食べるだけでマーケティングへの理解が一気に深まったスイーツ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:MEGURI TAMAKI(ライティング・ゼミ1月コース)
最近、「これがマーケンティングの力か」と実感した食べ物がある。
「これを、こうやって売り出したのは本当に天才的だよな……」と、惚れ惚れしてしまい、その感動が、その食べ物をより一層美味しく感じさせてくれるほどだ。
その食べ物とは、りんご飴。
「あの、屋台のあれか?」「あんなの昔からあるものじゃないか」
「見た目は可愛らしいが、”映え力”をマーケティング力と呼ぶなんてふざけるな」
そう思った方は「最新のりんご飴」を知らないはずだ。
かく言う私もほんの半年くらいまで知らなかった。
きっかけは、中学生の娘が「食べたい」と言い出したことだった。
どうやら、若者の間で流行っているらしい。
私も中学生くらいの頃、あの可愛い見た目がなんとも美味しそうに見え、買ったことがあった。しかし、りんごを丸かじりするようなもので、しかも飴にコーティングされているので固くて、食べ進めるのが一苦労。口に刺さると痛い。気をつけながら食べるので、「いかに痛くなく、上手く食べ進めるか」に意識が持っていかれ、味わう暇がない。やっとのことで固い外側を食べ終え、少し食べやすくなったかと思うと、中に待っているのは、ぬるい普通のりんご。
結局、食べ切ることが出来ずに終わった。
私にとってりんご飴は、そんな苦い思い出のあるものだった。
そんなことを思い出しながら店に行くと、店の外には列ができており、流行りを実感した。
そして、店の前に置かれた写真付きのメニュー看板をみて、混乱した。
看板には、知っているりんご飴の姿はなく、代わりに、カットされてカップに入ったりんごの写真が並んでいた。そう、令和のりんご飴は一口大にカットされている。
(従来のりんご飴ファンの方からは反感を買ってしまうかもしれないが)真っ赤でツヤツヤとした、丸ごとりんごの可愛らしい姿だけが取り柄だったりんご飴がその最大の魅力を捨てていた。
食べやすそうであるとはいえ、りんご飴を食べきれなかった記憶を持つ私には「りんご飴は美味しいものではない」とインプットされていた。美味しくもない、インパクトのある可愛さもない。そんなりんご飴に、正直心は踊らなかった。娘がいなければ、一生食べることはなかっただろう。
そうこうしているうちに、列も進み、注文し、店内で待つ。厨房がガラス張りになっていて製造過程を見て楽しんだ。厨房内には、丸々としたりんごがゴロゴロと積んであって可愛い。飴にくぐらされ、ツヤツヤになって出てくる見慣れたりんご飴の姿には、やっぱりなぜかウキウキしてしまう。そしてカットさてれゆくツヤツヤりんご達を複雑な気持ちで見守る……。
カップに入れられ、可愛らしいドーム型の蓋が被せられ、いざ、20年ぶりのりんご飴。
完全に舐めていたが、これが美味しいのだ。
食べやすいのはもちろんだが、カットしてあることで、飴とりんごがちょうど良いバランスでちゃんと一緒に楽しめる。
従来のりんご飴は、外側からかじるしかないので、最初は飴が強い。しかも口に刺さらないように気をつけて食べるので、りんごを一緒に楽しむ余裕などなかった。必死に甘い飴ゾーンを終えても、りんごしか残っていないので、やはり、飴と一緒には楽しめなかった。
カットされていることで、この問題が解消され、見違えるほどに美味しくなっていた。そして、かじりつかなくて良いので食べやすい。口に刺さる心配もない。カップに入っているので汚れる心配もなく、自分のペースで食べられる。
しっかりハマってしまい、頻繁に食べている。
その度に「りんご飴をこのスタイルで売り出した人、ほんと天才!」と感動する。この鮮やかなマーケティングに惚れ惚れし、ときめき、勇気さえもらえる。
というのも、我が家の夫はパティシエで、長年ケーキ屋を営んでおり、私も店を手伝っていた。近年のスイーツ業界のトレンドは、こういった、シンプルで、何かに特化され、ビジュアルの良いものがヒットする傾向にあった。店の業績向上を目指して、マーケティングを学ぶ中でヒットには「新規性×親近性」が重要であると何かの本で読み、深く納得した。だが、それを知ったところで、「馴染みはありながらも、新しいもの」を生み出すことはものすごく難しかった。しかし、この「カットされたりんご飴」を通して、従来あるものの課題を丁寧に改良し、そこで新たに出てくる課題も丁寧に解決策を考えていくことで「新規性×親近性」を兼ね備えたものが生まれるのではないかと思った。
「りんご飴って可愛いからつい買いたくなるけど、食べにくいし、そんなに美味しくないよね」という課題に対して「カットしてみる?」と考えた人がいた。しかし、カットすると、最大の武器であった「ウキウキしてしまう可愛さ」が損なわれるという新たな課題が出てくる。そこで諦めずに、製造工程で「従来の可愛らしいりんご飴の姿」をしっかり見られること、店構えやロゴ、ドーム蓋のカップなど総合的に可愛らしさや楽しさが守られていることで「カットすると可愛くない」という課題もクリアされている。
「新規性×親近性」とは、こうして一つ一つの課題を丁寧に乗り越えることで作られるのではないか、そんな学びと勇気を「カットされたりんご飴」からもらっている。
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