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同世代ハイスぺくせ強男子と、年下ピュア男子で悩み、オカマバーに相談に行った話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:加藤 真矢(ライティング・ゼミ9月コース)

 
 

「オカマ 初回30分 1,000円 飲み放題 女性歓迎」
 
えっ!? 意外とリーズナブルだなぁ。
 
30代で酷い失恋をし、40代でマッチングアプリを始めた私は、いきなりおうちデートに誘ってくる男、次回のデート集金をされた挙句にブロックしてきた男など、数々の酷い目に遭い、疲れ果てていたのだが、ある日、目に飛び込んできたのは、近所にある某オカマバーのピンクに輝く看板だった。
 
怪しい、めちゃくちゃ怪しいやつじゃん……。
 
付近にはキャバクラが並ぶ。
強面のスーツのお兄さんが柔和な笑みを浮かべながら、道行く男性たちに
 
「こんにちは~キャバクラいかがですか~」
 
と勧誘をし、疲れたOLの私なんて見向きもされない。
そりゃ、そうですよね。
 
まぁ私にはご縁のない世界、と一旦スルーをして日常生活に戻り、
婚活では2人の男性とやり取りをしていた。
 
■1人目~同世代ハイスぺ男子
IT業界勤務、同世代、趣味はピアノ。ディーン・フジオカ似のイケメン。
メーカー勤務、趣味がヴァイオリン、同世代の方との出会いを希望している私にはドンピシャで、忙しそうながらマメにやり取りしてくださり、好印象だった。
私の職場近くのとある飲食店にお互い興味があり、ある時飲みに行ったのだが、
そこで残念な一面を見てしまったのだ。
 
ブラックニッカばかり、大量に注文されるので
 
「お好きなんですか?」
 
と尋ねたところ、
 
「いや、一番安いから。僕ケチなんで」
 
え、堅実なのはいいことだけど、知り合って間もない女性とのデートでいきなり?
当然ながら、それを超える金額のものが頼みづらい。
稼いでないわけではなく、むしろ私よりも収入は高い方だったのだが……。
遠慮がちにちびちびと飲む。
お会計時、少し多めに払ってくださったので
 
「ご馳走様でした。今日はありがとうございました!」
 
と声をかけたところ、
 
「いや、ご馳走なんてしてないですよ。あなたは、あなたが飲食された分を払っただけ」
 
とけんもほろろ。
 
私の趣味にも興味を持ってくださり、今後の演奏会などもお尋ねいただいたのだが、なんだかモヤモヤとテンションが下がってしまった。
 
■2人目~6歳年下男子
この方もIT業界勤務、子犬のような笑顔が可愛い年下君。
某真面目系婚活サービスでお見合い申し込みをいただく。
半信半疑ながら初回デートに行くと、思いがけず2軒目に行くことになり、
 
「楽しかったです!」
 
とピュアな笑顔で見送ってくださって、仮交際(お友達期間)となり、
戸惑いながらもやり取りを始めていた。
2回目のデートでは、予約時間より少し早めにお店に着いてしまい、まだ入れなかったので、しばしお店の外で雑談していたのだが、時間になってからも気づかずにずっと話してくださり、
 
「あの、もう入れそうですよ」
 
と声をかけると
 
「あれ、本当ですね! 楽しかったから、気づかなかった」
 
と笑顔で言ってくれるような、とてもいい方だった。私はほとんど聞き役だったのに。
まだ若くて、性格もいいのに、どうして私のような年寄りに??
疑問を感じながらも、3回目のデートの約束をすることとなった。
 
 
プロフィールからは、同世代ハイスぺ男子を本命候補にしていたので、彼との居酒屋デートから帰宅した私は悶々としていた。
誰かに話を聞いてほしかったところ、なぜかあの怪しいピンクの看板を思い出して、2時間ぐらい悩んだ後に、オカマバーに電話をかけたのだ。
 
「はい、BAR○○でございます」
 
風格のあるオーセンティックバーのような紳士的な応対に意表を突かれた。
 
「あ、あの……初めてなんですが、22時ぐらいって空いてたりしますか?」
「かしこまりました。22時ですね。大丈夫ですよ」
 
かくして私は、強面のお兄さんが門番をする界隈へ、赤いルージュを引いて
慣れてますけど、何か?
なテイを演じて、オカマバーに乗り込んだ。
 
(オカマさんのプライバシーに配慮し、源氏名のみフェイクです)
「こんばんは~! オカマバーよく来るの?」
「あ、いや、初めてで、時間があったので来てみたくて」
「やだ~! 時間があったから来るって、お姉さんウケる~嬉しいけど!」
 
「まりん」と名乗るhyde似のメイクをしたオカマさんと、
 
「カンパりんぐ~!」
 
と名前を絡めて陽気に盃を交わし、まずは酷い男エピソードを延々と聞いてもらっていた。
 
「40歳だなんて! 見えなーい! きれーい!」
「マッチングアプリってアゼルバイジャンなのね! 地雷ばっかり~」
 
聞いたことのない比喩に、国際情勢にも見識豊かなオカマさんの相槌に驚かされる。
30分ごとの課金で、応対するオカマさんが交代するシステムのようで、
本題にたどり着けていなかった私はチャリンチャリンした。
以降30分ごとの延長につき2,000円。
 
「じゃあ、また次のオカマが来るから、楽しんでいってね~」
 
2人目は「ケイスケ」と名乗る、某有名サッカー選手に髪型の似たオカマさん。
週6日勤務とのことで
 
「ホボ毎日居るホモです」
 
と自己紹介から爆笑してしまい、本題の相談をした。
 
「ここでも色々なカップルを見るけれど、パートナーの顔や収入とか8割は妥協してるわよ」
「え、2割は何が残るんですか?」
「生きていく上で譲れない価値観。ハイスぺ男はきっと堅実よね。結婚向きかもしれない。でも、日常生活で『あれにいくらお金使ったの?』って聞かれる生活に、あなた耐えられるかしら?」
 
言葉に詰まってしまった。
30分が来て、違う意見も聞いてみたくて、次のオカマさんにチャリンチャリンした。
 
3人目は「ロドリゲス」と名乗る、濃い顔のイケメンさん。沖縄出身。
バイセクシャルで、地元では性的マイノリティであることが居づらくて、東京に出てきたのだとか。
 
「まぁ、若いときっとまだ遊びたいわよね」
「彼は……そんな人じゃないと思います」
 
辛辣なオカマさんのコメントに、なぜか年下君をかばってしまう私。
 
「でも、話聞いてると年下君、良さそうよね」
「どうしてですか?」
「だって、彼の話をしてる時の真矢さん、楽しそうな顔してる」
 
雷に打たれたような衝撃を受けた。え、ほんとに?
 
「だって、若い女性だって選べる年齢なのに、相手のご両親に申し訳なくて……」
「そんなのまだ先のことじゃない! 卑屈になんてなっちゃダメ、自分に自信を持ちなさい」
「いい人ができたら、ここに連れて来なさい。色んなオカマたちが査定してあげる」
 
かくして私は3人のオカマさんたちの連携プレーで励まされ、オカマバーを後にした。
 
ここには、20代女子、30~40代サラリーマン、70代の地元夫婦などさまざまな客層が人生相談に訪れるらしい。
オカマさんたちは、性的マイノリティが生きづらい一般社会で苦労しながらも、仕事では老若男女様々なお客様に接して、女性の気持ちも男性の気持ちも分かる稀有な存在として、独自のポジションを築いている。
時に辛辣に揺さぶりをかけながら、隠れた本音に鋭く切り込み、あったかく背中を押してくれる。
ピンクの看板の向こうは、人生相談のオールラウンドプレーヤーたちだった。
 
とはいえ、いざ真剣交際に進む相手ができたとして、
「今度、オカマバーに行ってみない?」
と直球では誘いづらいよなぁと、気が早くも誘い方を悩んでいる……。
 
 
 
 

***

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2024-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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