1年目の私はつまらない。今は幸せかい?
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記事:らんちゃん (ライティング・ゼミ3月コース)
文系出身の新人にとって理科の授業はつらかった。特に生物はどうしたらよいかわからないという苦難。というのも、生物の知識ゼロなので予習が大変。さらに授業で使用する教材に解かせる問題が少ないので時間つぶしがあまりできない。私が勤めている中学受験専門塾では1コマ70分。70分しゃべりっぱなしか! という恐怖。中学受験の経験もないので、どのようなことが入試で聞かれるかもわからない。そんなわからない尽くしの私の授業は、今考えるとあまりに味気ない。例えば、胃の内容は「胃液はタンパク質を消化する」の1文で完了。たった10秒。知識をとりあえずつめたら良い、本気でそう思っていた。生徒の反応は案の定良くない。つまらなそうにただ書くだけ。その度に悲しい気持ちになる。だって私もつまらなかったから。70分、男の音読を聞かせ続ける日々。もし、1年目の私に出会えるなら、こう言いたい。「それってプリント学習で良いのでは? 大人の君が子供に話す意味が消えていると思わないかい? 最後に一言。今は幸せかい?」
では、現在5年目の私はどうなのか。ここでは、胃の内容を生徒に語りかけるシーンを会話形式で書いてみる。もし、良ければみなさんも「授業」に参加するように読んでもらえたら!
紹介するシーンは、生物の「消化液」がテーマの授業の一部分。
「さて、これから胃について話すのだが、胃の消化液は何を溶かす?」
「タンパク質!」
「そうだな! そういえば胃液って酸性が強いのよ」
「塩酸と同じでしょ?」
「そう! よう知っとるね! 下品な話になるが、食べ物をもどしたとき酸っぱい感じしなかった?」
「した気がする」
「よね! それからも胃液が塩酸ってわかるのだけれども。だったら胃が溶けそうじゃない?」
「粘膜があるから守られているんじゃない?」
「そう! よく知ってるなぁ! でもね、粘膜が何らかの原因であまり分泌されなかったら、胃液が内部を痛めることがあるのよ。そんなとき、どう対処する?」
「胃薬飲む」
「だよな。胃薬は何性と思う?」
「中性? アルカリ性?」
「アルカリ性なんよ! もう一回いうけれど胃液は強酸、ということは?」
「中和!」
「そう! ということは、中和すればいいのよ。だとしたら、チョークの主成分の炭酸カルシウムもアルカリ性だから、胃が痛い時チョークを食べたら中和されて痛み消えるのよ」
「えー!」
「でも、理屈としてチョークは胃薬になるでしょ?」
「そうだけれどやだ!」
「まぁ、普通はそうだよな。ただ、ここで疑問に思わない?」
「何も思わない」
「そうかぁ。では質問。強酸にする必要がある?」
「確かに」
「なんで胃液は塩酸なのか? ヒントは、胃液はタンパク質を消化する」
生徒が考える。しかし、なかなか答えはでない。
「じゃあ、ここでヒントいうぞ。私たちは肉を食べるとき焼くじゃん。なんで生肉食べられないの?」
「お腹いたくなるから。」
「だよね。なんでお腹痛くなると思う?」
「菌? あ! 菌を殺すためかぁ!」
「そう! よう気づいた。 殺菌作用があるのよ」
大体、10分くらい生徒と対話した。1年目の約60倍! 何が変わったのか?
私が思うに3つの理由がある。
その1、知識量が増えた。当たり前といえば当たり前かなと。やはり、色んなことを知らないと面白さが伝えられない。ただ増やしただけでなく、自分自身の疑問を立てて、それに答え続けるように知識を増やした。5年目に気づいたのは、疑問に思うことは大人も子供も変わらないってこと。
その2、抽象化を急がないようになった。学習者にとって、いきなりの抽象化は「わからない」を生み出し、「できない」という拒否を生む。特に小学生にとって、抽象化されたものを扱うのが発達の段階上そもそも難しすぎるのである。だから、具体的な話からゆっくり抽象化した結論にもっていく。これはプリント学習ではできない集団授業のメリット! そもそも、先に抽象化した答えを言うのはただ教える側が楽をしているだけ。ただの怠慢である。まさに1年目の私
その3、楽しく共有する。5年目において、理科の話をしているとき、とても楽しい。いろいろ話したくなるのだ。子供が楽しいかは微妙なところ。ただ私がはしゃいでいるだけかもしれない。ただ、私が楽しそうだと、楽しそうな雰囲気を子供が察してくれる。また、子供と共有することを心がけるようになった。子供は意外と知っている。変に教え込もうとするのは子供が「それ、知ってるよ」となり、とてもナンセンス。せっかく集団授業しているならば、コミュニケーションがとれるメリットは是非とも利用したいところ。子供と話し合うと、こちらが伝える情報量は全体の50%ほどになることもしばしば。しかし、5年目で担当した生徒の方が成績は良い。すべて教えなくても子供は成長することに気づかされた。
今は幸せかい? 今聞かれたら、即座に「はい」と答える。子供の思考力育成という有意義な時間を過ごさせてもらっているのだから。また、自分自身が変われば周りも変わることに気づいたから。
***
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