ミッション・インポッシブル
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山形ゆか(ライティング・ゼミ11月コース)
クリスマスといえば……。
私の記憶にある一番の思い出は、やはりサンタクロースから届くクリスマスプレゼント。
「サンタさんにプレゼントをお願いしてくるから、ママに何が欲しいか教えて」
クリスマスの朝、枕元にはお願いしていた「自転車ユッコちゃん」。ユッコちゃんが軽快に自転車をこぎ、輪を描く光景は今でも忘れられない。
小学校高学年くらいになると、クラスにサンタクロースの存在を否定する集団が巨大化する。私も4年生になって、押入れの中にプレゼントを見つけてしまった。
そんな状況の中でも、ごく少数だがサンタクロースの存在を信じている子がいた。
「夕べ、玄関のチャイムが鳴って見に行ったら、下駄箱の上にプレゼントが置いてあった。サンタクロースが来たんやで! 欲しいってお願いしてたキャンディキャンディのミスまんが家」
「えっちゃん知らんの? それサンタクロースちゃうよ。お父さんかお母さんやで」
そう言われても、彼女は全く疑わなかった。
「その時、パパもママも一緒にテレビ見てたもん!」
今思えば、すでに玄関から現れる時点で、サンタクロースの設定が変わってしまっている。あとから聞いた話では、その子が住んでいた社宅のお父さんたちが協力して、互いの家にプレゼントを届けたそうだ。
親になってみて、この親たちの行動には心底共感できる。子どもがサンタクロースの存在をいくつまで信じてくれるのか。それは、親になった喜びを感じる幸せなミッションだ。
クリスマス前夜、大きなフェルトの靴下の形をした袋を準備して布団に入る娘と息子。
翌朝、枕元にあるプレゼントを見つけたときのリアクションが、楽しみで仕方なかった。
ドレミちゃんとアバレンジャーのお茶碗にコップとお箸。それにお菓子のブーツ。
次の年には、プリキュアと戦隊ものの手袋。
子どもたちの好きなキャラクターが付いているものを選べば、まず問題ない。
それをかわいくラッピングして、サンタの靴下に忍ばせる。
朝、目覚めると二人は目をキラキラさせて喜んだ。
「サンタさんが来てくれた!」
さらにプレゼントを見て、二人でピョンピョン飛び跳ねながら喜ぶのだ。
その姿を確認できれば「大成功」。私たち夫婦は、幸せと満足感でいっぱいになるのだった。
娘が小学4年生、息子が1年生になると少しずつプレゼント選びが難しくなってきた。
4年生になった娘は、洋服や持ち物にこだわりが強くなって、学校で流行っているものを欲しがるので何が良いかわからない。
こうなると悟られないように上手く聞き出すしかない。
「何がいい?サンタさんにプレゼントのお願いしてくるね」
と探りを入れても教えてくれない。
「きょうちゃん母ちゃんに教えたらあかんよ!サンタさんにお手紙書いたから内緒」と弟の口止めをしてしまう。
クリスマスは来週に迫っている。子ども部屋でサンタクロース宛の手紙を探すが、見つからない。しつこく聞けばバレかねない。情報収集は不十分なままだが、時間がない。仕方なく実家に子どもたちを預けて、夫とプレゼント選びに出かけた。
日頃の子どもたちの会話をヒントに、おもちゃ売り場を隅々まで物色する。
最近の会話や興味のあることを思い出し、あれこれ迷いようやく決まった。
お菓子作りや料理に興味を持ち始めた娘には、結構本格的な「アイスクリームメーカー」。人気の商品だと、お店の人が教えてくれた。
サッカー教室に入りたいといっていた息子には、初心者でも楽しめる柔らかめの「サッカーボール」。
そして、お正月に家族で楽しむための「人生ゲーム」。
なかなか良いセレクトに満足し、意気揚々と実家に向った。
クリスマスの朝、子どもたちに気付かれないようにプレゼントをベッドの横にそっと置く。
キッチンで朝ごはんの支度をしながら、喜ぶ声をワクワクとした気持ちで待つ。
「ギャー!!」
悲鳴のような二人の鳴き声に、夫と顔を見合わせた。
何かあった? 転んだ? ベッドから落ちた?
すぐに2階へ駆け上がると、激しく泣き叫ぶ子どもたち。
「こ、こ、こんなんちがうぅぅ」「サ、サ、サンタさんに手紙書いたのに……」
呼吸が激しくなって、しゃくりあげるほどサンタへの怒りを露わにする娘。
サンタクロースにお願いしたプレゼントとは、全く別ものが届いたようだ。
「サンタさんへの手紙はどこにあるの? きっと見つけられへんかったんやね」
娘は泣きじゃくりながら、ベランダに出ると窓の外に貼ってある手紙をはがして持ってきた。
そこにはこう書かれていた。
“かわいいミニチュアダックスフンドの赤ちゃん(ちゃいろとくろ)2匹とニンテンドーDSのあたらしいのがほしいです”
「サンタさんにも準備できないものはあるよ」となだめながらも、娘の欲張りなお願いに笑ってしまった。しかも、窓の外側に手紙を貼るとは。
その翌年のクリスマス前日。
家に帰ると、ニヤニヤする子どもたち。
「押入れの中にプレゼント見つけた! やっぱりサンタは父ちゃんと母ちゃんやったんや」
18年前、こうして我が家のサンタクロースもここでミッション終了となった。
***
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