「親に合わせて生きることの辛さ ─ 母に伝えた『私の選択』と、本当の和解がもたらす自由」
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:内山遼太(ライティング・ゼミ9月コース)
「自分の人生だから、自分で決める」。そんな当たり前のことが、どうしても家族の前では言いにくかった。特に母との関係は、私にとってずっと難しいテーマだった。家族を愛しているし、大切に思っている。だが、その愛情が時に重荷に感じることがあるのも事実だった。私の母は、誰よりも私の幸せを願ってくれる存在でありながら、時にその願いが私を縛りつけ、自由を奪うようなものに感じられることがあった。
母はいつも私を思って行動してくれていた。幼い頃から、私のことを大切にし、どんな時も応援してくれた。だが、それと同時に、母の期待も私を見張っているように感じていた。「こうすれば幸せになれる」「こういう選択が賢い」そんな母の言葉が、時には励ましに、時には重圧に感じられることがあった。幼少期にはそれが当たり前だと思っていたが、成長するにつれて自分の人生においても母の意見や期待を気にするようになっていた。母の期待は、私の中で「こうしなければならない」という不文律になり、それが自分の意思よりも優先されてしまうことに気づいた。
大学を卒業して、就職活動を始めるときも、私は「安定した企業に就職してほしい」という母の希望を考慮していた。自分が本当にやりたいことよりも、母が安心できるような道を選ぶことが自分の義務だと思っていたからだ。周りの友人がそれぞれ自分の夢に向かって挑戦しているのを見て、内心うらやましく感じることもあったが、「親の安心」を優先することが、親孝行であり、自分の果たすべき役割だと思い込んでいた。その結果、やりがいを感じない職場で働くこととなり、毎日が苦痛で仕方なかった。自分の気持ちを無視して進むことが、こんなにも辛いものなのかと痛感し、精神的にも疲弊していった。
やがて、仕事のストレスは身体にも影響を及ぼすようになり、日常生活にも支障をきたすようになった。食事も喉を通らず、夜も眠れない日が続いた。そんなある日、職場で突然息が詰まるような感覚に襲われ、倒れかけた。周りの同僚に助けられながら、「このままではいけない」という強い危機感が自分の中に芽生えた。だが、辞める決断をすることすらも、母に対する裏切りのような気がして、罪悪感に苛まれた。ようやく退職を決意し、母にそのことを伝えると、案の定、激しい反応が返ってきた。「どうして最後まで頑張れなかったの?」「せっかく入った会社を辞めるなんて、もったいない」母の言葉が胸に突き刺さり、自分の選択が間違いだったのかと再び不安に陥った。
退職してからしばらくの間、私は再就職もせず、自分を見つめ直す時間を過ごした。毎朝何も予定がない生活に最初は戸惑ったが、次第に自分の内面と向き合う大切さを感じるようになった。母との連絡も減り、自分だけの時間を持つことで少しずつ自分の気持ちが整理されていった。やがて、自分が選びたい道が少しずつ見えてきた。それは、これまで避けてきた「自分が本当にやりたいこと」に向き合う勇気を持つことだった。
一方で、母との溝は深まっていくように感じた。電話をかけても、会話の中で「早く次の仕事を見つけなさい」という言葉が出てくるたびに、心が重くなる。母の期待を満たすことができない自分に対して、どう接すればよいのかわからなくなり、電話の回数も徐々に減っていった。しかし、それでもこの状況を変えたいという思いは強く、自分なりに何か行動を起こす必要があると感じていた。
そこで、私は母に手紙を書くことにした。直接会って話すと感情が先立ってしまうこともあり、冷静に自分の気持ちを伝えるために、紙に向かうことを選んだ。手紙には、これまでの自分の気持ちや母への感謝、そしてこれから自分の道を歩みたいという決意を書いた。「今までの選択が間違いだったとは思わない。でも、今度は自分の意志で進みたい」と伝えた。母は、私の手紙を読んで、しばらくの間何も言わなかったが、数日後に会ったとき、母は涙を浮かべながら「あなたの気持ち、分かったよ」と言ってくれた。
その瞬間、私は初めて、母が私を本当に理解してくれたと感じた。母もまた、私が自分の意志で選択をすることを尊重してくれたのだ。それからは、私たちの関係が少しずつ変わり始めた。母が私に対してアドバイスをすることはあっても、それが押し付けではなく、私自身がどう思うかを尊重してくれるようになった。母との和解を果たすことができたことで、自分自身もまた、一つの成長を遂げたのだと実感した。
この経験を通じて私は、家族との関係を見直す大切さを学んだ。家族の期待や愛情は、時に重荷になることもあるが、それはお互いの価値観や考え方が異なるからこそ生まれるものだ。お互いに歩み寄り、理解し合うためには、自分の気持ちを正直に伝える勇気が必要だった。相手に対してただ感謝や敬意を示すだけではなく、自分自身の気持ちを素直に表現することで、本当の和解が訪れるのだと感じた。
それ以来、私は自分の人生についてもっと自信を持って選択できるようになった。母との関係も、以前よりも深まり、今ではお互いを尊重し合う関係になっている。母の期待を裏切ることへの罪悪感ではなく、私が自分の人生を主体的に歩むことで、母に対してもより深い愛情を感じられるようになったのだ。家族との和解は、一度に全てが解決するものではなく、時間をかけて築き上げていくものだ。そのプロセスが、今の私にとってかけがえのない財産となっている。
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