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私は、売れ残ったお惣菜。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:HIKARI(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
夜7時、私はふと思った。
「もしかして、私は売れ残ったお惣菜と同じでは?」
 
ひとり暮らしを始めてから早くも3年半。私は、今日も近所のスーパーに行く。言うまでもなく、理由は食料の買い出し。陰キャで、休日は引きこもりがちの私だが、さすがに食べなければ死ぬことくらいは分かっている。だから、最低でも週1回はスーパーに行かなければならない。
 
はっきり言って、スーパーに行くことは楽しくない。
「やらなければならない」という義務的な目的で行くからかな?
 
たとえ義務だとしても、自分なりに買い物を楽しむコツはある。
その1つが「夜、なるべく遅い時間に行くこと」だ。
 
普段からスーパー通いする人なら知っているかもしれないが、遅い時間に行くと、お惣菜の価格が値引きされていることが多い。年々高騰し続ける物価に、最近の異常な円安。月給19万円の私にとって、いくら一人暮らしといえども、食料の買い出しをするだけで経済・心理的負担が大きく感じるこの頃。
 
ということで、今日も夜7時になってからスーパーに行く。今日もまた、売れ残ったお惣菜が値引きされていたけど、今日はインパクトが強いお惣菜があった。 なんと、定価1,200円から350円にまで値引きされたお寿司が多く売られていたのだ。
 
お弁当や揚げ物など、この時間になればほぼ全部のお惣菜が値引きされるけど、さすがに7割引のお寿司なんて見たことがない!
 
7割引されるほどって、どれだけ魅力がなかったのだろうか?
 
怪しさ満載だけど、割引率が大きいお惣菜を買った方がお得。最近お寿司を食べた記憶もなかったので、せっかくの機会だから買うことにした。できるだけ新鮮そうなものを見極めて手に取ろうとした時、私はふと思った。
 
「もしかして、私はお惣菜の残り物と同じでは?」
 
前触れもなく、こんな文章を読んだ読者の皆さんの頭には、「???」が浮かんだかもしれない。しかし、私にはこのように思った理由がある。
 
遡ること4年前。大学4年生になった私は就職活動を控えていた。もともと海外旅行が好きな私にとって、志望する業界は言うまでもなく旅行業界か航空業界。しかし、就職活動が本格的にスタートするタイミングで、その夢は断たれた。
 
2024年の4年前は、2020年。世界を震撼させた新型コロナウイルスが、世界的に流行し始めた年である。不要不急な外出を自粛し、社会全体でリモートワークが推奨される世の中。海外旅行なんて不要不急と言われるのも仕方がない。それが災いし、志望していた旅行業界や航空業界は、軒並み採用活動を中断することとなった。
 
履歴書を拝見していただく機会も、面接していただく機会も与えられることなく、夢を断たれた私にとって、この出来事は人生で最大の黒歴史。しかも、旅行業界や航空業界への就職対策を最優先していた私にとって、ほかの業界に就職することは完全に想定外なこと。
 
ここからの半年は、とにかく苦労した。
 
いくらコロナが原因とは言え、それまでの大学3年間は大学生らしく、欠席することなく真面目に講義を受講。大学生らしく、留学生との交流サークルで様々な人たちとのコミュニケーションを積み、部長としてサークルを運営。さらに、アルバイトを通じて社会人経験も積んだ。これらの経験や知識は、コロナに関係なく活用できる。自己PRには困ることはなかったが、望んでもない業界を志望しようにも、動機が見当たらない。
 
製造業に商社、マスコミにIT企業。知名度や規模を問わず、応募できる企業にはとにかく応募しまくった。しかし、どの業界も自分が働くイメージが全く湧かない。それが祟ったのだろうか? それなりの自己PRを詰めた書類選考は通過できる。しかし、面接で躓くのだ。
 
その理由は明白。面接官の皆さんの目は節穴でないからである。私がとっさに考えた志望動機なんて、面接官の皆さんは見透かしていた。憧れだった旅行業界や航空業界に対する未練が思いっきり残っていた影響だろう。それを突き止めた面接官も少なくなかった。
 
こうして、落ちて当然の就職活動を続けること半年。
なんの運だろうか? とある空港会社と航空会社が採用活動を開始したのだ。未練タラタラな私が見逃すはずがない。情報に気づいた瞬間、即応募した。
 
そして、2社とも落ちた。
 
憧れだった業界とはいえ、そんな簡単に採用されることはないことは分かっている。もちろん、それを前提に書類選考を通過し、面接までたどり着いた。落ちる可能性も覚悟していたので、不採用だったこと自体に何の驚きもなかった。しかし、面接を受けた私にとって想定外な事態が発生していた。
 
それは、自己PRも志望動機も納得のいく回答ができなかったこと。
 
あれだけ憧れていた業界のはずなのに、志望していない業界と同様に、薄っぺらな内容しか伝えることができなかったのだ。
 
しかも面接中、あれだけ経験を積んで内容を満たした自己PRも、まるでフィクションかと思ってしまうくらい、都合の良い内容に感じてしまった。事実なのに、まるで自分の経験とは思えなくなっていた。そんな状態で、面接官に何を伝えようにも、私が魅力的である人間には、面接官は感じなかっただろう。
 
仕方がない。
半年もの間、私は勘違いしていた。
 
私が多数の企業から不採用を言い渡された理由、それは私を採用するほどの魅力がないからだ。自分が魅力的な経験を積んだと思っていても、面接官の皆さんには魅力的に感じない。
 
ショック以外の言葉が思い浮かばないけど、そんなことで引きずっている場合ではない。このままでは、ニート路線が確定してしまうからだ。だからと言って、ショックを引きずったまま、就職活動を続けることさらに3ヶ月続いた。
 
最終的に、とある製造業の人材派遣会社に正社員として就職した私。
もはや自暴自棄になっていた私は、「何が何でも製造業に携わりたい」という意味不明な嘘をついた。あんな噓、面接官の方も絶対分かっていただろう。しかし、採用してくれた。だけど、それは私に魅力があったからではないだろう。入社してから人材難に喘ぐ実態を知ってしまったからわかる採用の理由。
 
自暴自棄の状態で入社してから4年。なんだかんだで、課長補佐にまで昇進した私。だけど、まったく楽しさを感じない仕事を安月給でし続ける今日、魅力がなかった7割引のお寿司を手に取ろうとして、ふと思い出してしまった黒歴史。
 
今だからこそ、私と売れ残ったお惣菜が、どちらも何かしらの魅力がないことが分かる。だから、人生を変えるためには魅力ある人間になることが必要だ。しかし、魅力ある人間になることは、決して容易い事ではない。
 
今後も、私は魅力ある人間になるために何ができるのか、見えない課題の答えを探し続けるのだろう。最後まで暗い内容を読んでいただいた皆さんには、私の黒歴史を真似しないことを切に願う。
 
 
 
 
***

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2024-12-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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