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猫の預かり2頭でお世話2倍を覚悟したのに、1頭よりラクで後悔した話


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記事:琴森美香子(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
テレビで有名な芸人さんの取組みが紹介されたので、ご存じの方も多いと思うが、保護猫活動の一つに「預かりボランティア」というものがある。
 
これは、保護猫を自宅で一時的に預かり、新しい家族へとつなぐサポートをするものだ。
 
名古屋の保護猫団体「花の木シェルター」でも同じ取組みを行っており、私も今年の春夏2回、預かりボランティアを経験した。そして秋に3回目の預かりを予定していたのだが……。
 
「えっ! 2頭ですか?」
 
電話口で思わず聞き返した。次に打診されたのが、生後4ヶ月の黒猫兄妹、2頭の預かりだったからだ。
 
実は今まで何度も、『猫は1頭より、2頭飼ったほうがラクですよ~』と言われていた。でも、正直、「いやいや、2頭いればお世話も2倍のはず」と内心、信じていなかったのだ。
 
しかも、「猫の預かりボランティア」とは、単に猫の世話をするためのものではない。
 
言うまでもなく、保護猫シェルターにいるすべての猫は、新しい家族との出会いを待ち続けている。しかし、中には、すぐに里親が見つかる猫と、長い間シェルターで待たざるを得ない猫がいる。この違いは、猫の「人馴れ度」によるところが多い。
 
人馴れした猫は、里親候補の方がケージに近づくと、「にゃ~、にゃ~」と鳴き、ケージから手を伸ばして自らをアピールする。撫でられることを喜ぶため、初対面ですぐに可愛がられ、早々に新しい家族が見つかる。
 
一方、人馴れしていない臆病な猫は、見知らぬ人に触られることが不安だ。そのため、里親候補の方がケージに近づくと隅っこにうずくまり、最悪、撫でようと差しだされた手を引っ掻いてしまう。
 
このような猫たちも、ゆっくりと信頼関係を築けば、本来の温かさや優しい一面を見せてくれる。しかし、それには時間がかかるため、なかなか新しい家族がみつからず、シェルターに長く留まってしまうのだ。
 
そこで、預かりボランティアの出番である。
 
猫が安心して過ごせる空間を用意し、優しく声をかけ、少しずつ触れ合う時間を増やしていく。この積み重ねで、臆病な猫も、「人って怖くないんだ」と感じられるようになる。
 
中でも重要なのが、猫じゃらしなどを使った「遊び」である。
 
室内で過ごす猫は、どうしても運動量が減り、体力・筋力が不足しがちだ。遊びを通じて運動できれば、ストレス発散にもなり、まさに一石二鳥。
 
しかし、「遊び」の効能はそれだけにとどまらない。
 
猫は、遊ぶ楽しさを感じると、人に対しても、「一緒にいるのは楽しい!」というポジティブな感情を持つようになる。人と共に過ごすことを好むようになり、自ら人に近づき、撫でられることを喜ぶようになる。それにより、新しい家族と出会い、幸せな生活を送れる可能性が広がっていくのだ。
 
だが、猫と遊んでやるには時間が必要だ。そして、「Time is money」
今や、あらゆる面でタイパが重視される世の中だ。猫1頭でも大変なのに、2頭だなんて、大丈夫か?
 
「大丈夫ですよ。今回の猫は兄妹で、大の仲良しですから」
 
そう太鼓判を押され、黒猫兄妹との暮らしが始まった。
 
秋にちなんで「あきお」と「あきこ」と名付けた2頭は、起きている時も眠っている時もずっと寄り添い、大人しく可愛い印象だった。
 
ところが、ケージから出した途端、いきなり猛烈な勢いで部屋の中を駆け回り始めた。
 
あらゆる隙間に入り込み、すべての高みを登り尽くす間、2頭でずっと、にゃんプロしたり、追っかけ合ったりしている。たまに、私の匂いを嗅ぎにくるが、またすぐじゃれ合いが始まるのだ。
 
2週間ほどたつと、2頭はずいぶん慣れ、部屋に入るとすぐ自分から私に近づいて来るようになった。しかし、少し撫でると満足して、また遊びに戻って行く。
 
あ~、なるほど。
「2頭のほうがラク」というのは、こういうことなのか!
 
猫は多胎動物で、1回の出産で平均3~6匹の子猫を産むため、自然界では兄妹がいるのが普通だ。
 
猫が1頭のとき大変だったのは、本来、猫の兄妹が務めるべき遊び相手を、人間が代わって務めていたから。でも、猫が2頭いれば猫どうしで遊ぶので、飼い主が遊び相手をしてやる必要がない。
 
仲の悪い猫だと、遊びがエスカレートして喧嘩になりそうだが、「あきお」と「あきこ」には兄妹ならではの温かい関係があり、たまにケンカをしても、すぐに仲直り。だから「大丈夫」なのだ。
 
今や私の役割は、身の回りの世話を除けば、2頭が自ら近づいてきた時、撫でたり抱っこしたりしてやるだけ。お世話は猫1頭の時より格段にラクになり、しばらくは喜んでいた。
 
しかし、次第に罪悪感を覚えるようになった。
 
以前、1頭飼いしていた猫たちは、実は独りぼっちで可哀そうだったのではないか? もしも、当時から2頭飼いをしていれば、あの子たちは、もっと楽しく幸せな猫生を送れたのではないか、と。
 
後悔先に立たず、である。
 
今後は、私のように後悔する飼い主さんを増やさないためにも、多頭飼いの良さをできるだけ多くの方に伝えていきたい。
 
 
 
 

***

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2024-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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