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子どもの心を整えるノートの魔法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:エミリー(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
「早く食べ終わらないとアニメは観られないよ」
夫の何気ないその一言が、たちまち食卓の空気を凍りつかせた。
小学校1年生の長女は、スプーンを握ったまま固まったかと思うと、次の瞬間には大粒の涙をポロポロと零し始めた。
「いやだ! たべたくない! でもアニメはみたい!」と叫びながら、感情の嵐が吹き荒れる。
私はその光景を見ながら内心ため息をつき、どうしたらいいのか頭を抱えていた。
夫は夫で、「そんなわがまま言わないで、ちゃんと食べなさい!」と声を荒げる。
その言葉が長女の癇癪にさらに油を注いでしまったのは明らかだった。
涙と怒りで全身を震わせる長女は、ついには「もういや!」と叫んで椅子から飛び降り、リビングの隅に駆け込んでしまった。
「まただ……」私は心の中でつぶやいた。
このような場面は、これまでにも何度か繰り返されてきた。
何か些細なきっかけで感情が爆発し、彼女の癇癪が始まる。
そして、それを前に私たち親はお手上げ状態になり、必死になぐさめるのがいつものパターンだった。
でもその日、私はふと本棚の片隅に置いてあった「よいことノート」に目を留めた。
これまで長女が時々書いていたそのノートが、ふと心に浮かび、「これが今役に立つかもしれない」と思ったのだ。
私はリビングの隅に座り込む長女のところにそっと近づき、泣き顔の彼女にノートとペンを差し出した。
「今の気持ち、ここに書いてみない?」そう優しく声をかけた。
最初は顔を背け、拒否の意思を示していた長女だったが、やがてノートとペンをじっと見つめた。
そして、おずおずと手を伸ばしてペンを握り、力強い大きな字でこう書いた。
 
「ぱぱにもんくいわれた」
 
その文字を見つめる長女の顔に、ほんの少し変化が現れた。涙でくしゃくしゃだった表情が、次第に落ち着いていく。
「書けた?」と私が問いかけると、彼女は小さくうなずいた。
その瞬間、まるで嵐が過ぎ去った後のように、彼女の泣き声もぴたりと止んで、落ち着いた様子に変わった。
この出来事は、私に「よいことノート」の力を強く印象付けた。
感情を言葉にして紙に書くことで、こんなにも冷静になれるのかと驚いたのを今でも鮮明に覚えている。
以来、長女が感情を爆発させてしまった時には、このノートが私たち親子の「魔法のツール」として活躍するようになった。
クリスマスの朝にも、同じような場面があった。
サンタさんが届けてくれたプレゼントが彼女の期待と違っていたらしく、箱を開けた途端に大号泣。
「ちがう! これじゃない!」と叫びながら、怒りと悲しみをぶつけてきた。
その時も、私はノートとペンを手にそっと差し出した。
「どう思ったか、書いてごらん」と促すと、しばらくしてから彼女はまたもや大きな文字で書いた。
 
「プレゼントちがう」
 
気持ちを言葉にしたことで、スッと切り替えができたようだ。
その後、彼女はプレゼントをじっと見つめ、やがて手に取って遊び始めた。
「せっかくサンタさんがくれたんだからきっと良いものなんだろう」というポジティブな捉え方ができたのだろう。
この「よいことノート」には、「嬉しかったこと」「頑張ったこと」「ありがとうと思ったこと」「困ったことや嫌だったこと」を書く欄がある。
さらに親がコメントを書く欄も設けられていて、書いた内容に対して私が一言を添える形だ。
こうしてノートを通じて、私は長女が日々どんなことを喜び、何を悲しみ、何に感謝を感じているのかを知ることができるようになった。
ノートを続けていく中で、長女自身も少しずつ変わっていったように感じる。
例えば、習い事の日には「自分だけ列をそろえてほかのみんなはぐちゃぐちゃでいやだった」と書き、その次のレッスンでは気持ちを切り替えれて頑張っていた。
彼女の小さな心の中に起きている喜怒哀楽を、ノートを通して共有できるのは親として本当にありがたい。
また、私自身もノートを通じて長女に寄り添う力がついたと感じている。
「今日はこんなことがあったんだね。ママもすごいと思ったよ」「これからも一緒に頑張ろうね」とコメントを書くことで、彼女との心の距離がより近づいたようだ。
「よいことノート」は、単なる記録ツールではなく、長女にとっては感情を整理し、心を落ち着けるための魔法のノートになっている。
そして、私にとっては彼女の心の声を聞くための貴重な窓のような存在だ。
このノートがあれば、これからも親子の絆を深めていけると確信している。
「またノート書いてもいい?」と、嬉しそうにペンを手に取る長女の笑顔を見て、私は心の中で静かに「ありがとう」とつぶやく。
彼女の心の成長を感じるこの瞬間が、私にとっての「よいことノート」だと思う。
《終わり》
 
 
 
 
***

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2025-01-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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