんて考えられなかった。祖母のようにただただ嘆いていたのだろう。
 
この出来事は当時友人を驚かせ、生き抜いたからこそ笑って話せるエピソードになっている。
もし諦めて目を閉じていたら、私は三途の川を渡っていたのかもしれない。
あの時に眠っていたら、今自分が出会っている人には出会えていなかった。今の自分はいなかったと思うと、あの時諦めなくてよかったと心から思う。
「病は気から」は、本当だと思う。気持ちや運は思い込みで脳を騙すことができる。
また、「人生は選択の連続だ」とも言う。眠るか、眠らないか。この選択肢で私の人生は大きく変わっていた。家族の人生も変わっていた。
生きている今だって、悩むことは沢山ある。それでも、選んだ道を正解にするしかないのだろう。
 
インドに行くと人生観が変わると言うらしい。インドに行ったことはないが、私は死にかけたことで人生観が変わった。
 
あなたの人生観が変わった経験は?

 
 
 
 
***
 
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2024-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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