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「優しさ」の研究

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:まこと(ライティングゼミ11月コース)
 
 
男に生まれると物心ついた時から、母親から言われる言葉がある。
「女の子に優しくしなさい」
 
男児はよく分からぬまま「優しい」とはこういうことであろう、と一生懸命に解釈しておもちゃを貸してあげたり、泣いてる子を先生のところに連れて行ってあげたりして、「偉いね」「優しいね」と優しさの正解を知らされる。
 
小学生くらいになったり、性差がわかるようになると、容姿について言わないとか、困ってたら助けてあげる等が「優しい」というか男として紳士的であるという「常識」になる。
 
ところが。
 
中高生くらいになって恋愛やセックスで頭がパンパンになって、入ってくる情報も大人と変わらないようになってくるところで、今まで考えてた「優しさ」の概念に混乱が生じ始める。
 
例えば、ドラマなのか漫画なのか、こんな感じのワンシーンだ。
 
「この意気地なし!」バチーン! (男の頬を叩く音)
 
どうも前後のストーリーから判断するに、女は男から「何もされなかった」ことに対して怒っているようだということを子供なりに理解する。
 
おかしい……。
 
あれほど「女の人に触ってはいけません」「女の人を叩いてはいけません」「紳士的でなくてはいけません」と教育されてきたのに。この場面では、紳士的に女の人に触らなかった結果、逆に叩かれるという結果になってしまっている。
 
大混乱である。
 
男はその後、だいぶ経ってから「何も言われなくても女性のリクエストを察知してケアする」という高度な「優しさ」も必要と知ることになる。それができずに女性にハッキリとものを言わせてしまったりするのは優しくないのだ。
 
このレベルのコミュニケーションを成立させるには男性側にかなり成熟が必要だが、残念ながらどれだけ成熟しようともこの「優しさ」を完全にマスターするのは正直難しいと思う。
 
結局のところ、幼少期に母親から教えられた「優しさ」は成長するにつれアップデートしないといけないんだけど、現状では男子個々人の経験と努力に委ねられている。
 
個人的にはこれを保健体育の教科書あたりに書いといて欲しい。何なら受験科目とかにもして欲しい。このスキルが大事になるのは結婚してからで、そっちの方が人生は長いのだ。
 
恋人として付き合っているときはまだいい。というかなんでもいい。
問題は結婚して夫婦になると、この「優しさ」のすれ違いがどんどん表面化してくることだ。
 
女性の方は「この夫は私のことを好きなんだから私の思ってることは分かって当然」とずっと思っている。一方男性の方は仕事だ育児だと、妻のことは好きなんだけど、残念ながら数多くあるタスクの中の一つになってしまう。
 
どうも男は恋人時代も別に「察知」できていたわけでなく、「気に入られたい好かれたいセックスしたい」で、過剰に親切にしていただけではないか。その中の幾つかが「この男は私のことを察してくれてる」にヒットしていただけの可能性が高い。
 
なので、タスクが分散して親切濃度が全体的に薄まった今「恋人時代のように優しくない、釣った魚には餌をやらないって本当ね」なんて言われても、男からしたらチンプンカンプンで、「いや、優しくはしてるでしょ……」となってしまう。
 
そのようにして、察してくれないから機嫌が悪くなった妻を見て、夫は「妻が急に怒り出した」と感じる。
 
こういう風に「優しさ」がすれ違ったとき、男は「じゃぁどうして欲しいの? 具体的に言ってよ」などと言語化を求めたりする。だが「私のこと好きならわかるでしょ」という女の前提を理解してないので、この質問で改善できることは一つもない。
 
そして、ここまで来て女性の皆さんには残念なお知らせになるが、この「察してほしい」というお題は男には負担である。あまりに負担が大きいが故に「言ってくれなきゃわからない」と訴えるのだ。
 
だが僕はここで女性を悪者にしたり、男女の紛争を煽る気もないので一つ建設的な提案をしたい。これは女性に変化を強いるものでなく、ただこの「察してほしい」を極めてクリアに言語化して男性の行動に落とし込むことができる神メソッドだ。
 
言い添えておくと、私はこのメソッドで妻との関係が劇的に改善したし、女性の友人にも「夫がそれくらいでもしてくれたら本当に嬉しい」と賞賛のコメントが相次いでいる。
 
ただし……。
 
これは男性に向けて提案するもので、場合によっては読んで気を悪くする女性がいるかもしれないので、この場で事前にお詫びしておく。
 
ではお伝えしよう。
ズバリ。あなたの妻を「たまごっち」だと思って気にかけてほしい。
 
お腹が空いてないか、うんこが溜まってないか、たまごっちの面倒を見るつもりで顔色を伺ってみるだけだ。ほんの些細な心理的負担だ。できるでしょ? たったこれだけで「察してほしい」という難易度無限にも思えるお題が、圧倒的な具体性を帯びるのだ。
 
この「たまごっちマインドセット」を持つことによって男性は観察眼を養われる。これがひいては「荷物持とうか?」とか「頭痛いって言ってたけど大丈夫?」といった、具体的な行動になって現れるのである。
 
「私はたまごっちではない」と気分を害された女性がいたらここで重ねてお詫びする。
 
だが今まさに夫にイラっと来ている奥様がいたら、そこには確実に「優しさ」のすれ違いが起きている。どうか「言わなくてもわかるでしょ」と言うのは今だけでいいのでぐっと堪えていただきたい。
 
代わりに言葉でこう伝えてみてほしい。
「私のことをもう少しだけ気にかけて。『たまごっち』レベルでいいの」
 
「察してほしい」という、どこから手をつけていいかわからない巨大な敵を前に立ちすくんでいた夫はそれだけでスーッと心が軽くなる。そして昔は「荷物持とうか?」「寒くない?」とか普通に言えてたことを夫だって思い出せるはずだ。
 
 
 
 
***

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2024-12-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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