メディアグランプリ

自責の言葉を「ほんやくコンニャク」で翻訳すると愛の言葉になる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:藤野ナオミ(ライティング特講)
 
 
こんなに努力を重ねても、この程度だなんて、生まれつき無能であることの証。
 
仕事で失敗してしまい、ガッカリしている私の頭の中を、そんな言葉がかけめぐっていました。
 
私はスクールカウンセラーとして働いているのですが、完璧な仕事ぶりとは言い難いところがあります。
ときおり、何気ないひと言やとっさの判断で、相手に嫌な思いをさせてしまうことがあるのです。
 
自分の至らなさは、自分が一番分かっています。
心理療法の研修会やワークショップに通って、勉強することはもちろん。
ここ10年弱は、休日のほとんどを自己探究のための研修会に費やしています。
自分を知ることが、仕事の質を上げると信じているからです。
 
私としては、身を粉にして頑張っているのに、ついこの間も、仕事でうっかりミスをやらかしてしまいました。
すると、私の頭の中で、私を責める言葉が響き渡るのです。
 
こんなに努力を重ねても、この程度だなんて、生まれつき無能であることの証。
生まれつきの不良品は、何をやってもダメ。
無駄なことに時間とお金をかけるなんて、バカのすること。
 
仕事で失敗をして凹んでいるところに、自分を責める言葉が追い打ちをかけ、息もとまりそうになるほど落ち込みます。
 
仕事でやらかした翌日。
一緒に心理療法を学んでいる仲間と、オンラインで勉強会をしました。
 
私は、ここ10年弱、「ハコミセラピー」という、まだまだマイナーな心理療法を学んでいます。
「ハコミセラピー」は、「マインドフルネス」の状態を用いて、心と身体の両方に働きかけていく心理療法。
言葉を交わす心理療法より、無意識の深いところに手が届くため、問題解決の糸口が見えてきたり、自分が本当に求めているものが何であるかが分かってきたりします。
トラウマなどを癒すにも、自己探求を深めるにも、最適なツールです。
 
仲間とのオンライン勉強会では、私がクライエント(相談を受ける)役、相手がセラピスト役をとり、1時間の心理療法を行う練習をしました。
私は、ゆっくりと深呼吸をして、目をつぶり「今、この瞬間」に起きていることに意識を向けていく「マインドフルネス」の状態になります。
そして、「マインドフルネス」の状態のまま、仕事で失敗したことを思い出していくのです。
 
次第に、関わった人たちを傷つけたこと、迷惑をかけたことが思い出され、悲しみで胸がいっぱいに。
涙もこぼれてきます。
すると、悲しみでスイッチが入ったように、自分を責める言葉が、頭の左側から聞こえてくるのです。
自責の言葉が突き刺さるような感じで、悲しみはふくれ上がり、「自分はやっぱりダメな人間だ」という思いに行きつきます。
 
ところが、自責の言葉に打ちひしがれる私を、冷静に見ている私の一部が出てきました。
 
あれ~、これは、日常生活でもよく起きてる、いつものパターンだぞ。
自責の言葉に「ほんやくコンニャク」を食べさせたら、本音が聞けるんじゃない。
 
「ほんやくコンニャク」は、「ドラえもん(マンガ、アニメ)」に出てくるひみつ道具。
コンニャクのような見た目、食感をしており、食べる翻訳機のような感じです。
「ドラえもん」では、互いに食べると、異国の人同士でもコミュニケーションが取れます。
 
イメージの中であれば、何でも可能です。
おいしく煮つけた「ほんやくコンニャク」を、自責の言葉を発する存在に食べさせてみました。
すると、自責の言葉が、翻訳されて聞こえてきます。
 
泣いている姿は、見るにしのびない。
泣くのをやめてほしい。
笑顔で楽しく過ごしてほしい。
 
自責の言葉が、優しい言葉に翻訳されると、ふ~っと呼吸が入ってきます。
追いつめられる感じがなくなり、次第に気持ちが落ち着いてきました。
 
オンライン勉強会の後、優しい言葉をかみしめていると、私の母の姿が浮かんできます。
 
私の母は、私が失敗してガッカリしていると、厳しい言葉を投げかけてくる人でした。
私の至らない点を指摘し、いかに私がダメな人間であるかをあげつらい、罵倒します。
母の気が済むまで、罵倒の時間が続くのが、幼い頃からの日常でした。
 
そして、いつの間にか、私が落ち込むと、母と同じような存在が頭の中に現れ、私を罵倒するようになっていったのです。
そのため、現実場面でガッカリしたことに加え、内側からも心が削られるため、地獄の業火で焼かれるような苦しみに見舞われてきました。
 
ですが、自己探究を重ね、自分を知っていくと、母の在り様が見えてきます。
 
母自身、つらい生い立ちを抱えていたことに加え、職場ではいじめにあい、結婚してからは嫁姑問題に苦しんできました。
そのため、心にゆとりがなく、失敗して泣く幼い私を受けとめることができません。
 
たとえば、私が転んで泣いていたら。
私の母は、「なんで、そんな何もないところで転んでるの。ナオミが気をつけてないから悪いのよ。いつまでも泣いてるんじゃありません」と怒鳴って、泣きやませようとするのです。
 
そんな風に怒っている母に、イメージの中で、「ほんやくコンニャク」を食べさせたら。
 
ナオミが泣いているのを見ると、ママはつらくなるの。
泣くのをやめてほしい。
笑顔で楽しく過ごしてほしい。
 
そんな言葉が聞こえてきます。
 
自責の念が発する言葉は、母の愛の言葉。
「そう言ってくれれば、分かりやすくて、良かったのに~」と思い、心が穏やかになっていきます。
 
とりあえず、仕事上で傷つけたり、迷惑をかけたりした相手に、心から謝罪をして、そこからどうするか考えよう。
 
現実的な対処を考える余地が生まれてきました。
 
 
 
 

***

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2024-11-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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